「世那、自分で歩けるわ」「だめ。麗奈さんは、怪我してるんだから」家に着くと、世那は私を抱きかかえて、寝室へ向かった。「着替えたいから、クローゼットから部屋着出してくれる?」「うん、分かった」世那と恋人になり、彼のマンションに泊まることが増えた私は、寝室に着替えを一式置いていた。洗面所には私の歯ブラシがあり、キッチンには私の食器がある。「はい」「ありがとう」「俺はリビングで仕事してるから、何かあったらすぐ呼んで」「分かった」「ゆっくり休むんだよ。医師も安静にって言ってたから」世那は私に念を押してから、寝室をあとにした。寝室に一人になった私は、今日の出来事を思い返した。私を侮辱した女の末路は悲惨なものだった。好意を寄せる男を捻じ曲がった正義感で守ろうとしたが為に、その男に拒絶され、追放された。私に狂気を向けた時点で、あの女には絶望への道しかないのだ。あの時の女の絶望した顔は、滑稽で、愚かだった。私は変わった。恭吾のお陰で。私は狂気を隠さない。狂気をさらけ出して、私を虐げてきた者達を全員跪かせるのだ。残酷だと言われても構わない。これは、彼らが私にしてきた事への報いなのだから。トゥルルルルルル……ベッドサイドに置いてあるスマートフォンが鳴った。液晶画面には〝母〟と表示されていた。母親の電話は、大抵ろくな事がない。私は、渋々通話ボタンを押した。「もしもし」「もしもし、麗奈さん。今日は、電話に出たのね」「出ないと何回も掛けてくるでしょ」「それは、一人娘が心配だから」それはあくまで建前だ。本音は、私が勝手な行動をしていないか見張るため。母は私を支配しないと気が済まないのだ。「今週の土曜日、お父さんの誕生日パーティーを開くから。麗奈、あなたも恭吾くんと一緒に参加しなさい」「ごめんなさい。私、恭吾とは別れたの。だから、今年はひとりで行きます」「え……?どういうこと?私に相談もなしに恭吾くんと別れたの?ね、どうして?まさか、麗奈は忘れてないわよね。あなたは汚れてるの。そんなあなたを嫁にもらってくれる人は、恭吾くん以外いないわ」私は母の言葉に、深く傷ついた。母の本音は、私の心を抉るのに十分だった。しかし、私は歯を食いしばり言った。「私の人生は私が決めます。誰も指図させません」「麗奈!私にそんな口を叩いていいと思ってるの!」案の定、母
Last Updated : 2026-10-22 Read more