「今から半年前です。娘の一花は、幼い頃から、心臓に疾患を抱えていました。そして、その日、一花は発作で倒れ、緊急搬送されました。そのまま手術をし、一命は取り留めましたが、それと同時に、莫大な治療費が僕にのしかかりました」俺は倉木の話を聞いて悟った。倉木は恭吾にとって、ちょうどいいカモだったのだ。弱っている倉木の心に寄り添うふりをして、支配し、泥沼に引きずり込む。そして、利用するだけ利用し、不要になったら、ボロ雑巾のように捨てる。恭吾のクズっぷりは、ここでも健在だった。「その時に、天野は僕に言いました。言う通りに、書類の数字を改ざんすれば、手術費を肩代わりすると。僕は藁にもすがる思いで、手を貸してしまった」倉木は頭を抱え、俯いた。その身体は、小刻みに震えていた。「だけど、天野を頼った僕が馬鹿でした。それからというもの、僕は天野に言われるがまま、不正に加担し続けた。気づいたら僕は、後戻りの出来ない所にいました」「その、天野恭吾の不正というのは?」「横領です。天野は私欲の為に、会社の金を横領しています」俺は倉木の音声を、ポケットに忍ばせているボイスレコーダーに録音した。証拠は多ければ多い方がいい。「なるほど。話は分かりました。では、倉木さんは、天野恭吾の横領の証拠をお持ちですか?」「はい。全部、保存しています」「今お持ちですか?」「いえ、もしもの時の事を考えて、銀行の貸金庫に預けてあります」「そうでしたか。僕は、天野恭吾の横領の証拠が必要です。そこで、僕と取引しませんか?」「取引?」 倉木が食いついた。倉木は、罪悪感に苛まれ、恐怖に襲われいる。そういう人間の心には、隙が生まれやすい。今、目の前に、自分を救ってくれる者が現れたら、手を伸ばすはずだ。しかし、倉木は首を縦に振らなかった。「申し訳ありませんが、その申し出は、お受けできません」「理由は何ですか?」「僕が、不正の証拠を持って、警察に自首するからです」予想外の倉木の発言に、俺は一瞬、固まった。「ただ、娘の事が気がかりで。来月も手術を控えているのに、僕が傍に居てあげられない。最低な父親です」「倉木さん。娘さんの傍に居てあげましょうよ。僕が協力します。僕に天野恭吾の横領の証拠を預けてくれたら、倉木さんと娘さんの安全を保証します。これをみても、僕との取引を断りますか?」俺は、事前に用
Huling Na-update : 2026-11-04 Magbasa pa