『wasureji no kotonoha』の繊細な心理描写に惹かれたなら、同じ作者の『宵闇の唄』もおすすめだ。
特に主人公の揺れる感情を風景と重ねて表現する手法が秀逸で、読後も余韻が残る。雨の情景や夜明けの描写が、キャラクターの内面と見事にシンクロしていて、ページをめくる手が止まらなくなる。
初期作品の『砂時計の向こう』とはまた違った成熟した筆致で、成長を実感できるのも楽しみの一つ。静かな物語が好きな人にはたまらない世界観だ。
『wasureji no kotonoha』は言葉が失われていく世界を描いたSF的な要素を含んだ作品で、主人公が消えゆく言語を守るために奮闘する物語です。
舞台は近未来、突然人々の記憶から言葉が消え始める現象が発生します。「愛」や「希望」といった抽象概念から消えていき、社会は混乱に陥ります。主人公の青年は言語学者の父親の研究を引き継ぎ、この現象の謎を解き明そうとします。
クライマックスでは、言葉が感情そのものを消していく真実が明らかになります。主人公は最後の手段として、自分自身の記憶に全ての言葉を封じ込める決断をします。結末は曖昧で、主人公が言葉と共に消えたのか、それとも…という余韻を残す形で締めくくられます。