敬語のニュアンスって、本当に細かくて面白いよね。『
幸甚』について聞かれたら、まずは率直に言って失礼にはあまりなりませんが、使いどころを間違えると違和感を与えやすい言葉だと答えます。語義としては「この上なくありがたい」という意味で、主に書き言葉の敬語表現として用いられます。ビジネス文書や改まったメールの締めくくりに置くと、丁寧さを強調する効果がありますが、同時にやや古めかしく、かしこまりすぎる印象を与えることがあるのも事実です。
個人的な経験から言うと、上司や目上の方に対して使うときは文脈をよく考えます。たとえば初回の正式な依頼や外部の取引先向けの書面では「ご教示いただければ幸甚に存じます」といった形は無難で、相手に対する礼儀を示すのに適しています。一方で、日常的なやり取りや気心知れた社内の上司に対して同じ表現を使うと、堅苦しすぎて距離感が生まれることがあるため避けたほうがいいでしょう。私も過去にメールで『幸甚』を使ったところ、相手が短めの返信を返してきて関係がぎこちなくなった経験があります。そういう意味で、失礼になるかは相手や状況次第で、万能な表現ではないと感じています。
実践的なアドバイスとしては、相手との関係性とコミュニケーションの形式を基準に選ぶのが一番です。書面や初対面のフォーマルな場面、公式な依頼では『幸甚』を使って問題ありません。口語やカジュアルなメールでは『幸いです』『助かります』『お願いできれば幸いです』といった、少し柔らかい表現に変えると読み手に優しい印象になります。また、もっと丁寧にしたいときは『ご高配を賜りますようお願い申し上げます』『ご教示賜れますと幸甚に存じます』のような謙譲表現を加えると堅さを保ちながら丁寧さを強められます。結局のところ、私が重視しているのは「相手にとって読みやすく、かつ場にふさわしいトーン」を選ぶことです。適切に使えば『幸甚』は品のある表現になるし、場をわきまえないとやや不自然に響く、という感覚を持っておくと失敗が減ります。