「水落以外は、全員指を一本倒して!」依由は申し訳なさそうな顔をしたあと、ふと私に目を向け、うれしそうに声を上げた。「梨瑚、まだ残ってるの、もう私たち二人だけだね」私は最後の一本を立てたまま、口元に苦い思いをにじませ、ひと言も発することができなかった。向かいの席から声が上がる。「瑛斗も、まだ一本残ってるぞ!」同級生の一人が瑛斗を呼び戻しに行った。瑛斗は座る前に一瞬動きを止め、依由のほうへ視線を向けたようだった。依由は顔を上げ、優しくほほ笑んだ。「ネギを取り除いてくれてありがとう。こんなに年月が経っても、私のネギアレルギーを覚えててくれたんだね」「ほら、早く座れよ!まだ話してないの、お前だけだぞ!」瑛斗は無理やり席に座らされた。「俺は......」語尾を引き延ばす瑛斗を、みんなが期待のこもった目で見つめていた。私だけが、ネギを半分ほど取り除いた帆立の雑炊をじっと見つめ、もう片方の手でテーブルクロスをきつく握りしめていた。「20年間、ずっと好きでいる女の子がいる」個室中に、一斉にはやし立てる声が響き渡った。期待に浮き上がっていた心が、重く沈む。私はそっと目を閉じた。依由と瑛斗が小学生の頃からの幼なじみだということは、クラスの全員が知っている。これでは、遠回しに告白しているようなものだった。「ほかにいる人は?いないなら指を折って!」私は右手を握り込んだ。目を開けると、なぜか瑛斗と視線がぶつかった。彼はわずかに唇を引き結んでいた。その目は、余計なことを言うなと私に釘を刺しているように見えた。でも、そんな心配は要らない。私はもう負けたのだ。余計なことを口にする資格さえ、残っていなかった。「榎並も水落も指を折ったから、今回は大西の勝ちだな!大西以外は、全員罰として三杯飲むこと!」みんなは「さすが秀才だな」と笑い合いながら、それぞれ酒を注いだ。私も自分のグラスに一杯注ぎ、飲もうとした。そのとき、依由のためらいがちな声が聞こえた。「でも私、お酒はあまり飲めなくて......飲まなくてもいい?」瑛斗はそれを聞くと、「ああ」とうなずいた。「女子はみんな飲まなくていいよ。代わりに水を飲んで」みんなが訳知り顔で目配せを交わす。隣に座っていた、学生時代に同じ寮の部屋だ
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