東京・丸の内。化粧品大手ラメールス本社二十階の大会議室で、大手デザイン会社の黒崎社長が、得意げに机を叩いていた。「本部長、ご覧のとおりです。藤崎紗季という一介のフリーランスの案は、弊社のデザイン研究部門の中核コンセプトを、そのまま盗んだものです。即刻契約を解除し、違約金と損害賠償を請求すべきでしょう」統括本部長が困り果てて額に手をやった、そのときだった。重い防音扉が、轟音とともに開いた。「誰が盗作で、誰の契約を切るって?」氷より冷たい声。その主を見た役員たちが、一斉に青ざめて立ち上がった。「た、鷹宮社長!?」怜司が室内を見渡す。高級ロングコートの裾から濃いピンクの花柄パンツがちらちら見えてはいたが、その威圧感だけで会議室は圧倒された。背後から、書類バッグを持った紗季が堂々と入ってくる。怜司は上座の椅子を引き、腰を下ろした。手にしたタブレットを本部長の鼻先へ突き出す。「鷹宮インベストメントは、この会社に五十億円を出資している。そして、この仕事を任されたのは藤崎さんだ。素性も怪しい三流業者の告発一つで、メインデザイナーを切るつもりですか?」「い、いえ、相手から明白な盗作の証拠が提出されまして……」「証拠?」怜司の視線が黒崎を射抜いた。唇に冷たい笑みが浮かぶ。「三週間前、藤崎さんの印刷所の作業員を買収して、デザインを盗み出そうとしたな。未遂に終わった一部始終の防犯映像、それに過去三年間の海外脱税と下請け取引の違反資料。監督当局と検察に渡す一分前だが、説明を続けるか?」黒崎は土気色になり、膝から崩れた。本部長が汗を流し、深々と頭を下げる。「申し訳ございません、鷹宮社長! 事情を確認せず、大変失礼いたしました。藤崎さん、本当に申し訳ありません!」紗季は落ち着いた顔で外付けドライブを接続した。プロジェクターに、半年前から記録してきたタイムスタンプつきの元データが映し出される。最初の案と最終案を並べた。最初にはなかった線が、どの修正依頼で加わったのか。印刷の色を合わせるため、どこを変えたのか。一つずつ示すと、本部長は自分の部署のメールを認め、口を閉じた。「盗作だと指摘された箇所は、御社から二回目に修正を求められた部分です。制作過程ではなく、最終案だけを見て主張なさったんですね」黒崎が画面から目をそらした。紗季はマウスを離さず、同じ内容を議
Zuletzt aktualisiert : 2026-10-01 Mehr lesen