บททั้งหมดของ 「ゴミ出しに行ってくる」――夫の帰りが、日に日に遅くなっていく: บทที่ 31 - บทที่ 40

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31話 歯ブラシを、もう一本

最後の箱を捨てて二週間ほど経った土曜。東京には、夜から雨が降った。紗月と怜司はリビングの床に座り、映画を見ていた。怜司の選んだ作品だったが、一時間もしないうちに犯人がわかってしまった。紗月は我慢できず、リモコンを取った。「あの秘書が犯人」「まだ誰も死んでないよ」「だから、今やめるの。二時間後に確かめたら、もっと悔しいでしょ」「俺が選んだのに」「この前、私が選んだ映画も、三十分で出たじゃない」言い返せず、怜司は残りのワインを飲んだ。画面が消えると、窓を叩く雨音が大きくなった。十一時を過ぎていた。怜司がスマホを取った。「タクシー、呼ぶね」「この雨で?」「さっきより弱くなった」嘘だった。ベランダのガラスを、雨が筋になって流れていた。飲んだワインは一杯だけ。翌朝の予定もない。それでも、当たり前のように泊まるとは言わなかった。配車画面を開く指を見て、紗月は聞いた。「泊まっていく?」指が止まった。「いいの?」「よくなかったら、聞かない」「雨で引き留めてくれるなら、ソファで寝る」「怜司」名前を呼ぶと、彼はスマホを置いた。「うん」「私が、泊まってって言ったの。理由まで代わりに決めないで」「わかった」返事は早かったが、耳が少し赤くなった。紗月は笑いそうになるのをこらえ、空いたグラスを片づけた。怜司がキッチンでグラスを洗い、紗月は洗面所から新しい歯ブラシを出した。包装を開けかけて、手が止まる。コップには一本だけ入っていた。一人で暮らし始めてから、わざと一本にしていた場所だ。「タオル、どこ?」外から怜司が聞いた。紗月は新しい歯ブラシをコップの横に置き、ドアを開けた。「下の引き出し。グレーは使わないで。雑巾だから」「どうしてタオルと一緒に?」「洗って、間違えて入れた」
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32話 私の恋人です

写真が出たのは、三日後だった。新作のサイン会が終わった夕方、会場の裏で怜司がコートを渡している。二人とも顔は鮮明ではない。それでも見出しには、疑問符がついていた。〈作家・汐、元担当の取締役と交際中?〉記事と呼ぶのもためらうほどの短文だった。来場者が投稿した写真を芸能情報アカウントが使い、ほかのアカウントが同じ文章をコピーした。花音がタブレットを持って、仕事部屋に来た。「先生、広報から、対応するか確認が来ています」「本のイベントの写真ですよね。あの人たち、本の話はしないんですか」「恋愛の話のほうが、閲覧数が五倍だそうです」「そうでしょうね」紗月は写真を拡大した。怜司がコートを差し出す瞬間。自分は読者からの花束を持って、笑っていた。隠したい写真ではない。だからといって、知らない人に説明したいわけでもなかった。「対応はしません。私生活については回答しない、とだけ伝えてください」花音が少し下へスクロールした。好意的な反応ばかりではない。事件のときに怜司が支援したことを挙げ、最初から関係があったのではという声もあった。直人が流した話に、別の見出しをつけただけだった。「これは、虚偽の書き込みとして記録しておきますか」紗月は最後まで読まなかった。「日時とURLを残してください。対応するかは、法務で判断してもらいましょう」「先生のアカウントでは?」「予定どおり、新作の番外編の告知だけ出します」以前なら、一晩中コメントを見続けたかもしれない。釈明しなかった言葉が事実になるのが怖くて、一人ずつつかまえて説明したかもしれない。今は、全員を説得することが自分の仕事ではないと知っていた。「誤報として、削除を求めますか?」「付き合っていることは、誤報ではありませんから」花音の目が一瞬、大きくなった。すぐ仕事の顔に戻ったが、口元までは隠せなかった。「わかりました。広報には、私生活については回答しないと伝えます」
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33話 同じ答えでも、話してほしい

初めての喧嘩は、些細とは言えないことから始まった。新作の映像化を準備していた制作会社が、怜司に脚色のアドバイザーを頼んだ。九年前の最初の原稿から最新作まで読み、配信元の原作管理にも詳しいという理由だった。紗月がそれを知ったのは、制作会社との打ち合わせ中だった。「一ノ瀬さんは、辞退されたと伺っています」代表が何気なく言い、紗月は契約書を置いた。「いつですか」「先週です。先生と私的な関係にあるので、公平性に問題が出るかもしれないと。双方が同意されるなら構わないと申し上げたんですが、固いご判断でした」終わると、紗月は怜司に電話した。「今日の夜、会おう」「何かあった?」「会って話す」怜司は十分早く来た。紗月はカフェのいちばん奥にいたが、手を振らなかった。彼が向かいに座った。「制作会社、行ってきた?」「知ってたんだ」「アドバイザーの話?」「どうして、言わなかったの?」すぐに言い訳はしなかった。水のグラスを脇へ寄せ、紗月を見た。「俺が辞退すべきことだと思った。付き合っている状態で、紗月の作品の契約に入れば、あとで問題になりかねないから」「断った理由は聞いてない。どうして、話さなかったの?」「話せば、気にすると思って」「私が気にするかどうかも、決めたんだね」彼の口が閉じた。紗月は声を上げなかった。むしろ、短く話そうと努めた。「判断が間違っていると言ってるんじゃない。私も、受けないほうがいいと思う」「それなら……」「結論が同じなら、そこまでの話は要らないの?」「そういう意味じゃない」言いかけた怜司は、自分で止まった。直人がよく使った言葉だと、彼もわかっていた。「ごめん」「今すぐ謝ってもらうために、呼んだんじゃない」「わかってる」「私の仕事のために
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34話 そばにいることは、見張ることじゃない

締め切りまで三日となったころ、また胃が痛み始めた。最初は、空腹でコーヒーを飲んだせいだと思った。昼を抜き、夕方まで粘ると、みぞおちの下が固く締めつけられた。花音がお粥を買ってくると言ったが、あと一ページ見たら食べるからと、先に帰らせた。その一ページが、五ページになった。夕食の約束を取り消そうと怜司に電話したときには、声までかすれていた。『どこか痛い?』「少し、胃の調子が悪いだけ」『病院、行く?』「明日でいい」『そっちへ行こうか』「質問、一つずつにして」少し静かになった。『今、一人でいたい?』答えようとして、机の冷めたコーヒーを見た。一人でいることは、できる。一人でいたいかは、別だった。「ううん」『じゃあ、行く。病院へ行くかは、紗月が決めて』三十分後、怜司が来た。持っていたのは薬ではなく、薄い上着と水だけだった。「薬は、買ってこなかったんだ」「何の病気か、わからないから」「正しいけど、少し憎らしい」「歩ける?」立ち上がりかけて、椅子の肘掛けをつかんだ。怜司は腕を差し出したが、先にはつかまなかった。紗月が手を置いてから、支えた。夜間診療の内科で、急性胃炎と診断された。数日は刺激の強い食べ物やコーヒーを避け、処方された薬を飲むよう言われた。「入院の必要はありません。ただ、今日は仕事をしないでください」隣で怜司がうなずいた。外へ出てから、紗月は言った。「どうして、怜司が返事するの?」「返事はしてない。聞きましたって、うなずいただけ」「帰ったらパソコンを隠そう、なんて思わないでね」「隠さない」「コードを抜くのも、だめ」「したことないよ」「先に言ってるの」コンビニで、怜司は白粥とスポーツドリンクを買った。レジの前でチョコレートを取り、紗月の視線に気づいて
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35話 売らないと、私が決めた

汐文コンテンツの買収提案が来たのは、春だった。相手は、国内でも指折りのコンテンツ企業。提案書の最初のページには、予想を超える金額があった。全株式と、筆名『汐』に関する今後五年間の優先契約権を、合わせて譲る条件だった。花音が数字を見て、小さく息をのんだ。「これだけいただけるなら、売ってもいいんじゃありませんか」「最後まで読まないと」紗月は提案書を閉じなかった。以前なら、数字に強い人へまず差し出しただろう。今回は財務担当、新しい代表、著作権担当の弁護士を順に呼んだ。会議は、三度開いた。最初は会社の現在価値。二度目は買収後の雇用条件と進行中の契約。三度目にようやく、紗月の執筆に関する権限と、筆名の使用範囲を話し合った。社員にも提案を隠さなかった。確定前の金額までは明かさなかったが、実現すれば勤務地や雇用形態が変わる可能性があると伝えた。「まだ、何も決めていません。皆さんの意見は聞きますが、全員の希望どおりになるとは約束できません」大企業の福利厚生を期待する人も、今のチームが散るのを心配する人もいた。会議のあと、花音が残った。「先生は、どうしたいんですか」簡単には答えられなかった。「それを確かめるために、話し合っているところです」以前は、代表が決めた結論を社員へ知らせるだけだった。今回は意見を聞く。それでも、決める責任を誰かへ渡すつもりはなかった。金額は十分に大きい。代わりに、次回作を休みたいときも、年間の刊行計画に合わせなければならなかった。映像化や海外翻訳の最終承認権も、買収先へ移る。「経営から完全に離れて、執筆に専念できる利点はあります」新しい代表が、慎重に言った。紗月はペンを指で転がした。書くことだけ考えればいい。かつては、いちばん甘い言葉だった。契約も数字も人に任せ、物語に集中すればいいと思った。結果が悪かったからといって、すべての助けを拒む必要はない。ただ、何も知らずに任せる形には戻らない。「自分で経営をしたい
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-09-30
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36話 二人で暮らすための三ページ

怜司の部屋の賃貸契約が切れるまで、あと二か月だった。初めは、どの街へ引っ越すかだけを話していた。怜司は会社に近い場所を望み、紗月は駐車しやすいところを勧めた。週末ごとに物件アプリを開き、どちらも本気では気に入っていない部屋を品定めした。「ここ、リビングが狭すぎる」「一人なら、これで十分」「本は、どこに置くの?」「会社に置けばいい」「自分の本を会社に置くの、嫌なんでしょ」「じゃあ、捨てる」「今の、取り消して」紗月がスマホを取り上げた。怜司は笑って、取り返した。三件ほど内見して帰った日、怜司は玄関で、なかなか靴を履かなかった。「帰らないの?」「聞きたいことがある」「何?」靴箱の取っ手から、手を離した。「一緒に、暮らしてみない?」紗月はすぐには答えられなかった。嫌だったわけではない。その言葉を聞いた途端、家の中の物が二人分に見えた。寝室の引き出し、冷蔵庫、一人で使う仕事部屋、自分しか知らない玄関の暗証番号まで。怜司は沈黙を埋めなかった。「今日、答えなくていい」「契約が切れるから、聞いてるの?」「きっかけではある。でも、住むところがないからじゃない」「この家に来たいってこと?」「紗月がよければ。二人で別の家を探してもいい」「考える」「うん」いつものように帰っていった。寂しそうな顔を隠したり、平気なふりで笑ったりはしなかった。紗月は三日、考えた。一人になりたいとき、リビングに怜司がいる場面を想像した。締め切りで気が立っている日、浴室に彼のタオルがかかっていることも。不便な場面だけではなかった。遅く仕事を終えて出ると、キッチンに明かりがついている。別々の本を読み、同じ時間に眠る夜もあった。四日目、怜司を家に呼んだ。食卓には、三ページの文書を置いた。「これは?」
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37話 結婚という言葉の、その先

一緒に暮らして半年が経つと、周りが結婚の話をするようになった。最初は社員だった。「先生、一ノ瀬さんと結婚するときは、招待状をくださいね」昼食中の言葉に、紗月は箸を置いた。言った社員は、しまったと気づき、慌てて言い直した。「いえ、必ずされるという意味ではなくて。もし、いつか……」「今のところ、予定はありません」それだけ言って、また食べた。二度目は、読者イベントだった。交際を公式に発表したことはないが、さらに何度か写真を撮られ、二人の関係は公然と語られるようになっていた。司会が場を盛り上げようとして聞いた。「最近、お幸せそうですね。おめでたいご報告も期待していいでしょうか」紗月は笑わなかった。「新作のご報告でしたら、ご期待ください」短い拍手が起こり、司会は次の質問へ移った。帰りの車で、怜司はその話を出さなかった。「何とも思わない?」紗月が聞くと、彼はハンドルから片手を離し、シフトの横に置いた。「何が?」「みんなが、結婚の話をすること」「嫌だよ」「私のせい?」「俺たちがする話を、先に他人がするから」紗月は窓の外を見た。信号が変わっても前の車が動かず、後ろからクラクションが鳴った。「怜司」「うん」「結婚したいと思う?」車がゆっくり進んだ。すぐには返事がなかった。「紗月とは、したい」指先で、バッグのひもに触れた。「いつから?」「一緒に暮らす前から、考えてはいた」「どうして言わなかったの?」「結婚という言葉を聞く準備ができたか、わからなかったから」「今は?」「今も、わからない」前を見てから、付け足した。「だから、聞かなかった」帰宅して、紗月はいつもより長く手を洗った。怜司は着替え
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-01
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38話 私から、結婚しよう

決めるまで、さらに二か月かかった。その間、怜司は約束どおり、資産と債務の資料をまとめた。預金、年金、残る車のローンまで。紗月も会社の株式、著作権による収入、不動産、事件後も残る債権を開示した。紗月は真紀に、怜司は別に依頼した弁護士に、それぞれ確認してもらった。一緒になる相手だからこそ、各自で助言を受けるほうがいい。それが真紀の考えだった。婚前の財産に関する契約書は、十一ページになった。紗月の既存の著作権と株式は、紗月の財産として残す。怜司の資産と債務も、彼が責任を持つ。生活費と、将来ともに暮らす家については、同額を負担することにした。互いの仕事上の判断を代わりにしないという一文も入れた。法的な効果には限りがあると聞いても、残した。「この条項は、宣言に近いものです」怜司側の弁護士が言った。紗月はうなずいた。「わかっています。それでも、書いておきたいんです」怜司にも異論はなかった。全部読み終えた日にも、彼は結婚しようとは言わなかった。初めは待ってくれていると思った。数日すると、少し不思議になった。指輪は、紗月が先に見に行った。大きな石より、毎日はめてタイピングできる、細いものがよかった。サイズは、眠っている指に糸を巻いたりせず、本人に聞いた。「指輪、何号?」「どうして?」「必要だから」それ以上は聞かず、昔指輪を買ったときの控えを探して教えてくれた。紗月は同じデザインを二つ注文し、仕事部屋の引き出しへしまった。「もう、聞かないの?」夕食の食器を洗っていた怜司が、水を止めた。「何を?」「結婚」「まだ、聞いたことはないよ」「車で、したいって言ったじゃない」「したい、とは言った。しよう、とは言ってない」紗月は布巾を持ったまま、彼を見た。「どうして?」「自分から決めたいのかなと思って」「じゃあ、一生待つつもりだった?」「一生ではないけ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-01
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39話 お願い、旦那さん

小さな結婚の食事会の翌日、食卓は贈り物の保証書と交換用レシートでいっぱいだった。同じ大きさの鍋が三つもあるとわかり、紗月は二つを箱へ戻した。隣で食器の値札を剥がしていた怜司が、手を止める。「これ、誰から?」「花音さん。カード、読まなかった?」「紗月宛てだから、開けてない」「もう夫婦なのに?」「夫婦なら、相手の手紙を開けていいの?」答える代わりに、封筒を開けて彼の前に広げた。お祝いの文の下に、『喧嘩をしても、ご飯はちゃんと食べてください』とあった。「会社で、そんなに喧嘩したっけ?」「一回」「一回なのに、どうして花音さんが?」「翌日の会議で、俺だけ外して、みんなにコーヒーを配ったでしょ」紗月は覚えていないふりで、鍋の箱を閉じた。怜司が笑ってテープを貼った。出社するなり、花音がタブレットを持って来た。「先生、暮らしの雑誌から、夫婦インタビューの依頼です」「結婚して、何日経ったと思っているんですか」「入籍からなら、一か月以上です」「どうして、それを知ってるんでしょう」「食事会の写真が上がっていました。顔はほとんど出ていないんですが、森川先生がお祝いに載せたお花の写真に、先生のアカウントがタグづけされていて」紗月は企画書を読んだ。最初のページに、大きな見出し。〈裏切りを越えて見つけた真実の愛――作家・汐、二度目の結婚〉撮影場所は、自宅。質問には、前夫と怜司を比較する項目まであった。『傷ついた女性を待ち続けた男の純愛』という文も見えた。「受けません」「条件は、かなりいいですが」「金額の問題ではありません」花音はうなずき、企画書を閉じた。「では、結婚の事実だけ確認しますか」紗月は少し考えた。隠したくはないが、説明の義務もない。七年の結婚が、初めから全部嘘だったとも言いたくなかった。あのころの幸せまで偽物にしなければ、今の愛が本物になら
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-02
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40話 行きたい人と、行ってほしくない人

怜司がシンガポール法人への赴任を打診されたのは、食事会から十日後の月曜だった。夕食を終え、テーブルを拭く前に、彼は薄いファイルを置いた。表紙には『アジア原作事業統合プロジェクト』とあった。「会社の資料、私が見ていいの?」「見せられる部分だけ、印刷した」「何か、問題?」「声がかかった。来月から、六か月」最初のページをめくる手が止まった。現地法人に分散した翻訳・映像化の契約管理を整理し、新しいチームを作る仕事だった。数年前の海外事業と、編集の実務。両方を経験していることが、推薦の理由に挙げられていた。「返事、した?」「まだ」「いつまで?」「金曜」今は月曜の夜。彼は、提案を受けたその日に持ってきた。ありがたいと思った。それでも、先に目へ入るのは六か月という文字だった。ようやく結婚してから、一緒に過ごした時間より長い。食卓には、まだ祝いの贈り物の名残さえある。「行って」思うより早く、言葉が出た。怜司はファイルを閉じなかった。「行ったほうがいいと思う?」「いい機会でしょ」「それは、会社の理由」「自分もやりたいから、持ってきたんじゃないの?」「やりたい」短い答えが、胸の真ん中に引っかかった。やりたくないと言ってほしかったわけではない。自分のために諦めると言われるのは、もっと嫌だ。それなのに、行きたいと聞くと、寂しかった。「なら、行けばいい」「紗月」「どうして何度も聞くの。許可が欲しくて見せたの?」「違う。俺だけの生活に関わることじゃないから、一緒に話したい」「話して、私が嫌だと言ったら?」怜司は、しばらく答えなかった。「決めるときに、それも考える」「それで行かなかったら、私が邪魔したことになる」「俺が選べば、俺の選択だよ」「言うのは簡単」
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