『黒執事』のセバスチャンとシエルの関係性をロマンスに発展させた作品で特に印象深いのは、AO3の'Contractual Affections'だ。この作品は原作の暗いテーマを保ちつつ、二人の関係を官能的で心理的な深みへと導く。シエルの成長とセバスチャンの執着が、契約を超えた感情へと変化する過程が繊細に描かれ、特にシエルが過去のトラウマと向き合うシーンは圧巻だ。
このファンフィクションは、原作のゴシックな雰囲気を損なわずにロマンスを織り込むことで、読者に複雑な感情を呼び起こす。セバスチャンの「執事」としての役割と、シエルへの曖昧な愛情の狭間で揺れる様子が、暗い美しさを持って表現されている。『黒執事』の世界観を壊さないバランス感覚が秀逸で、特にシエルが彼の「所有物」であることと「愛する存在」であることの矛盾が際立つ。