面会は、児童心理治療施設で行われることになった。部屋には低いテーブルと、色とりどりの椅子がいくつか置かれている。カウンセラーも、同席することになっていた。裕翔は約束の30分前に来ていた。奈々美が部屋に入ってくると、裕翔はすぐに立ち上がった。けれど、近づこうとはしなかった。半年ぶりに見る奈々美は、少し背が伸びていた。頬にも、以前よりふっくらとなっている。黄色い上着を着て、髪には新しいイチゴのヘアピンをつけていた。私は部屋の入り口近くに座り、2人の会話には口を挟まなかった。裕翔はテーブルの上に、パズルのおもちゃを置いた。「これ、奈々美に」奈々美はパズルを一目見ただけだった。「ママが、人から物をもらっちゃダメって言ってた」「これは、お父さんからのプレゼントだ」奈々美は少し考えてから答えた。「あなたは私のお父さんだけど、私たち、そんなに親しくないよね」裕翔の手が止まった。カウンセラーが静かに声をかける。「奈々美ちゃんの言葉を、そのまま受け止めてあげてください」裕翔はパズルの箱を引き寄せた。「……分かった。いらないなら、持って帰るよ」奈々美は、裕翔から一番離れた椅子に座った。「どうして、あのとき私を助けてくれなかったの?」裕翔は、由梨に騙されたからだとは言わなかった。「俺が間違えたからだ。人の言うことを信じて、お母さんの言葉を信じなかった。奈々美が助けを必要としていたときも、俺はお母さんに折れてほしいと思っていた」奈々美は少し考えてから、もう一つ尋ねた。「あのとき、私があなたの娘だって知ってた?」「最初に会ったときは、知らなかった。でも、そのあとで知った」「……知ったのに、助けてくれなかった」その言葉に、裕翔の顔から血の気が引いた。「……そうだ」奈々美は袖口を指先でいじりながら、ぽつりと言った。「じゃあ、いいお父さんじゃないね」「そうだな」「ママが言ってた。悪いことをしたら、ごめんなさいって言うんだって」裕翔は奈々美を見る。「……ごめんなさい。お母さんが嘘をついてるって決めつけて、奈々美を交渉材料に利用して、それから……奈々美やお母さんが傷つくような動画を見せたことも、本当にごめんなさい」「それと、ママを押してたよね」「……ごめんなさい」
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