あっけにとられているうちに、背後から拓海にスマホを奪い取られた。その声にはまだ深い酔いが混じっていた。「結月、俺は本当にお前を愛してるんだ。賭けに負けたとしても、お前を悲しませたくなかった。お前に向かって元カノの名前を呼ぶなんて、そんなことできるわけないだろ?」背後からは彼の熱い体温が伝わってくるのに、私の体は芯から冷え切っていた。拓海は甘えるように私の耳たぶを軽く甘噛みした。「結月、なんで黙ってるんだよ」長い沈黙の後、ようやく自分の声が喉から絞り出された。ただ、口にした言葉はひどく震え、早鐘のような心音がそのまま声帯を震わせているかのようだった。「……西園寺真由(さいおんじ まゆ)とは、もうずっと連絡を取ってないって言ってたよね?」拓海は体を起こすと、私の顎を掴み、無理やりこちらを振り向かせた。「でもさ、お前の顔を見てると、どうしても真由を思い出しちゃうんだよ」「特にお前が眉をひそめた顔なんて、あいつと瓜二つなんだもん」この上なく優しい口調で、私の心をズタズタに引き裂くような言葉を次々と口にする。「当ててみようか……どこで気づいた?ブラのホックか?実を言うと、俺もお前のそういうところにずっと不満があったんだよな。お前も真由みたいに、もっと女らしければよかったのに。そう考えると、あいつは俺たちのキューピッドみたいなもんかもな。だって、真由がいなかったら俺はお前を選んでなかったわけだし」私は信じられないものを見る目で彼を睨みつけた。「拓海、この嘘つきっ……!」彼はわずかに眉をひそめたが、すぐに満足げな笑みを浮かべた。「そう、それ。怒った顔はもっと真由に似てる」言いたいことだけを言い放つと、拓海はほどなくして再び寝息を立て始めた。私は何かに取り憑かれたように再び彼のスマホを手に取り、真由とのLINEのトーク画面を開いていた。拓海と付き合い始めた当初から、彼には高校から大学にかけて長い間交際していた元カノがいることは知っていた。破局の理由もよくあるありふれたもので、一方が家庭を望み、もう一方がキャリアを優先したというだけの話だ。しかし交際中、拓海は「真由とはとっくに綺麗さっぱり縁を切った」と何度も私に誓っていた。だが今、どれだけスクロールしても底が見えないトーク履歴を目の当
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