愛が消えた時医者に「もう手の施しようがない」と宣告されたのは、ほんの数日前のことだった。
肺がんが全身に転移し、余命はわずか三日。
その言葉を聞いた瞬間、私はすべてを受け入れた。
何もできない。けれど、何かを残したい。
だから、自ら進んで臓器提供の同意書にサインした。
たとえ命が尽きても、私の体の一部が誰かの命を救えるのなら、それだけで十分だと思った。
病を告げられた時、私は家族に正直に打ち明けた。
でも、医者である姉は私がただの被害妄想に囚われているだけだと一蹴した。
「それは精神の問題で、癌なんかじゃない」と。
両親はすべてを姉に任せ、治療の方針も判断も、彼女の言うとおりに進められた。
その結果、私は確実に死に向かっていった。
そして、私が本当に死んでしまったそのとき、ようやく、両親も婚約者も、私の亡骸の前で泣き崩れた。