異世界は親子の顔をしていない

異世界は親子の顔をしていない

last updateLast Updated : 2026-07-14
By:  青砥尭杜Updated just now
Language: Japanese
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カイトは祖父と父が失踪した現場である東京タワーを訪れた際に、召喚されて異世界へと転移する。 その異世界には魔法が実在し、国に属する魔道士と国防を担う魔道士団という仕組みも確立していたが、治癒魔法を行使できるのは異世界から召喚された者だけだった。 カイトの前に召喚されたのは二人のみ。その二人とは四十四年前と十五年前に失踪したカイトの祖父と父だった。 激動の時代を迎えていた異世界で強大な魔力を得て治癒魔法を行使する三人目の聖魔道士となった二十歳のカイトは、王配となっていた祖父と師事する世界最強の魔道士の後押しによってミズガルズ王国筆頭魔道士団の首席魔道士に就任することで英雄への道を歩み始める――

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Chapter 1

第1話 聖人の投降

「脫了躺下來!」

伴隨著一道低沉冷冽的男聲。

溫苒心口猛地一跳。

她不知什麼時候染上了這種說不出來的羞恥病。

一旦發病就特別想要。

甚至不分時間場合,工作生活都受到嚴重影響。

溫苒不堪其擾,鼓足勇氣掛了這傢俬人醫院的婦科號。

就是看重這裡保密性強,只是診費是普通醫院的好幾倍。

但她預約的明明是四十多歲婦科主任女醫生,怎麼給她面診的卻變成了年輕高大的男醫生了呢?

「非……得脫褲子嗎?」

溫苒緊張異常,小心翼翼地詢問。

要她在一個陌生男人面前脫褲子,哪怕知道他是醫生,她還是說不出的尷尬。

商冽睿一本正經:「不脫褲子,我怎麼幫你檢查?」

「可是,我……」

溫苒漲紅了臉,扭捏著。

眼前男人雖然戴著口罩,可他犀利的眼神,看起來格外深邃莫測。

她突然就有種要被他猛然撲倒在床,為所欲為的感覺。

溫苒急忙晃了晃腦袋。

天!

她怎麼會有這種想法?

他只是醫生而已,一天要檢查幾十個像她這樣的病患。

這是他的日常工作。

溫苒不斷安慰自己,強忍著羞恥心,緩緩把褲子扯下來,躺上了病床。

「哪不舒服?」

商冽睿一邊準備消毒工具,一邊問。

溫苒臉再次羞紅:「我,那裡……」

見她實在說不下去了,商冽睿平靜地反問:「性生活過度?受傷了?」

像她這樣年輕的女孩來掛婦科的,多半是這個問題。

結果溫苒卻紅著臉搖頭道:「不是,我沒有性生活……」

商冽睿停下動作,轉頭驚疑地掃了她一眼。

眼前的女孩五官精緻,面板嫩得能掐出水來,又嬌又媚,長著一張豔麗又純欲的臉。

讓人看一眼就印象深刻,難以忘懷。

像她這個級別的美女,身邊應該不乏追求者,可她竟然說她沒有性生活?

「我……我是……那裡……有點……難受……」

在男人深沉的眸光下,她紅著臉支吾道。

商冽睿捏著消毒棒的手指,驀然收緊了幾分。

但表面看不出什麼異樣,目光鎖住她:「難受?」

溫苒:「……」

她該怎麼形容呢?

「就、就是……」

她咬了咬紅唇,欲言又止。

商冽睿看著女孩完全羞紅的臉蛋,喉頭微微滾動。

身體不可抑制地竄起一團火。

他按捺住那點心思:「什麼情況導致的?」

溫苒支支吾吾,實在不好意思說:「就,就……我……」

她能說她慾望特別大,其實特別想要?

但結婚一年多,老公傅景成根本沒碰她。

而且隨著她慾望越來越大,越來越想要。

傅景成反而還躲著她。

甚至特別害怕她提出那方面的要求。

溫苒無奈之下,只能自己想辦法解決。

但這樣顯然不夠。

她想要。

想要得更多。

商冽睿觀察她的反應,「結婚了嗎?」

溫苒下意識地點頭。

不知為何他居然有些失落。

商冽睿眸色暗了暗:「先躺下來吧,我檢查一下!」

溫苒乖乖躺了下去。

纖手死死地捏著拳頭。

只感覺臉上火燒火燎的,燙得厲害。

商冽睿凝著她,嗓音莫名低啞了幾分:「不要亂動!」

「……」

溫苒本就羞恥心爆棚。

再加上她身患這種病,怎麼可能安分地被他檢查?

「能不能給我換個女醫生?」

她尷尬地提出要求。

商冽睿眸色愈發暗沉:「對我不滿意?」

「不……不是……」溫苒急忙解釋。

只是她話沒說完,就被他冷聲拒絕:「你今天掛的就是我的號,不想治可以走!」

這男人好凶。

回頭她一定要投訴他。

可是她的病,不能再耽擱了。

姑且相信他的醫術一次。

「我沒別的意思,醫生麻煩你一定要治好我?」溫苒拜託他道。

商冽睿這是第一次代班醫生。

哪裡想到就遇到這麼一個特殊的女病患?

她的病本就……偏偏她還這麼漂亮……

這簡直就是在挑戰他作為男人的自制力。

「少說廢話!」

他沉聲喝斥,喉結再次滾動。

戴上手套,拿起消毒棉籤,緩緩靠近她……

溫苒羞窘地忍不住閉上眼睛。

她老公傅景成都沒看過呢。

現在卻要被另一個男人看。

儘管知道對方是醫生,可她心裡還是很難過那一關。

「啊!」

溫苒忍不住叫出聲。

聲音又嬌又媚。

商冽睿頭皮發麻,渾身緊繃,微微收了手。

「弄疼你了?」

溫苒一雙美眸裡都是溼漉漉的霧氣。

張了張紅唇,卻不知道該如何表達。

理智告訴她這個時候應該剋制,但她的病就是會不由自主地……

她這副嬌柔可憐的模樣,實在讓人把持不住。

「那我輕點。」

商冽睿咳了咳,別開眼,專心致志地檢查……

結束後,溫苒反而更空虛,更難受了。

「醫生,我是不是很嚴重?」

她聲音多了幾分顫抖。

商冽睿控制住自己的情緒,緩緩摘下手套。

「你這是內分泌失調引起的癔症,跟你長期缺乏性生活有關。」

缺乏性生活?

溫苒垂下眼眸,俏臉有一瞬的難堪。

她不是缺乏性生活,而是根本就沒有性生活。

老公傅景成有嚴重潔癖,他們從戀愛到結婚,幾乎很少親密。

但越是這樣,她反而越渴望。

好像全身的細胞都迫不及待地想要得到擁抱、觸碰……

「我給你開一點消炎藥,調理下內分泌!」

商冽睿在電腦桌前坐了下來,給她開藥:

「但建議你回去跟你老公……多做幾次,你這個病就能很大程度地緩解!」

溫苒臉早已經紅得滴血。

她穿好褲子,從病床上下來。

接過商冽睿遞過來的藥單:「謝謝醫生。」

她剛走出診室,就有一個白袍女醫生,從後門進來。

「商冽睿,你竟然趁我不在,看我的病人?」

及時趕到的商媛,憤怒地喝斥自己弟弟。

商冽睿不緊不慢地回答:「別忘了以前我在醫學院的成績一直排名第一,而你只屈居第二,現在我給你免費看診,是你病人的福氣!何況現在整個醫院都是我的!」

「你!」商媛瞪他。

這小子簡直強詞奪理。

不過她這個弟弟向來潔癖,不近女色,今天竟然願意主動給女病人看診,倒是奇怪!

「既然你這麼不歡迎我,我先走了!」商冽睿單手插兜,目光盯著溫苒消失的方向。

「走什麼走?我今天要你過來是見見我們院新來的心臟科王醫生的,她年輕漂亮,而且醫術高明,是我們院的一枝花,最重要的是現在還單身,沒有男朋友……」商媛急忙叫住弟弟,極力推薦。

「再說吧。」

商冽睿興趣缺缺,敷衍一句就離開了。
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第1話 聖人の投降
 男の脳裏に浮かんだのは息子の顔だった。  この異世界に来てから産まれた娘の顔ではなく、元の世界で成長しているであろう五歳までの姿しか知らない息子の顔。  男は自嘲した。  父親らしいことを何もしてこなかった自分がこんな時にだけ息子を思うなど虫がよすぎる、と。 小高い丘の上に張られた天幕の中に男はいた。  ミズガルズ王国の国旗が掲げられた天幕は、本陣としてその戦場にあった。「ダイキ卿……残念ながら彼我の戦力差は明らかです。戦況は刻刻と悪化しております。ここは撤退を……」 ダイキと呼ばれた男は、自分の身を常に案じてくれる青年の切迫した声で我に返った。  人払いが済んださほど広くもない天幕の中には、ダイキと青年しかいなかった。  長身の青年はダイキと揃いの純白の軍服を身に纏っており、その翠玉のように輝く瞳は憂いを帯びていた。  とうに中年となってしまった自分が失って久しい、若さのきらめきを感じさせる青年に憂いは似合わないとダイキは思った。  まさに敵の手が首にかかろうとしている逼迫した戦場の気配を感じながら、ダイキは口を開いた。「フォレスター卿とインプレッサ卿は?」 「遺憾ながら……」 「そうか……あの奇跡の親子が、こんなところで……アルテッツァ卿。俺はやっぱりお飾りの総大将だったみたいだ……」 ダイキが吐露した弱気に、アルテッツァと呼ばれた青年の整った眉がぴくりと反応する。「ダイキ卿。卿は聖魔道士にして、我らトワゾンドール魔道士団の首席魔道士。卿が救わねばならぬ命がある内に、そのような弱音を吐くべきではありません……!」 アルテッツァの叱責を、大希は素直に受け取った。「いつでも温厚な卿を怒らせちまった……すまない。そうだな……俺には、まだやるべきことがある……」 ダイキが簡素な椅子から立ち上がった、その時だった。  本陣たる天幕の周りにはべていた側近の兵士たちが、ほぼ同時にどさりと倒れる音がダイキの耳に届いた。  不穏に反応したダイキの皮膚が粟立った瞬間、何者かが天幕に侵入した。  ダイキの目で捉えられる速さではなかった。  天幕の中に黒い影が侵入した、ダイキが認識できたのはそれだけだった。「見つけたぞ」 場違いに若い侵入者の声。  声の主は未だ少年の無邪気すら残香する若い男だった。  風属性魔法であるクッレレ・ウ
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第3話 変化の兆し
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第4話 治癒魔法
 病室には四人の傷病者がおり、各々簡素なベッドで横になっていた。 若い女性の看護師と初老の医師らしき男性の姿もあった。 マジェスタは一人の傷病者の前で立ち止まると、カイトに視線を向けてから口を開いた。「この者を治療していただきたく存じます」 身体を起こそうとする中年の男性傷病者を、マジェスタは無言で右手をかざすだけで制した。 疑問を口にし始めるとキリが無いと判断したカイトは、「どうやればいいんですか?」 と端的に方法だけを訊いた。 カイトの返答に満足したことを示すように、微かに頷いてからマジェスタは説明を始めた。「まず、患部に手をかざし、体内を巡る魔力に意識を集中していただきます。魔力を意識できましたら、次に傷を治すと念じてくださいませ。さすれば、かざした右手から脳に傷のイメージが伝わってくるはずでございます」 マジェスタの説明を把握したわけではないが、一応の理解だけはできたカイトは、「体内を巡る魔力、ですか……とりあえず、やってみましょう」 と応じて素直に試してみることにした。 カイトはマジェスタの説明通りに、傷病者の肩に巻かれた包帯の上に右手をかざした。 目を閉じたカイトは、かざした右手に意識を集中してみる。 今まで感じたことのない、体内を巡っている微弱な電流のようなものを意識で捉えたカイトは、これがマジェスタの言った魔力なんだろうと判断し、すかさず「傷を治す」と念じてみた。 カイトの右手から金色の粒子が発生し始め、ゆらゆらと空気中を漂い始める。 病室にいる濃紺の軍服を着た青年や若い女性の看護師が、カイトの右手から発生する金色の粒子を凝視して息を呑む。 目を閉じて集中し続けるカイトの脳裏に、包帯で覆われた肩の裂傷のイメージが鮮明に浮かんだ。(なんだ……? 画像がダイレクトに脳に伝わってくる……透視してるみたいだ……) 初めての感覚に戸惑いながらもカイトは、「傷のイメージが、浮かびました」 とありのままの状況を口にした。 脳内に浮かんだイメージが消えてしまわないようにと、目を閉じたまま意識の集中を続けるカイトに向けてマジェスタが説明を加える。「それでは次に、傷が治るイメージを浮かべながら「クラティオ」と詠唱してくださいませ。さすれば、治癒魔法が発動するはずでございます」 マジェスタの言葉に従って、カイトは裂傷が治
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第5話 異世界の祖父
 カイトは一度ゆっくりと深呼吸をしてから、マジェスタに対しての質問を切り出した。「女王陛下との謁見については、なんとなく流れとして理解できないこともないんですが、俺が「閣下」というのは何か理由があってのものですか?」 カイトの問いに対し、マジェスタは柔和な表情を浮かべつつ首肯した。「召喚に応じられたアナン家の御子息であられる閣下には、公爵位が叙爵されます。召喚に前以て用意を済ませておりますサイオン領とともに、サイオン公爵位を閣下には受けていただきます」「こうしゃく、ですか……?」(公爵か侯爵なのか……いや、今はそんな違いどうでもいい……とりあえず、異世界に来てすぐ生死に関わるような状況で始まるハードな展開じゃないのは確かみたいだ……) まずは現状を把握しないと動きようがないと判断したカイトは、マジェスタの言葉を聞き漏らさないように耳を傾けた。「公爵位を受けていただくのと同時に、治癒魔法を用いる魔道士であられる閣下には、ミズガルズ王国の筆頭魔道士団であるトワゾンドール魔道士団へ入団していただきます」「トワゾンドール……? 金羊毛ですか……?」 トワゾンドールという言葉に反応したカイトが、ぼそりと和訳を添えて答えると、マジェスタは満足そうに微笑んだ。「左様でございます。流石はアナン家の御子息、博識であられますな」 カイトは現状を把握するためにマジェスタの説明を脳内で整理するのに忙しかった。(爵位に魔道士、いよいよラノベの異世界ものって感じだな……っていうか、トワゾンドールが地球と同じで金羊毛ってことは、だ。この異世界は、神話なんかについては地球と共通してるってことなのか? そうなると宗教なんかも……?)「あの……俺は魔道士、なんですか?」 一つずつ疑問を解消していこうと決めたカイトの質問に対し、マジェスタはすぐさま返答した。「この世界テルスにおいて治癒魔法を行使できる魔道士は、テルスの神たるドラゴンより下賜された召喚術式によってこの世界に来られた方のみでございます。閣下の祖父君であられるレクサス公爵ケンゾー王配殿下と、御尊父であられるビスタ公ダイキ閣下。そして、サイオン公カイト閣下の御三方のみが治癒魔法を行使する魔道士であられます」 マジェスタの説明を理解したことで、カイトが抱えている疑問は余計に深まった。(治癒魔法が実在する世界なの
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第6話 因縁めいたもの
「……おじいさん?」 ぽつりとつぶやくように漏れたイツキの声に、ニカッと笑ってみせるたケンゾーは、「ああ、そうだよ。俺がきみの二親等、祖父ってわけだ。まあ、病室で立ち話もなんだ。場所を変えようか」 と異世界での初対面という特異な事態を感じさせない口調で答えた。 ケンゾーのフランクな応対に戸惑いながらもカイトはうなずいた。「……は、はい。そうですね」 カイトの返事に対して微笑で応じたケンゾーは、「こっちだ。すぐそこに俺の書斎がある」 と声をかけて廊下をスタスタと歩き始めた。 カイトとマジェスタは病室を出てケンゾーの後に続いた。 ケンゾーの足取りは軽快さすら感じるほど確かなものだった。カイトはその背中を見ながら記憶をたどった。(四十四年前に東京タワーで失踪したとき、確かおじいさんは三十一歳だったはず……ってことは、七十五歳!? めちゃくちゃ若くないか……?) 明るい廊下を二十メートルほど進んだ三人は、ケンゾーが王宮病院内に設けている書斎に入った。 書斎の壁は本棚で覆われており、本棚のキャパシティのギリギリを攻めるように書物がぎっしりと並んでいた。 ずらりと並ぶ彩り鮮やかな背表紙に目をやったカイトは、製本の技術から見て自分が思い描く異世界のイメージである中世よりも、かなり進んだ時代なのかもしれないと思った。 中庭に面した窓からは、昼を迎える前の清しい午前の日差しが射し込んでいる。 書斎の中央には簡素な椅子が四脚置いてあり、その内の一脚に腰掛けたケンゾーが、「さてさて、ここなら遠慮はいらない。まあ座って」 とカイトに向かって声をかけた。 書斎の主である祖父の言葉に従い、椅子に腰掛けるカイトの様子を見て微苦笑を浮かべたケンゾーは、「緊張してるみたいだね。まあこの世界へ来た途端に、会ったこともないじいさんと対面だもんなあ。当然っちゃ当然か。カイト、だったね」 とカイトの緊張に理解を示しながら名前を呼んだ。「はい。快適の快に人間の人と書いて、快人です」 カイトの答えにケンゾーはうんうんと小さくうなずいてみせた。「そうか、いい名前だ。マジェスタ殿は信頼できる御仁だから、この場で俺に対して緊張する必要はないよ。王配だのなんだのってな立場も気にしなくていい。カイト、きみにとってのじいさんとして接してくれて構わない」「……わかりました」
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第7話 意志の介在
 戸惑いの色を含みながらも考察する者の顔をみせるカイトに対して、ケンゾーは前提となった出来事から説明を始めた。「この世界、テルスの神として実存するドラゴンは四柱いてね。そのうちの一柱であるナーガと呼ばれるドラゴンが、このミズガルズ王国の今の女王であるセルリアンに、異世界から人間を召喚する術式を下賜した。四十五年前のことだ。そのセルリアンが術式の構築を済ませてから、約半年後だったらしい。俺が召喚されたのはね」 この異世界の神はドラゴンだと聞いたカイトは、召喚された際に一瞬だけ見えた気がするドラゴンのような巨大な影を思い出した。「……東京タワーじゃなきゃいけない理由があった、とおじいさんは考えたわけですか?」 カイトの問いにケンゾーは小さく首を横に振ってみせた。「何の根拠もない、ただの直感でしかないよ。ただし、だ……ダイキもきみも、父親が失踪した現場って理由で東京タワーへ行った際に、召喚術式によってテルスに来ている。三人が肉親であることは偶然なわけもないのと同様に、三人とも同じ場所というのも何らかの意志がそこに介在したと考えるほうが自然だろ?」 同意を求める区切り方をしたケンゾーに、カイトは素直に首肯してみせた。「その何らかの意志、で召喚……三人の異世界転移を操ったんだろうドラゴン。そのナーガっていうドラゴン、神様とは意思の疎通はできるんですか?」 カイトの問いに肯定する表情を浮かべならがも、ケンゾーは小さく首を横に振った。「いや、ドラゴンは基本的にその姿を現さないんだ。人間との接触は有史以来数えるほどしか記録されていない。当時王女だったセルリアンとの接触は稀有な出来事なんだ」 異世界の神として存在するドラゴンについて、今は考えても進展がなさそうだと判断したカイトは、「父さん今、セナートっていう帝国にいるんだと聞いたんですが……」 と会話を次へ進めるように、不在だという父親についての質問を口にした。 当然の疑問だと示すようにゆったりとうなずいてからケンゾーが答える。「そう。大陸を牛耳る超大国、セナート帝国にいる。二年前だ。ミズガルズとセナートの国境にあたる離島で、戦争と呼ぶにはあまりに短い四日間の衝突があってね。ダイキはそのとき敵国だったセナート帝国に投降した。筆頭魔道士団の首席魔道士であり、総大将だったダイキが投降したことで戦争はあっさり
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第8話 異世界の異母妹
 地球とテルスの違い。 その最たるものである魔法の有無が及ぼした影響の中でも、歴史を動かす戦争の形態を左右してしまう兵器の相違は大きい。このテルスという異世界を理解する上でキーになる。 そう直感したカイトは疑問点をありのまま口にした。「兵器が未発達。そこだけ聞いちゃえば、この世界はとんでもなく平和なのかも? と思えちゃいます。けど、つい二年前にも戦争があったっていうことは……戦争が兵器じゃなく魔法。兵士じゃなくて魔道士が、戦争での兵力を担っているってことですか?」 カイトの推測を肯定するようにケンゾーはゆっくりと首肯した。「ああ、その通り。魔法が使える魔道士と、どんなに鍛えようが魔道士ではない一般の兵士。その両者には力の差がありすぎる。兵力に差がありすぎれば、国家の輪郭を担う国防も機能しない。国家が機能していない混沌は大国も望まない。その結果、このテルスでの戦争は、戦場において国家の全権代理人である筆頭魔道士団に属する魔道士による勝負で決着が付けられるってのが基本になってる。その点だけで言えば、きみが言ってた中世に近いのかもしれないね」 ケンゾーが説明したテルスという異世界の大まかな仕組みについては理解できたカイトだったが、全権代理人という聞き慣れない言葉だけが妙に浮いて聞こえた。「全権代理人、ですか……それじゃあもう軍人というより、戦国時代の武将……いや、もっと前の三国志の将軍か、いっそ考えられるだけ古い古代文明の英雄……みたいな存在に聞こえますけど、俺には」 カイトの挙げた例えを聞いたケンゾーは、一理を認める微苦笑を浮かべながら首肯してみせた。「きみの感覚はズレてないよ。三国志の将軍なんかは例えとして的を射てると俺も思う。とにかく魔道士の数が少ない点も含めてね。およそ九十万人に一人と言われてる魔道士は、ドラゴンから魔力を賜ったとされる神祖と呼ばれる魔導師の末裔ってことになってる。それが真実かどうかは別として……テルスでの定義は、長い年月で血が薄まりながらも遺伝によって魔力が伝わってるってことになってる。ただ、魔道士の子供が常に魔道士って訳でもなくてね。逆に魔道士が何代もいなかった家系に突然、魔道士が産まれるケースもある」 多くのファンタジー作品に触れてきた免疫のおかげで、ケンゾーがつらつらと述べるファンタジー要素てんこ盛りの見解をすんなりと
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第9話 謁見
 出しゃばらずに自分への注目を集める術を十四歳にしてすでに身に付けているマヤが中心となり、歓談が程よく温まった頃合いで書斎のドアを控え目に三回ノックする音がした。 ケンゾーの「どうぞ」という声に合わせ静かにドアが開く。ドアを開けたのは先ほどマジェスタの目配せに応じて病室を出て行った濃紺の軍服を着た青年だった。 青年が深々と頭を下げてから報告する。「謁見の支度が整った由にて、報告させていただきます」 マジェスタが「承知した」と短く答えると、青年は再び深々と頭を下げてから退室した。 軽く一呼吸置いたマジェスタがカイトへ視線を向ける。「それではカイト閣下、これより女王陛下に謁見いただきたく存じます」 マジェスタの発した「謁見」という言葉の響きに、カイトは不安と緊張を隠せなかった。「はい。分かりました……でも、俺は正式なマナーとか知らないし、相応しい所作? みたいなものも身に着けてませんが……大丈夫でしょうか?」 素直に不安を口にしたカイトを見て、ケンゾーが微笑みかけた。「それは心配いらない。形式に則った正式な謁見ってわけじゃないし、女王のセルリアンは根が気さくな女性だから。俺も同席するし、気楽に会えばいい」 ケンゾーが同席すると聞いて不安がやわらいだカイトは、「はい。じゃあ、そうします」 とうなずいて返した。「よし。じゃあ、行こうか」 気楽な口調で言ったケンゾーが立ち上がると、それにつられるようにカイトとマジェスタも立ち上がった。 一人だけ椅子に腰掛けたままとなったマヤが、「わたくしは、ここでお留守番してますわね。いってらっしゃいませ、お兄様」 と可憐な笑みを添えてカイトを送り出した。 ケンゾーが先頭となり連れ立って王宮病院を出た三人は王宮に戻ると、シンメトリーな造りである王宮の中心線に当たる長い一直線の廊下を奥に進んだ。 その突き当たりに謁見の間があった。 金糸の刺繍が際立つ緋色の軍服を着た、ともに長身で金髪碧眼という双子のように容姿の似た二人の青年が、謁見の間の重厚な扉を挟むように立っている。 直立不動の二人はケンゾーたちが近づくと、見事にシンクロした動作で純白の扉を開けて三人を迎えた。 その場で跪き、最敬礼をもって迎える二人の美しい青年に対して、どう応じるのが正解なのか分からないカイトは軽く頭を下げてから謁見の間に入っ
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第10話 順応の形
「すみません。失礼だとは思うんですが、聞かせてください。「すがった」というのは、何に?」 カイトが申し訳なさそうに訊くと、セルリアンはゆったりとうなずいてから答えた。「わたくしは独りぼっちだったのです。当時、二十五歳だったわたくしと二つ下の妹シアンは、国王であった父と、その妃であった母を同時に失いました。すでに結婚し子もいたシアンの夫の勢力と、未だ独り身だったわたくしを擁立しようとする勢力は一触即発の状態となりました。親を亡くした悲しみと王室での拠り所を失った心細さに押し潰されそうだったとき、ナーガがその姿をわたくしの前に顕しました。ナーガは異なる世界から人間を召喚する術式をわたくしに授けました。「その術式によって召喚した人間には状況を変え得る特別な力を与える」と言い残して、ナーガは去って行きました……」 セルリアンの語尾が弱くなるのを聞いたカイトは、国王の長女として権力争いの渦中で孤独だったセルリアンの気持ちを察して会話を先へ進めることにした。「ナーガというドラゴン……この世界での神様が、与えると言った特別な力が治癒魔法だったんですね」 カイトの配慮に謝意を示すようにうなずいたセルリアンは当時の説明を続けた。「そうです。まさに特別な力でした。そして、ケンゾーはわたくしを大きな愛で包んでくれました。聖魔道士という世界で唯一の称号を得たケンゾーは、わたくしと結婚して王配という立場に立つことで、わたくしを護ってくれました」 賢三という自分の祖父は「異世界ファンタジーの主人公ケンゾー」として役目を果たしたんだと納得したカイトだったが、もう一つ確認しなければならないことがあった。「ありがとうございます。おじいさんとの経緯は分かりました。ただ、もう一つだけ……十五年前、父さんを召喚した理由は何ですか?」 平静な口調になっているように気を付けながらカイトは疑問を口にした。 カイトの問いに答えようとするセルリアンが少しの間を置いたタイミングで、二人の会話へ割って入るようにケンゾーが口を開いた。「それは、俺から説明しよう。ダイキを召喚した理由は、俺の年齢と世界情勢だ。俺が六十歳を目前にしたとき、このミズガルズ王国を取り巻く情勢は緊迫していた。そこで現役の聖魔道士が必要だと、俺は判断した。まさか実の息子が召喚されるとは思ってもみなかったけどね」 おおよそ予想
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