警察は、7億4000万を取り戻した。それ以外は、由梨が使ったか、母親名義の口座へ移されていた。さらに、その金で海外の不動産まで購入していたという。その物件には、すでに二度の抵当権が設定されているらしい。私は弁護士から説明を受けた。たとえ最終的に返還命令が出たとしても、10億円すべてをすぐに取り戻せるわけではないという。「遠藤さんから、調停の申し立てがありました。海外へ移した資産について、その所在をすべて開示する代わりに、示談書に宥恕条項を盛り込んでほしいとのことです」「分かりました……一度、会いに行きます」そう答えて、私は由梨との面会に向かった。面会室で向かい合った由梨は、以前とは比べものにならないほど痩せていた。化粧もしていない。かつての隙のない身なりも、今は見る影もなかった。それでも――私の姿を見るなり、由梨が最初に口にしたのは、謝罪の言葉ではなかった。「……裕翔は?」「来てません」私がそう答えた瞬間、由梨の目に浮かんでいたわずかな期待が消えた。代わりに、その瞳には隠しきれない憎しみが滲んでいく。「……そう」由梨は小さく呟くと、私を睨むように見つめた。「あなたの思い通りになって、さぞ満足でしょうね。あの人は、すべての責任を私に押しつけて、自分だけは反省している善良な父親みたいな顔をしているんですよ」私は、黙って由梨を見つめた。「裕翔がいい父親なのかどうかと、私が今日ここへ来たことは、何の関係もありません」「どうして関係ないんですか?あなたは、私を踏み台にして、裕翔のところへ戻りたいんでしょう?」私は何も答えず、ただ由梨を見つめた。そして、ようやく分かった。――5年経っても、この人はまだ、自分で作り上げた物語の中にいる。その物語の中では、誰もが裕翔を欲しがっている。裕翔を手に入れることこそが、女にとっての成功であり、人生の最終目的なのだ。だから、理解できないのだろう。どうして私が、裕翔のもとへ戻ることではなく――由梨自身の罪を追及することを選んだのか。由梨は、資産一覧が記載された書類をガラス越しに私に見せた。「ここに、1億6000万があります。調停に応じてくれれば、すぐに資産の回収に協力します。じゃないと、全部債権者に持っていかれます。あなたには1円も戻ってきま
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