私は最後に晃をちらりと見た。そして立ち上がって、その場を離れようとした。「ほんと、葵(あおい)の性格って変わらないよね。すっごい人付き合い悪い。言ったじゃん、私、今日来たくないって、なんかプライド傷ついちゃうわ……」相変わらずのわがままっぷりな杏南の声が後ろから聞こえてきた。彼女の家庭での出来事も、杏南を変えることはできなかったらしい。私は我慢できずに後ろを振り返って見ると、晃が彼女を懐に引き寄せて、なぐさめているところだった。そして夜10時、彼はスケジュール通りに帰ってきた。彼は家に入ってコートを脱ぎもせず、直接私の前にやって来た。「葵、お前、明日杏南ちゃんに謝れよ。お前が先に帰ってから、彼女、ずっと泣いていたんだぞ」彼は失望した様子で私を見つめた。「葵、もう子供じゃないんだ。今日は杏南ちゃんの他にもたくさん友人がいただろ。なんでいつもそうやって自分のことしか考えられないんだ?すっげえ失礼だと思わないのか?」昨夜、あまりよく寝られなかったせいなのか、この時の私は気分が悪くなるほど心臓の鼓動が速くなった。「ただのみかんだぞ。食べたいなら自分でむけばいいだろ?」この時突然、彼と付き合い始めたあの年のことを思い出した。私はりんごを持って、彼に甘えた。彼は私を一瞥すると、眉をひそめた。「俺が面倒な事は嫌いだって知ってるだろ?そんな時間かけて皮をむかないといけない果物とかいらん。俺にむいてもらおうなんて考えるなよ」あの頃の私は、彼は誰に対しても面倒を嫌う人間だと思っていたが、例外があったわけだ。その例外が、私ではなかっただけの話。「高校生の頃なんてまだ子供みたいなもんだったんだから、杏南ちゃんがやったことを本気で受け止めるなよ。お前もそろそろ昔のことは忘れるべきだ。自分一人で悩むならまだしも、周りまで巻き込むなよな。それに、彼女の実家はもう破産まで追い込まれたじゃないか。彼女はもう報いを受けたようなもんだろ」彼が家に入ってきてから5分。300秒という時間。その間口から出るのは全て杏南を庇う言葉ばかり。それにひきかえ私は一言も声を出していない。私は彼を見つめ、悔しくて目に涙が滲んできた。すると晃はため息をついて、疲れた様子で言った。「ほらな、またこれだ。さっきちゃんと筋道立
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