最近読んだ'kurara forest'の二次創作で、とくに心に残ったのは、公式ではほとんど交流のなかったレンとシオンを主役にした短編です。作者は雨上がりの森のシーンを選び、二人が偶然古い観察小屋で
雨宿りする設定から始まります。湿気で曇ったガラス越しの光、木の匂い、そしてレンが持っていたカメラのレンズに映るシオンの横顔——細部へのこだわりが圧倒的でした。キスシーンは、シオンがふと漏らした「ここ、子供の時から
秘密基地だったんだ」というセリフをきっかけに、レンが彼女の過去に対する優しさに気づく瞬間から自然に展開します。カメラを置いた手が触れ合い、距離が縮まる描写は、この作者ならではの繊細さだと思いました。
この作品の素晴らしさは、キャラクターの本質を損なわないことです。レンは相変わらず無口で、シオンも依然として森の観察記録に夢中なのですが、その隙間から溢れる感情が、公式で描かれなかった可能性を鮮やかに提示していました。特に、キスの直後にシオンが「…写真、撮っていい?」と訊ね、レンが苦笑いしながら頷くラストシーンは、二人の関係性を壊さない範囲で最大限の甘さを表現していて、何度も読み返しています。