忘却の糸:愛と裏切りの光と影須藤明智は私をとても愛していると言い、私に、この世で最も盛大な結婚式を挙げてくれると約束した。
しかし、結婚式を三日後に控えたある日、彼は私のためにオーダーメイドで作らせたウェディングドレスを、彼の義理の妹の直美に渡し、私には、記憶を失う薬を手渡した。
「友莉、君を悲しませたくはない。でも、直美は癌と診断され、もうすぐ死ぬ。彼女の唯一の願いは、一度だけ僕と結婚することだ。その願いを、叶えないわけにはいかない」
「この薬を飲めば、君は僕たちの間の全てを、一時的に忘れることになる。でも心配しないで。三日後、結婚式が終われば、君は解薬を飲んで、全てを思い出す。その時、僕はもう一度、君に立派な結婚式を捧げるから」
彼の、拒否を許さないような強い眼差しに、私は迷わず、その薬を受け取り、飲み込んだ。
須藤明智は知らない。この薬は、私が開発したものだということを。
そして、この薬には、解薬など存在しない——ということを。
三日後、私は、私の最爱の人、つまり彼自身を、完全に忘れてしまう。
私たちの間に、再び始まることなど、もう、決してない。