睫に降る雪細川陽(ほそかわ よう)が最も貧しかった頃、四、五時間も歩いて私に会いに来た。
あの日はとても寒かった。
彼はほとんど凍えきっていて、まつげにまで雪が積もっていた。
その後、幾度となく喧嘩を重ねた夜、私はいつも彼のあの時のまつげを思い出した。
だから私は、喜んで仕事を辞め、遠くに嫁ぎ、妊活までしたのだ。
ついさっきまで。
私のブルートゥースイヤホンが、彼のスマホに繋がったまでは。
相手は言った。
「和泉楓(いずみ かえで)って、結構ピュアなんだね。
今でも知らないんでしょ?君があの夜彼女を選んだのは、汚れていないだったからか、それともただでできたからかなんて」