幾千の波を越えて、私の人生はまだ遅くない親友の吉田真央(よしだ まお)が出産を終え、私、藤原咲希(ふじわら さき)は赤ちゃんを抱いてあやしていた。
「いい子ね。私は第二のママ、この人は第二のパパよ」
傍らに立っていた瀧川侑斗(たきがわ ゆうと)が、ふいに口を開いた。
「第二のパパじゃない。実の父親だ」
聞き間違いかと思った。
まさかと思ったが、彼は気だるげに口元をわずかにゆがめ、もう一度言った。
「その子は俺の子だ。
お前の親父さんが死んだあの日、俺は真央と一晩中やった。コンドームも一箱まるごと使った」
私はその場で凍りついた。喉の奥が詰まったようで、どうしても声が出なかった。
どれほど経ってからか、ようやく一言を絞り出した。
「でも……私たち、昨日やっと入籍したばかりでしょう」
侑斗は笑って私を抱き寄せ、優しくあやすように言った。
「安心しろよ。俺とあいつは、せいぜいセフレみたいなもんだ。結婚する気があるなら、とっくにしてる」
そう言って、彼は少し間を置いた。
意地の悪い調子で続けた。
「真央、まだお前に隠してたのか?俺たち、付き合ってたんだ。俺はあいつの初めての男だった」