冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

冤罪悪役令嬢はヤンデレ王太子に溺愛監禁される

last updateLast Updated : 2026-10-12
By:  まつなが しろUpdated just now
Language: Japanese
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「リリーナが僕を嫌いでも僕はリリーナを愛してるよ!」 「嫌いだとわかっているならご自身の行動を見直してくださる!?」 冤罪で投獄された悪役令嬢が誘拐された!? 主人公リリーナはある冤罪をかけられ投獄された悪役令嬢、ある日彼女は牢に爆弾を投げ込まれそこから誘拐されてしまう 誘拐先はリリーナのいるパンドラの隣国フレーメンに建てられた一軒の屋敷 そこへ彼女を誘拐してきたのは長年彼女のストーカーをしていたフレーメンの王太子ディードリヒであった しかし戸惑いながらもディードリヒの変態行為に振り回される内、段々とリリーナは子供の頃に無くしてしまった「本当の自分」を取り戻していく…

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Chapter 1

プロローグ:贖罪に放り込まれた爆弾

罪を犯した。

それは許されないことで、自ら許す気もない。

神に贖罪を求めるべくもなく、この場所に来て一年が経つ。断罪を受けたあの日から自分の在り方は変わらない。ただ罪を受け入れるだけ。

「…神よ」

今日という日に感謝を————

ドゴンッ。

「!?」

背後で大きすぎる音がして思わず振り返った。そこには瓦礫になった煉瓦がいくつも転がり、壁には大穴ができてしまっている。

大穴から差し込む静かな月明かりをよく見る暇もなく、

「むごぉ!?」

死角から顔に袋を被せられた。

そのまま引きずられどこかに運ばれているようで、すぐ何かに抱えられたのはわかるものの足元がおぼつかない…どころか何もない。ふわふわと浮いてしまっている。

「むー!! むぅーー!!!」

遺憾の意を訴えたところで相手に届く気配もない。今自分には何が起きて、どういう状況なのか、全くもって想像する隙間すらなかった。

何か着地した音がしても、自分の裸足が地面に着いた感覚はない。なんならそのままどこかに進んでいるのか頭が揺れて気持ち悪いまである。

一体何が、何が起きているんだ。

やがて何かの開く音がして、その中に放り込まれる。手足は手早く拘束され、最後に口に何か、麻の袋越しに布を押し付けられた。

「むぐっ!? むぅ!!!!!」

さっきまでより尚更呼吸がしづらい。

何より意識が遠いような…? いやようなではなく遠くなっていっている。

(あぁ、神様…私《わたくし》への制裁はまだ足りぬと…そう仰られるのでしょうか)

急激な眠気に意識を手放しながら、脳が勝手に走馬灯を起こしてここまでの罪をまた思い出していく。

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プロローグ:贖罪に放り込まれた爆弾
罪を犯した。 それは許されないことで、自ら許す気もない。 神に贖罪を求めるべくもなく、この場所に来て一年が経つ。断罪を受けたあの日から自分の在り方は変わらない。ただ罪を受け入れるだけ。 「…神よ」 今日という日に感謝を———— ドゴンッ。 「!?」 背後で大きすぎる音がして思わず振り返った。そこには瓦礫になった煉瓦がいくつも転がり、壁には大穴ができてしまっている。 大穴から差し込む静かな月明かりをよく見る暇もなく、 「むごぉ!?」 死角から顔に袋を被せられた。 そのまま引きずられどこかに運ばれているようで、すぐ何かに抱えられたのはわかるものの足元がおぼつかない…どころか何もない。ふわふわと浮いてしまっている。 「むー!! むぅーー!!!」 遺憾の意を訴えたところで相手に届く気配もない。今自分には何が起きて、どういう状況なのか、全くもって想像する隙間すらなかった。 何か着地した音がしても、自分の裸足が地面に着いた感覚はない。なんならそのままどこかに進んでいるのか頭が揺れて気持ち悪いまである。 一体何が、何が起きているんだ。 やがて何かの開く音がして、その中に放り込まれる。手足は手早く拘束され、最後に口に何か、麻の袋越しに布を押し付けられた。 「むぐっ!? むぅ!!!!!」 さっきまでより尚更呼吸がしづらい。 何より意識が遠いような…? いやようなではなく遠くなっていっている。 (あぁ、神様…私《わたくし》への制裁はまだ足りぬと…そう仰られるのでしょうか) 急激な眠気に意識を手放しながら、脳が勝手に走馬灯を起こしてここまでの罪をまた思い出していく。
last updateLast Updated : 2026-10-05
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目が覚めても悪夢
******** 「ん…」 彼女は悪夢を見たかのように目が覚めた。内容は覚えていないが、とても疲れる夢だった気がする。 ぼぅっと目を開いてぼんやりとした意識を揺蕩わせると、なんだか体が重たいことに気がついた。ひとまず寝返りでも打つかと体を動かそうとして動かないことに気づく。 「…?」 腹の辺りに何かが乗っているような…重さと拘束感。これは一体なんだろうか。 ついでに言えば、視界はうまく開けないのに音だけやたらと聞こえる気がする。何か、そうこれは、荒い呼吸のような…。 そんな中で、そっと何かが頬に触れた。これは人の温かさと触り心地だと思って、誰かの手のように感じわずかにすり寄る。 「あ、は…」 震えるような声が聞こえた。 聞き覚えのない声のようだが、誰の声だろうか。やっと開いてきた視界でぼんやりと天井へ視界を向けると、そこには、 「あは…」 「!?」 知らない男がニヤついていた。 「…!」 人間、驚きすぎると声が出ないというが、まさか実体験になるとは思っていない。しかしながら、あまりの恐怖に目は覚めた。体は酷く重だるいが動けないほどではない。 動けないわけではないはずなのだが、実際物理的には動けなかった。なぜと言われれば、男が、目の前で満足そうにニヤついてる男が、自分の上に跨り、腹を脚の付け根でしっかりと固定しているからである。 確実に脳はパニックで、いっそなにも考えられそうにない。それでもその様子すら楽しむように相手はこちらを見て今にも果ててしまいそうなほど至福にニヤつきこちらを観察している。 この状況を“怖い”と言わずしてなんと言えばいいのか、彼女にはわからない。 「おはよう、リリーナ…」 見開いた目に映る男が、優しさに満ちた神父のような声を出した。なんなら見た目も、物語に出てくる王子のように見える。この場は薄暗くて正確には言えないが、美しい黒髪に勿体無いほど濁ってしまった水色の瞳。まるで仄暗い場所にいるかのような目が、自分に向いている。 それにしても、男はなぜ自分の名を知っているのだろう。考えても答えが出る状況ではないが、やはり疑問が脳をチラつく。 「!」 男の大きな手が頬に伸びて思わず目を閉じた。それでも大きな掌は彼女の頬を優しく撫で、もう片手で彼女の小さな掌と重ね合わせ指を絡め
last updateLast Updated : 2026-10-05
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憔悴と追憶(1)
******** 自分の下にあるのは薔薇の花弁が散らされた高級なベッド。部屋そのものは空調で温度が保たれ、オイル式の芳香剤の香りが広い部屋に漂っている。ベッドから降りれば花柄の良い布と美しい木材で作られた質の良い家具たちが揃えられ、とても居心地の良い空間が広がっているのだ。 「…」 「ほらリリーナ、今は動いたらダメだよ」 この、自分の後ろで髪を梳いている男と両手首につけられた鎖付きの手錠さえなければ。 「リリーナ、うちのシャンプーはどうかな? 城で評判の良かったものを取り寄せてみたんだ」 「…そうですのね」 「こんなもの使わなくてもリリーナの髪は綺麗だと思ったんだけど…リリーナは身だしなみを気にする子だからきちんとしてあげようって思ったんだ」 嬉々として髪を弄っているこの男が、かの王太子であるなど嘘だと思いたかった…が、確かにその美しい顔面は紛うことなくよくみた本人のものだし、こんな美形が世の中早々いてたまるか、という意味でも認めざるを得ない。 人間表裏一体とは言ったものの、まさかこんな裏側のある人間が今自分の後ろにいることすら恐ろしい上、なんなら昨日はベッドに潜り込んできた。怖すぎて眠れない朝を迎えたがとても歓迎はしたくない。 ほぼ常にというほど相手が何かと話しかけてくるが、もはや返事するのすら疲れてしまった。 繋がれた鎖は部屋の中に備え付けられたトイレと風呂にはいけるが部屋の外には行けないという絶妙な長さになっていて、脱走に失敗したのを見つけた相手が大変ご満悦な笑みを向けてきたのを何度も思い出す。 ただそれ以外に危害があるのかと言われれば今のところ無いと言っていい。抱きつかれるのと匂いを嗅がれるのを除けば、だが。おかげで精神的な疲労も含めすでに彼女は倒れそうになっている。 初対面…と言うと語弊があるが、ここにきて数日でもう倒れそうなどこれから心が保つのだろうか、考えるだけで背筋が凍る。 「はい、できた。今日はツインテールにしてみたよ、リリーナ」 そう言ってディードリヒは鏡を差し出す。器用に前髪は揃えられ、横髪は縦ロールに、後ろ髪は高めのツインテールにまとめられていた。ディードリヒはこうやって毎日リリーナの髪を弄って遊んでいる。 「…相変わらず器用ですこと」 「そうでしょ? リリーナを可愛く
last updateLast Updated : 2026-10-05
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憔悴と追憶(2)
*** 思い返しても自分のやったことに矜持があったとは、今でも思えない。冤罪がかけられたとて弁明できるほどの人間でもなかったのも事実。 ならば全ての罪を背負いせめて家名が潰れることを防いだ。それならば幸運なほどだったと考えた方がいい。 しかしそれでも、反省も後悔も足りていなかったようだと考えてしまう。真後ろから自分を抱きしめ肌を撫でるか匂いを嗅ぐかして勝手にリリーナという人間を堪能してる人間がいる以上は。 「はぁ…」 後頭部やや上から聴こえてくるため息はそれはもう耽美と言えて、何も知らない婦女子の方々が聴いたら黄色い悲鳴が飛んでくる景色が見えるほど…なのだが。 「あぁ…リリーナ…香水なんてつけなくてもいい香りなのに、どうしてあんなものをつけてたの? 照れ隠し?」 「…」 やってることは言葉を返すことさえ、いや関わることさえ躊躇う狂気と言うよりない。相手が質問してこようが返すのを躊躇うのではなくて返したくないと心が言っている。 (香水は照れ隠しではなくてマナーですわ…) しかし言わなくてもそんな社交常識を知らない男ではあるまいと考えると、むしろ殺意すら湧いてきた。 「でもまだ知らない石鹸の香りが残ってる気がする…牢で出るような粗末な石鹸じゃなくて、リリーナはうちの綺麗な石鹸を使うからすぐ僕と似た香りになるよ」 「知りませんわよ…」 そんなことより解放してほしい。 「え、まって、このままいけばリリーナと僕似た匂いになるの…? それって夫婦…?」 「…」 後ろから聞こえる声はときめいて弾んでいる。恋愛話をする社交デビューの令嬢みたいな態度だがやってるのはもうそんな初々しい時期などとうに過ぎた男だし、発言の中身は変態極まりない。 自分と相手の温度差が恐ろしすぎる。 「考えただけで心臓が爆発しそう。でも肌はとっても良くなったね…すべすべ、柔らかいし綺麗」 うっとりとディードリヒはリリーナが着せられたドレスから伸びる脛を撫でた。また背筋が少しぞわりとしたが、逆らって恐ろしい目に遭うかもしれないとまだ警戒してる自分がいて動けない。 「…」 本当に、恐ろしくてため息が出る。 これだけの状況なのに、用意されている状況以外の全ては断罪前のものにそっくりで。 今着ているドレスも、ここまで着せ
last updateLast Updated : 2026-10-05
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わずかな自由(1)
******** ある日の夜、“もう自分はこのままなのだろう”と覚悟を決めて眠りについた。 故郷に帰れるわけもなく、己の罪が消えるわけでもなく、そもそもここがどこなのかもわからない。そしてあの変態から逃げられる気もしないとくれば、もう諦めて己の身を守るしかないのではないかと思えてきてしまった。もうなんというか、少しでも希望を持つのは難しい。 そう思いながら、そして今日もディードリヒがベッドに潜り込んでくるのだろうと内心げっそりしながら布団をかぶって、翌日。 「…」 何気なく見た手首に手錠がないと気がついた。夢かと思って頬を思い切りつねってみたが痛みを感じてむしろ頭が混乱する。 「…?」 何がどうなったら今に至るのか理解できず固まっていると、ノックの音が聞こえて意識を引き戻された。 返事をすると中に数人のメイドが入ってくる。押しているワゴンには朝の身支度を整えるための道具が乗っていたので、ひとまず身支度をしようと気持ちを切り替えた。 「あの」 その中で、一つ声を出す。 今はネグリジェからドレスへの召替えを行なっている。何度着ても、何を着てもサイズがぴったりで毎日のように気持ち悪いとは思う。 「如何しましたか?」 メイドの一人が反応した。 「手錠が、外れていて」 「あぁ、殿下のご判断の様です」 「殿下が?」 「えぇ、殿下が仰るには『もう逃げないだろう』と。お屋敷の敷地内でしたら自由に回って欲しいとのことでした」 「…?」 状況を把握しかねた。
last updateLast Updated : 2026-10-06
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わずかな自由(2)
「怖い?」 急に出てきた言葉の意図が読めずそのまま疑問にして返してしまう。しかし相手とはずっと視線が合わず、ディードリヒは不安げに足元を見るばかりだ。 「君が、あの部屋から出てしまって、怖くて」 そう言いながら自分を抱きしめた腕は声と同じだけ震えている。そっと触れ合うような抱擁は縋るようで、珍しく弱気なディードリヒの姿にリリーナは少し胸が鳴った。 「じ、自由にしていいと言ったのは貴方ではありませんか」 「そうだよ。リリーナはここからいなくなったりしない…でも放鳥が自分にとって都合が良いとは限らないだろう?」 「…」 感情が複雑に矛盾していく。相手が自由にして良いと言ったのに、という感情と、何かいけないことをしてしまったような罪悪感が渦を巻き始める。 「僕はリリーナがいないとダメだから、もう離れられないから…もう少し大丈夫って思えるまで部屋に居て貰えばよかった」 こんなに弱られてしまうと少しばかり罪悪感が優位に立つが、かといってあの部屋に繋がれたままというのも受け入れ難い。ただ相手が来るのを一人で待つだけの生活は余計なことを考えやすく、いろんなことが不安になる。 「…何か勘違いをしている様ですけれど」 「…?」 リリーナの言葉に疑問を抱いたディードリヒが彼女と今日初めて視線を合わせた。 「そもそも私を無理やり繋ぎ止めようという心が良くないのですわ」 「…どういうこと? ここから出ていきたいの?」 相手の言葉にリリーナは少しばかりむくれる。 「そういうことではありません。貴方が何をもって私を好きだと仰るのかはわかりませんが、そう言うのであれば私をもっと信用して欲しいのです」 「信用?」 「私は人形ではありませんのよ。立って歩きますし呼吸もします。でもだからこそ、共にいることができるとは思えませんですの?」 リリーナは相手に対して堂々と言って見せた。その強い光を持つ瞳に、ディード
last updateLast Updated : 2026-10-07
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誰がなんと言おうと秘密基地(1)
******** あの部屋からリリーナが解放されて一ヶ月が経とうとしている。 結局あの部屋は監禁されないだけでそのままリリーナのものとなった。ディードリヒ曰く彼女のために作った部屋らしく、更に言えば客間を作ってない屋敷だそうでリリーナは呆れながらあの部屋を使うことに。広く使いやすくてベッドも大きく良い部屋だとは思うが、本人の心境としては複雑だ。ちなみに朝起きると必ずディードリヒが隣で寝ているので、リリーナとしては毎日恐ろしい。 もう一つ言うのであれば、一悶着ありかけたお茶会は結局開催され、日々屋敷のどこかで行われている。場所はリリーナのその日の気分次第だが、時折ディードリヒが執務室を離れられない場合のみリリーナがその場に顔を見せていた。 「…なんと言いますか」 「?」 お茶会の最中、リリーナがふと言葉を落とす。 「このお屋敷の本棚はこの部屋だけですの??」 「そうだと思うけど…」 「欲を言って宜しければ一つ増やして頂けませんこと?」 「何か読みたいの?」 「暇つぶしができればなんでも良いのですが…ロマンス小説あたりがさっと読めて良さそうですわ」 「まぁここの本棚には仕事の類のものしかないし…取り寄せるよ」 そう言うとディードリヒは執事を呼んで言伝る。それからリリーナに向き直って紅茶を一口飲み込んだ。 「それにしても意外だな、リリーナってロマンス小説とか読むんだ」 「子供の頃はよく読みましたわね…想像力が育まれますわよ」 「報告にないと思ったらそういうことか…」 「報告ってなんですの?」 「ストーカーだもん。君の行動は筒抜けだよ?」 ディードリヒはにこりと笑い、リリーナは背筋に嫌なものを感じそれ以上は一度黙る。 少なくとも、いつかに胸が鳴ったのは気のせいだった
last updateLast Updated : 2026-10-08
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誰がなんと言おうと秘密基地(2)
「…好きだよ、リリーナ」 「!? な、なんですの急に…」 「君の気高さも、聡明さも、強く美しい瞳も、ピンクブロンドの髪も…全て、君を成す爪の先から魂の端まで全部愛してる」 「ひっ…」 リリーナはまた変態発言が飛んでくるのかと身構えた。しかし彼が彼女に向けるその瞳に曇りはない。 「本当に、ここに閉じ込めてしまいたいよ。君はどこにでも行けてしまうから、一緒にいるには…それしかないって思い知らされる」 「…」 ディードリヒは視線を下げる。 「本当に君を愛しているから、だからそばにいて笑っていてほしいのに。どうして君の自由を奪わなければそれは叶わないんだろう」 どこを見ているのか窺い知れないその瞳から、少しずつ光が奪われていく。その視線が彼女を見た時、変態と彼女が恐れるはずの視線がひどく寂し気に、見えた。 「…」 だからすこし、ほんの少しのはずだ、自分の感情が揺れたのは。本当に愛されているのかもしれないと、ほんの少しだけ考えてしまったから。 「…貴方、私をなんだと思っていますの?」 「え?」 「貴方には私が、そんなに薄情な女に見えるのかしら」 「違う、それは」 「何もなくなってしまったただのリリーナになったとしても、私の気高さは失われませんが、たとえルーベンシュタインの私であったとしても、恩を仇で返すようなことは致しません」 「リリーナ…」 「私が今すぐにでもここを飛び立つと思わないで。ここから先の身の振り方は確かに考えなくてはいけませんが、貴方には、貴方がくれたこの温かい場所には感謝しています」 「…本当に?」 強い瞳のリリーナに、ディードリヒは震える声を返した。それでも彼女は揺れたりなどせず、もっと真っ直ぐに相手を見る。 「嘘をつくにも場所が必要ですわ。私は貴方の変態行動をに目をつぶれませんし、とても良しとは言えませんが、それでも私に気を遣っ
last updateLast Updated : 2026-10-09
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このままではいけない(1)
******** 「もう、このままではいけませんわね…」 就寝前のベッドの上で、やはり考えてしまう。 このベッドに横になるようになってなんだかんだと三ヶ月は経ってしまった。 三ヶ月…経ってみて起きた変化と言えば、自分にとってよくない変化ばかりに思う。変わってほしいところは変わらないし、変わって欲しくない部分が変わってしまった。 そう、主にディードリヒに対して。 ディードリヒがこちらに向けてくる過剰な行動は変わらない。何一つ変わらないというのに、自分がそれに慣れつつある。ふと向こうがこちらを見つけた拍子に抱きついてくるのをスルーできるようになってきてしまっていることも、変態発言を放置できるようになってきてしまっていることも、全ては警戒心が薄れている故の行動としか言いようがない。これではいずれ相手の行き過ぎた行動に対して“そういう人だから”と諦めがついてしまうのも時間の問題だ。これからも警戒は怠らず、向こうの過剰な接触は阻止しなくてはならないと固く心に誓う。 「…」 そしてもう一つ、このままというわけにはいかないことがある。 今後の身の振り方だ。 己の罪が覆ることはない。王国、というのはある種究極の独裁を指す。それ故に王として求められるのは公平性と誠実さ、知能、知識、統率力にカリスマと…多岐に渡るわけだが。それでも王の発言が、その息子の発言が早々簡単に覆ることなどない。そうでなくても、公爵家として名高い家名に恥を塗るためならその場で協力するような家だってあっただろう。どう見たところで、自分があの家の門をもう一度潜ることはない。 ならここにいても良いと言う自分がいないわけではないが、それが一番悪手だと言っていいだろう。 相手は王太子なのだ。はっきり言って現状は綱渡りであると言える。 国の顔として示しをつけなければいけない立場の人間が、一ヶ月の半分はこんなところで惨めな女に現を抜かしているなど、ス
last updateLast Updated : 2026-10-10
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このままではいけない(2)
*** ディードリヒにも避けられない予定はある。というか、避けられない予定ばかりのはずなのだが、とにかく四六時中この屋敷にいるわけではない。 月に一度、一週間…長いと二週間ほど彼は必ず城へ帰る。この国の情勢がわかるようなものは一切この屋敷に無いので外の状況がどうなっているのかはわからないが、これは確かにチャンスと言えた。 手錠が外れてしばらく、すっかりこの屋敷の敷地は間取りは覚えている。さすれば、このタイミングを逃す手はない。 「じゃあ行ってくるね、リリーナ」 「…はい、行ってらっしゃいませ」 屋敷の玄関前で交わされる挨拶に少しだけ緊張した。相手は自分を抱き寄せて頬に挨拶程度のキスをすると、雨降る中の外へ出かけていくのを見送る。 脱出は、今日にしようと決めていた。閉まるドアに向かって静かに手を振りながら、まだ慌ただしい屋敷の中を確認する。 普段の静かな屋敷では誰かに見つかってしまいかねないが、この慌ただしさであれば多少監視の目も薄れるはず。正直手錠もなければ玄関まで見送れるなど幸運であるというよりなく、それでも思惑がバレないよう普段通りのフリをして部屋に帰った。 「荷物は…これだけ、ですわね」 そう言って机に置かれたままだった香水を手に取る。 そのあと部屋をぐるりと見渡して、改めて自分のものなどないと気づき、それもそうかと納得した。身の回りのものは全て与えられたもので、ここに来た時のドレスも捨てられてしまったと聞いたし本当に自分のものなど何もない。この香水を除けば。 それにしても、と脳に余計な思考が過ぎる。 「縛られなくなりましたわね、私」 縛ってほしいというわけではないが、そこまで信頼を勝ち取ってきた証明でもあると思うと、誇らしいような、少しだけ寂しいような。 ともあれこの機会だけは逃せない。リリーナは部屋の小窓に手をかけた。 この部屋に大きな窓はないが、彼女が頑張ればぎ
last updateLast Updated : 2026-10-10
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