語感を確かめる場面で僕がまず思い浮かべるのは、'More haste, less speed'だ。英語圏のことわざとして、日本語の「急がば回れ」が伝えようとする皮肉な逆説を最も直截に表しているように感じるからだ。直訳すると「急げば急ぐほど遅くなる」というニュアンスになり、日本語の言い回しが持つ「一見遠回りに見える選択が結果的に早い」という含意と重なる部分が大きい。
ただし言葉の使われ方や場面によって、別の諺のほうが適切になることもある。例えば「Haste makes waste」は「急ぎすぎると無駄が生じる」という警告のニュアンスが強く、作業ミスや無駄を強調したいときに向く。一方で『のんびり構えていれば勝てる』という意味合いのある'Slow and steady wins the race'は、長期的な粘り強さを評価する文脈でしっくり来る。
結局のところ翻訳で重要なのは、原語の含意とターゲット読者の文化的期待をどう折り合わせるかだ。短い注意書きや日常会話なら'Haste makes waste'でも十分伝わるし、ことわざとしての機知や順序を示したいなら'More haste, less speed'を選ぶことが多い。僕は文脈重視で選ぶ派だが、最初に挙げた一語一句の響きが好きで、よく候補に上げることが多い。