最後の箱を捨てて二週間ほど経った土曜。東京には、夜から雨が降った。紗月と怜司はリビングの床に座り、映画を見ていた。怜司の選んだ作品だったが、一時間もしないうちに犯人がわかってしまった。紗月は我慢できず、リモコンを取った。「あの秘書が犯人」「まだ誰も死んでないよ」「だから、今やめるの。二時間後に確かめたら、もっと悔しいでしょ」「俺が選んだのに」「この前、私が選んだ映画も、三十分で出たじゃない」言い返せず、怜司は残りのワインを飲んだ。画面が消えると、窓を叩く雨音が大きくなった。十一時を過ぎていた。怜司がスマホを取った。「タクシー、呼ぶね」「この雨で?」「さっきより弱くなった」嘘だった。ベランダのガラスを、雨が筋になって流れていた。飲んだワインは一杯だけ。翌朝の予定もない。それでも、当たり前のように泊まるとは言わなかった。配車画面を開く指を見て、紗月は聞いた。「泊まっていく?」指が止まった。「いいの?」「よくなかったら、聞かない」「雨で引き留めてくれるなら、ソファで寝る」「怜司」名前を呼ぶと、彼はスマホを置いた。「うん」「私が、泊まってって言ったの。理由まで代わりに決めないで」「わかった」返事は早かったが、耳が少し赤くなった。紗月は笑いそうになるのをこらえ、空いたグラスを片づけた。怜司がキッチンでグラスを洗い、紗月は洗面所から新しい歯ブラシを出した。包装を開けかけて、手が止まる。コップには一本だけ入っていた。一人で暮らし始めてから、わざと一本にしていた場所だ。「タオル、どこ?」外から怜司が聞いた。紗月は新しい歯ブラシをコップの横に置き、ドアを開けた。「下の引き出し。グレーは使わないで。雑巾だから」「どうしてタオルと一緒に?」「洗って、間違えて入れた」
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-28 อ่านเพิ่มเติม