翌日の食卓には、三つの選択肢が並んだ。怜司が赴任を断る。紗月も半年間、一緒に行く。それぞれの仕事を続け、離れて暮らす。紗月は紙の上に、四つ目を書き足した。〈期間と勤務形態を、もう一度相談する〉「会社が変えてくれるかな」「聞く前には、わからないでしょ」その場で怜司は担当役員へメールを書いた。期間の短縮、一時帰国、遠隔勤務の可否を確認する内容だった。送る前に、紗月へ画面を差し出すことはなかった。「書けた?」「うん。見る?」「いい。怜司のメールだから」翌日の返事は、半分だけ可能というものだった。全体は六か月必要。ただし四か月目からは、毎月一週間を東京勤務にできる。最初の三か月にも、業務に支障のない範囲で一度帰国できる。紗月も自分の予定を開いた。新連載の準備と海外配信の確認が重なり、二か月以上、会社を離れるのは難しい。原稿だけ持ってついていくことはできても、そうしたくなかった。取り戻した会社と暮らしを、また誰かの予定に合わせて畳みたくはなかった。「私は、ついていかない」怜司は理由から聞かなかった。「わかった」「寂しくない?」「少し」正直な答えに、紗月は彼を見た。「でも、嫌だと言っているのに、来てほしいとは言わない」「怜司は?」「行きたい。半年なら、やっていけると思う」紗月は三つ目の選択肢に、丸をつけた。離れて暮らす間の約束を決めた。毎日の通話時刻は固定しない。会議中や、文章が進んでいるときに出られなくても、その理由を証明しない。ただし、一晩連絡できそうにないときは、短く伝える。「ビデオ通話は?」怜司が聞いた。「顔が見たくなったら、そう言って」「週に何回?」「回数を決めたら、点検みたい」「じゃあ、会いたいほうから」「ひどい顔の日は、出ないかも」「それは、先に教えて」「どうして?」
Huling Na-update : 2026-10-03 Magbasa pa