お粥をくれた夫にさようなら会社で20億のプロジェクトをまとめた後、ボーナス600万を手にして、新車に乗り換えようとしていたところだった。
社長である夫の宗像研人(むなかた あきと)が、みすぼらしい粥の入ったどんぶりと、【ボーナス0円】と書いている給与明細を持って、私、須藤安奈(すどう あんな)の前に現れた。
「すまない、安奈。会社の赤字が本当に深刻でね。僕の手作りのお粥を君がプロジェクトをまとめたご褒美にしよう。資金繰りが戻り次第、必ず新車を贈るから、ね」
ところがすぐに、研人の後輩である女性、紀野愛雲(きの あいも)のSNSを見て、いつもはケチな研人が彼女に6000万のボーナスを特別に承認し、さらに4000万のBMWの新車を贈ったことを知った。
【業績が良くなくても、先輩が私を思いっきり甘やかしてくれるもん】
お金がないのは、ただ研人が私のために金を使いたくないだけの嘘だった。
私は騒がず、黙って彼女の投稿にいいねとコメントを残した。
【末永くお幸せに】
間もなく、研人から電話がかかり、焦った様子で言った。
「変に思わないでくれ。愛雲の母親が癌でね、同窓のよしみで特別にボーナスを承認したんだ。
車を買ったのも、病院への往復の時間を短縮して、仕事に専念できるようにするためだ。すべて会社の利益を考えてのことだ。
君が余計なことをするから、みんなに愛雲が僕たちの結婚に割り込む悪者だと思われてしまう。すぐにコメントを消して誤解を解いてくれ。前に君が行きたいと言っていた新婚旅行、一緒に行ってやるから」
私は【ボーナス0円】と書いている給与明細を破いた。
「もう行かない。市役所に離婚届を出しに行きましょう」