文幸は足早に清子を訪ねた。清子は文幸の姿を見るなり、目を輝かせて愛想よく笑った。「まあ、来てくれたのね。ちょうど文幸に味噌汁を作っていたところよ」文幸は氷のように冷たい声でそれを遮った。「送別会の、あのクリームの件、覚えているな」清子は一瞬言葉に詰まり、それから慌てて言った。「覚えてるわ。もうすぐ向こうへ行くって時に、まさか知代さんにあんなひどいことをされるなんて、思わなかった。どうして急にそんな話を?」「あの日の送別会に来ていた工場の同僚たちに聞いた。知代がお前に箱を渡したとき、封は開いていなかったと、みんながはっきり見ている。知代から受け取ったあと、お前以外に、誰かにあのクリームを渡したことはあるか」清子の顔からさっと血の気が引いた。しどろもどろに答える。「わ、私……覚えてないわ」文幸はポケットからあの調査報告書を取り出し、テーブルの上に置いて彼女のほうへ無造作に押しやった。清子はそれにちらりと目をやり、青ざめた。「もう調べはついている」文幸の口調は、不気味なほど静かだった。清子は一瞬黙りこんだあと、急に顔を覆って声を上げて泣き出した。しゃくり上げながら訴える。「……っ。文幸、私の話を聞いて。私、あなたの力になりたかっただけなの。知代さんがあなたにあんなひどい嫌がらせをするのを、黙って見ていられなくて。少し懲らしめてやろうと思っただけなのよ」「じゃあ、警察の留置場のことはどう言い訳するつもりだ?」清子の泣き声が、ピタリと一瞬止まった。「俺の名前を使って、知代を厳しく扱うよう警察側に働きかけたそうだな」「私……」清子は顔を上げた。頬にはまだわざとらしい涙が伝っている。「ちょっと反省してほしかっただけなの。あの警察の人たちがあそこまでするなんて思わなかった。そんなつもりじゃなかったのよ」「水も与えず、同室の女たちに殴られても放っておき、高熱を出しても取り合わない」文幸はひと言ひと言、ナイフで刻むように区切って言った。「それが、お前の言う『ちょっと反省してほしかった』か?」清子はすがりつくように泣きながら言った。「でも、もとはといえば知代さんが悪いのよ。あの人があなたにあんなことしなければ、私だってこんなこと……」「もういい」文幸は容赦なく遮った。その声
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