言葉の奥にある丁寧さを伝えたいとき、僕は「
幸甚」をまず思い浮かべます。響きが古風で改まった場面に合うぶん、使いどころを押さえるとぐっと印象が良くなります。ここでは状況別に自然な例文をいくつか挙げつつ、使い方のコツもそっと書いておきます。
ビジネスの依頼での定番表現は、相手に何かをお願いするときに使うパターンです。例としては「添付の資料についてご確認いただけますと幸甚に存じます。」や「ご多忙のところ
恐縮ですが、来週のご面談のご都合をお知らせいただければ幸甚です。」といった具合。もっと丁寧にしたいときは「幸甚に存じます」を用い、やや簡潔にしたいときは「幸甚です」を使うと場の空気に合わせやすいです。
公的な文書や申請文では、願いを丁寧に表現するためにこう使います。「本件につきましてご検討のほどお願い申し上げます。ご承認いただけますと幸甚に存じます。」や、助成金や採択を願う場面なら「ご審査のうえご採択賜りますれば幸甚に存じます。」と書くと格調高く伝わります。また、式典や会合の案内文では「ご出席くださいますと幸甚に存じます。」と招くニュアンスに使えます。
謝意やお礼とともに用いるのも自然で、「先日は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げ、ご助言をいただければ幸甚に存じます。」のように、相手の配慮や支援を仮定して表現すると丁寧さが増します。ただし日常会話や親しい相手には堅苦しく感じられるので、「助かります」「ありがたいです」を選んだほうが親しみやすい点には注意してください。
総じて「幸甚」は相手への敬意を保ちながら願いや感謝を柔らかく伝える言葉です。文末に置くのが自然で、相手との関係や場面に応じて「幸甚です」「幸甚に存じます」などのレベルを選べば、改まった場面での表現力がぐっと向上します。