******** 「ん…」 目が開いた時、初めに映り込んだのは光。おそらくそれは人工的なもので、温かさは感じられない。 次に見えたのは、見覚えのある天井。その景色にはっとした。 「…!」 勢いをつけて起き上がる。 その時に金属の擦れる音がして、息を呑んだ。 慌てて髪に触れる。そこで雨に濡れて軋んだ様子などかけらもないことに気づく。 自分のすぐ下を見れば着ている服が違う。膝も、よく見れば肘も腕も、擦りむいたと思われる場所には包帯がしてあって、治療がされたことなど明白で。 ——手首にはまた、手錠がかけられていた。 「…あ、あぁ…」 言葉もでない、出せるわけがない。 強い後悔が、脳をめぐる。 どうして、自分はここに。 (こんな、はずでは) 「!」 不意に入ってきた扉の開く音に目が向いて、そして眺めたそれは静かに閉まった。こちらに歩いてくる革靴の音が静かに、部屋の中に響く。 「あぁ、起きたんだね」 “彼”の声がする。 革靴の音がやけに大きくて、息ができない。 心臓が今にも止まりそうになっている。 背筋が凍って、手が。 手の震えが、止まらない。 「…」 彼がベッドの淵に腰掛ける姿を見開いた目が追っている。そのまま彼はこちらを向いて、滞ることなく口を開いた。 「どうして?」 最初に彼からそう言葉が出る。 「僕がわからないって思ったの?」 だけど自分は声が出ない。 「どうして離れたりしたの?」
Dernière mise à jour : 2026-10-11 Read More