念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-

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last updateآخر تحديث : 2026-02-07
بواسطة:  雪白ましろمستمر
لغة: Japanese
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念動魔術_それは魔力の糸を使った日常生活で使われる雑用魔術。 素性を隠す為に念動魔術は使えないが、今使わなければ宿屋の娘と交わした 「良いところを見せる」という約束を果たせない。 主人公は素性を知られたとしても念動魔術を戦闘に応用することで約束を護る。 大会前に度々因縁があった金髪の彼女と対戦するが、暗殺者の一団が乱入する。 狙われていたのは金髪の彼女だった。 「私は中央王族機構。第三王女、マリー・トレスティア」 試合会場に集まっていた全員を人質に取ったゲームを宣言する暗殺者ギルドの長。 『主人公が使えるのは念動魔術と初級魔法のみ』 絶望的な戦力差を覆す鍵は、一瞬の機転と魔術の応用を可能にする念動魔術だった。

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الفصل الأول

1話 鳥カゴからの脱却

彼の朝は早い。

日が昇ると共に起き、朝食の準備を始める。といっても用意するものは前日から仕込んでおいたところに取りに行くだけだ。

寝床から用意した場所まで行くまでの間は、

彼の周囲は多少湿った草花と土の香りが僅かに漂い、仄かに朝露を連想させる霧が薄く立ち込めていた。

霧を掻き分けて少し、川のせせらぎが聞こえてくる。

ここで大きな欠伸を一つ。日々の習慣とはいえ、眠いものは眠い。

用意していた仕掛けに到着。仕掛けと言っても罠や餌でもなく、ただ単純に川の水を一部頂いているに過ぎない即席のダムと言っていいだろう。

到底一人では成し得ない、ましてや一夜で用意するなど真っ当な手段では難しい規模の即席ため池がそこにはあった。

「今日は見やすくていいね」

池の中の水は透き通り、自然の恵みが惜しみなく流れ込んでいる。

狙い通り魚が四、五匹池に迷い込み、池の外周を泳ぐ。

スッと右手を魚に方に向け、指先に意識を向けると、体を包んでいる自然魔力が指先に僅かに集まり、集中しなければ見えないほど細長い糸が魚目掛けて伸びてゆく。

その糸と形容するものが空中を真っ直ぐ伸びてゆき、水中に入ってからも真っ直ぐ魚に向かって伸びる。

着水しても水飛沫は立たず、泳いでいる魚はその糸に気づかない。

泳ぐ魚を追跡するように伸びた魔力糸が魚に命中すると同時に、彼が纏っていた自然魔力と同様のオーラが魚を包む。

「よっと」

掛け声と同時に空中に引っ張られるように魚が自ら飛び出てくる。その数は池にいた魚全て。

朝食用に二匹見繕い、まだ成長していない魚はそのまま川にリリース。魔力糸と接続が切られた魚が再び元気に川を泳いでいく。

魚と接続している魔力糸が出ている手とは反対に、左手からも魔力糸を出してゆく。

その数実に二十本。川の流れの一部を拝借して作った池を無くす作業だ。

魔力糸が石へと伸びてゆく。石に接続した魔力糸は、石から石へと更に広がり、一度に接続した石は大小様々で百個は下らないだろう。

数秒も経たないうちに石が池に入ってゆき、瞬く間に池だった場所が河原へと還る。

一つだけ接続を残された石が、それよりも大きい岩に向かって急加速を始め、勢いよく衝突する。

ガキィン

と大きな衝突音と共に石が割れ、鋭利な破断面が顕になった。

簡単な石包丁が出来たら、後は魚の腸抜きを空中で行ってゆく。

石包丁の操作を誤ると中の腸が傷つき、せっかくの朝食が不味くなるが、慣れた魔力操作でスピーディーに腸抜きが二匹分完了する。

後は火おこしだが、彼には必要がなかった。

魔力糸と同様に手を前にかざすと火の球が音無く現れる。火球にも魔力糸が接続されており、正確な円を描く薄い魔力の膜で包み込まれていた。

元来魔法や魔術は発動から操作の工程を挟む。

発動してから操作が終わるまでの間は維持の為に魔力が消費される。

それが低級だろうが、上級だろうが、或いはそれ以上の魔術行使に至るまで、魔法維持の難易度や効率の違いはあるが変わらない普遍的な事実だ。

彼の使っている火球を発動した魔法は今この瞬間に発動工程は既に終了しており、消滅までの秒読みに入っているはずだ。

しかし、魚が焼けるまでの間、この火球の炎は揺らめきもせず、真円に近い形状のまま固定されていた。

からくりとしてはこうだ。

火球に伸びた魔力糸から纏わせた薄い膜が火球の輪郭を正確に捉え、一つの形と仮定し空中で静止させる。

言葉にするのは簡単、だが火球はおおよそ丸の形であれ、完璧な真円ではない。

コンマで変化し続ける火球の形を切り取るが如く、正に離れ業が必要と言えるだろう。

だが彼の顔は汗が出るわけでも無く、神経を使った作業特有の緊張感すら感じさせることはない。

「頂きます」

こんがりと焼けた魚を口元に持っていき、パリっと音を立てながら大きな口で豪快に頬張る。

ジュワッと魚肉から溢れる油は甘く、この自然豊かな大地の恵みを凝縮した旨味と言っていいだろう。

朝食を済ませた後は、荷物に魔力糸を伸ばし出発の準備を整える。魚と同様に荷物へ魔力が伝わり、全て空中に漂う。

目指す先は近頃トーナメント戦が行われると噂される闘技場だ。

何やら腕に覚えのある面々が集まる大会らしいが、中央で開催されない限りはそう強者という強者は現れない。

参加希望者は只の荒くれ者やお調子者、果ては傭兵崩れの盗賊辺りが参加するような寂れた大会なのだ。

豊かな自然から一変、歩みを進めていくと荒廃した大地が広がる。目指す街まではもう少し。

ここで魔力糸から伸ばしていた荷物を背負い、表面上は大きな荷物を持っているように繕う。

見た目は旅のパーティによくいる荷物持ちといったところだ。

街の入り口にいる衛兵に通行料で銅貨を五枚支払い、手頃な宿を探す。

毎日野宿生活だったからか、久しぶりの宿屋に少し気分が高揚するのを抑えながらも、宿屋が集まっている街路を目指して歩を進める。

途中近道もあったが、寂れた街特有の雰囲気が漂っていたために、遠回りにはなるが大通りで目的の場所を目指す。

そんな歩いている最中に、正面から小走りで向かってくる少女が一人。

「そこのお兄さん。ここら辺では見ない顔だけど、大会参加者さんですか?」

少し芝居がかった声色で元気に話しかけてきた少女は、華美な服装とは似ても似つかない、

しかし要所でおしゃれにも気を配れるだけの暮らしをしていることが伺える格好をしていた。

「あぁ、そうだよ」

彼が言葉を返すと、パァッと少女の表情が更に明るくなる。

「でしたら宿をお探しのはず!この街で一、二を争う宿のおもてなしを受けてはみませんか?」

「じゃあ、お願いしようかな」

普段なら警戒していた勧誘にも、裏表がない表情をされると毒気が抜かれてしまう。

宿屋街を歩いていると、特徴的な看板が吊り下げられていた宿の前で少女は歩みを止めた。

看板には「小鹿と蜂蜜亭」と書かれており、寂れた街の景観にはどこか似合わない、

それでいて少しの安心感を覚えるような装飾の扉に、砂埃がよく舞う街であるにも関わらず、

できるだけ清掃の行き届いた窓ガラス。

ここの店主がお客をどう見ているのかが一目でわかる気配りの良さが伺える佇まいだ。

(これは当たりかもしれない。この子が言っていたことはあながち嘘ではないのかも)

「お待たせしました!これがうちのお店、小鹿と蜂蜜亭になります!ゆっくりとお寛ぎくださいな」

スカートの裾をたくし上げ、上品に挨拶をする。この頃流行している劇団というやつだろうか?

初めて会った時もどこか芝居がかっていたが、行商と一緒に来た旅の一団なのだろう。

店主にあの勧誘方法はやめさせたほうがいいと後でそれとなく伝えておこう。

店のドアを開けると、ベルの音が聞こえ中の店主に来客を告げる。

中から少し太り気味の女店主がやってきた。

「いらっしゃい。旅のお人よ、泊っていくかい?」

「ああ、闘技大会までの間、よろしく頼む」

「あんたも腕試しってわけかい、こんな街までよく来たね、ゆっくりしていっておくれよ。

大会までは、確かあと三日だったね。一日銀貨一枚だけど、まとめて払っていくかい?」

「そうだな、それで頼む」

この辺の宿の中では、かなり、いや、それもサービス次第の金額か。中央なら中から下の宿代といっていいくらいだ。

カウンターに銀貨をまとめて三枚置くと、店主が少し驚いた表情を見せる。するとすぐに柔らかな表情に変わり、少し笑った。

「あんた気前がいいね!本当の代金は一日銅貨十五枚だよ。

他の客なんかこの冗談を言ったら値切りに来るか帰るかのどちらかさ」

「なら、こいつの分のもてなしを頼むよ、期待している」

返そうとしてきた銀貨を手で制止すると、店主は考えた表情をして

「任せときな!」

と大きな声で笑いながら承諾したのだった。

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1話 鳥カゴからの脱却
彼の朝は早い。日が昇ると共に起き、朝食の準備を始める。といっても用意するものは前日から仕込んでおいたところに取りに行くだけだ。寝床から用意した場所まで行くまでの間は、彼の周囲は多少湿った草花と土の香りが僅かに漂い、仄かに朝露を連想させる霧が薄く立ち込めていた。霧を掻き分けて少し、川のせせらぎが聞こえてくる。ここで大きな欠伸を一つ。日々の習慣とはいえ、眠いものは眠い。用意していた仕掛けに到着。仕掛けと言っても罠や餌でもなく、ただ単純に川の水を一部頂いているに過ぎない即席のダムと言っていいだろう。到底一人では成し得ない、ましてや一夜で用意するなど真っ当な手段では難しい規模の即席ため池がそこにはあった。「今日は見やすくていいね」池の中の水は透き通り、自然の恵みが惜しみなく流れ込んでいる。狙い通り魚が四、五匹池に迷い込み、池の外周を泳ぐ。スッと右手を魚に方に向け、指先に意識を向けると、体を包んでいる自然魔力が指先に僅かに集まり、集中しなければ見えないほど細長い糸が魚目掛けて伸びてゆく。その糸と形容するものが空中を真っ直ぐ伸びてゆき、水中に入ってからも真っ直ぐ魚に向かって伸びる。着水しても水飛沫は立たず、泳いでいる魚はその糸に気づかない。泳ぐ魚を追跡するように伸びた魔力糸が魚に命中すると同時に、彼が纏っていた自然魔力と同様のオーラが魚を包む。「よっと」掛け声と同時に空中に引っ張られるように魚が自ら飛び出てくる。その数は池にいた魚全て。朝食用に二匹見繕い、まだ成長していない魚はそのまま川にリリース。魔力糸と接続が切られた魚が再び元気に川を泳いでいく。魚と接続している魔力糸が出ている手とは反対に、左手からも魔力糸を出してゆく。その数実に二十本。川の流れの一部を拝借して作った池を無くす作業だ。魔力糸が石へと伸びてゆく。石に接続した魔力糸は、石から石へと更に広がり、一度に接続した石は大小様々で百個は下らないだろう。数秒も経たないうちに石が池に入ってゆき、瞬く間に池だった場所が河原へと還る。一つだけ接続を残された石が、それよりも大きい岩に向かって急加速を始め、勢いよく衝突する。ガキィンと大きな衝突音と共に石が割れ、鋭利な破断面が顕になった。簡単な石包丁が出来たら、後は魚の腸抜きを空中で行ってゆく。石包丁の操作を誤ると中の腸が傷つき、
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2話 闘技大会エントリー
「うちはこの辺じゃ珍しい風呂付きさ」なんと、この街の宿で風呂など全く期待していなかったのだが、これは何ともありがたい。「手伝うよ」「遠慮するよ、そんな大荷物、ここまで大変だったろう?部屋で風呂と飯が用意できるまでゆっくりしてな」「お部屋はこっちだよ」「そこはこちらになります、だよ!まったくもう」呆れた声色で苦笑いした女店主。「悪いね、旅のお人よ。まだ子供だから多めにみておくれ」「気にしてないよ」「もう!二人とも子供扱いして!ふんだ」怒りながらも案内のために店主の娘が二階に向かって階段を上がると、木でできた階段が少し軋む音がする。築年数を感じさせるような雰囲気で、彼の持っている荷物を背負ったままでは、間違いなく床が抜けるだろう。だが、床は抜けず足取り軽く店主の娘についてゆく。床が軋む音もさほど気にならない大きさだ。その様子を見ていた女店主が思わず溢す。「鍛えているんだねぇ」実際のところ鍛えていることは間違いないのだが、本当のところは単純に鍛えているだけではない。部屋に到着し、なるべく床に重さが分散されるように荷ほどきを済ませる。(先に風呂か、はたまた飯か)と考えながら、出されたコップに入った水に魔力糸を接続させ、空中で形を変化させる遊びで時間を潰す。変化のパターンが五十を超えた辺りで一階から風呂の準備ができたと声がかかる。空中に漂っていた水を口に飛び込ませて飲み込んでから下の階へと向かう。脱衣所のようなところではご丁寧に洗濯物を入れる籠まで置いてあった。さっと籠に服を丸めて突っ込み、久しぶりに落ち着いた状態で風呂に入れる。野宿中も川の水を固定させ形状を維持するなどの工程がとにかく多い。維持にも少なからず神経を使うことから、全く魔力操作を必要としない風呂はとにかく貴重なのだ。「はぁ~」と思わず声が出る。すると籠を回収しに来た店主の娘が「おじさんみたいな声出してる」と笑いながら声の主が遠ざかるのをしり目に(失礼な)と心の中で抗議するのであった。風呂を済ませ、用意された部屋着に着替える。簡素な作りだが、意外にも着心地がよかった。「さっぱりしたかい?」「おかげさまで、いい湯だったよ」「それはよかった。さあ、飯の用意もできたよ!腹いっぱいになるまで食べな!」満足したような顔つきで女店主が笑う。
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3話 大会前日 魔物出現騒ぎ
衛兵の隊長と思わしき男性が、集まった皆に号令をかける。「これから魔物調査に向かう!対象の魔物は数も種類も不明だが、岩山を消し飛ばしたという報告が入っていることから二段階目までの強さは覚悟しておくように!またここからそう遠くない場所になる。最初から気を引き締めるように!」街の大門がゼンマイ仕掛けでガチャガチャと音を立てながら開いてゆく。いざ行進を開始するというタイミングで背後から声がかけられた。「貴方も調査に参加するのね」「明日に差し支えると困るからね。そういう君は?」「大体は貴方と同じ。店主さんにも頼まれたし」二人の会話を遮るように号令がかかる。「調査開始!」気合をつけた隊長が先陣を切って進んでゆく。彼の位置は隊の後方、彼女はやや前方に配置されている。目的の場所にはすぐに到着した。岩山が消し飛ばされたとされる場所は、確かに魔力濃度が異常に高い。元来魔物がポップする仕組みは、周囲の魔力が形を成したもので、強さは六段階で分類される。出発前に隊長が説明していた二段階目までの魔物なら、集まった人数だけでも対処が可能だろう。彼が出るとしたらそれよりも上の段階の、不測の事態が発生した時だけだ。彼は様子だけ見には来たが、動くつもりは全くなかった。(一・二段階目ならあの金髪の彼女だけでも十分に倒せるはず)しかし、彼の期待は大きく外れることになる。出現したのは四段階目のユニコーン。パワーはそこまでないが、高い知能と俊敏性、魔法も使用してくるという報告書もある。大型パーティになればなるほど、ユニコーンのサイズの小ささを考えると苦戦が強いられる。力量的には五段階目と互角に渡り合える手練れが数人で討伐する魔物なのだ。主な生息地は、魔力溢れる人間が近づかない緑豊かな “深域”や、ダンジョン奥地のトラップに引っかかったときに出現するような魔物のはずだ。こんな魔力濃度が本来薄いはずの岩山地帯にポップするはずはない。岩陰に隠れてユニコーンの様子を伺う。暴れまわるタイプではないが、こちらが刺激を与えればその限りではない。衛兵の副官と思わしき人物が、隊長に耳打ちする。「相手はユニコーンです。我々だけでは対処ができません」「うむ、それはわかっているが、ここで撤退して住人や行商人に被害が出てからでは遅い」考え込む隊長だが、具体的な作戦
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4話 魔術の基礎
大会当日大会のルールは魔法、魔術あり、真剣あり。寸止めは必要なく戦闘続行不可能と審判が判断すれば試合終了。実質初撃で致命的な一撃を負わせることができれば殺しもありの、ほぼルール無用の地下闘技場にありがちな過激な大会規定だったはずだ。だが、急遽真剣は木剣となり、魔法、魔術も呪い系や再起不能になるレベルの攻撃魔法、魔術は禁止の実質学生の大会でもやるのかというレベルのルールでの開催となった。ここで魔法と魔術の違いについて簡単に説明しよう。魔法とは、単純な命令や魔力変換の末に行使が可能なもので、魔術とは、例えば魔法を複数組み込み複雑な術式を構築することを指すが、この魔法と魔術との定義は実は曖昧で、一般的には高い効果をもたらす術を魔術と呼ぶことが多い。観客からはこのルール変更について大きくブーイングがあったが、ルールの再変更はないようだ。第一試合から順調に試合は進んでいき、彼の出番がやってきた。審判が試合の開始合図を行う。「Bブロック第四試合、TKO有の予選をこれから始めます!」彼の対戦相手はこの街の数少ない貴族の長男のようだ。さすがは貴族、立ち振る舞いは剣術をしっかりと修められている師匠がいるのだろうが、気になることが一つ。貴族の息子から感じ取れる自然魔力の「色」厳密には魔力に色はないのだが、長く戦闘経験のある魔術師は相手の漏れ出る魔力を色彩化しどんな戦闘タイプを好むだとか、もっと言ってしまえば今何を考えているのか読み取ることができる者もいる。彼は相手の思考まで読み取ることはまだできないが、貴族の息子はわかりやすかった。(こいつ、どんな手段を使っても俺に勝つ、いや殺す気だな)「試合、開始!」最初に動いたのは貴族の息子だった。開始と同時に彼に向って貴族が鋭く突進する。先日戦ったユニコーンよりも突進速度は遅い。余裕で躱そうとするが、振り上げられた剣は囮で体術による初撃を入れてくる。右膝から彼の腹めがけて繰り出される蹴りを、右手で持った剣の柄で合わせて防ぐ。初撃を防がれた貴族は「チッ」と小さく舌打ちをし、追撃として剣で彼の目を正確に狙ってくる。バックステップで横に薙ぎ払われた貴族の剣から最小限の動きで躱し、一旦距離を取る。初撃と二撃目を完璧に防がれた貴族は少し苛立った様子で彼を煽り立てる。「ユニコーンを
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5話 Bグループ決勝戦
第一試合から順調に試合は進んでいき、彼は順調に駒を進め、決勝まで来たのだが相手は先日のユニコーン騒ぎでひと悶着あった白髪の剣士だ。「これよりBグループの決勝戦を開始します!えー、一番と八番の決勝戦ですが、なんとお互いに真剣を使っての試合を望んでいるようです!」決勝戦ともあればある程度のわがままは通るはず。どうやらお互いに考えていることは同じようだった。「ただいま入った情報ですが、事前にお互いが大会運営に直談判し、運営はこれを許可したそうです!さぁ盛り上がってまいりました!」観客から歓声が上がる。「では改めまして、Bグループ決勝戦!始めてください!」お互いに目線を合わせ、自前の愛刀をまずは一本抜いて見せる白髪の剣士。彼は最初から魔力糸で年季を感じる鉄の剣に接続し、剣を浮遊させている状態で待機させる。「嬉しいね。こんな老いぼれに初めから”それ”で戦ってくれるのかい」「そういうあんたは初めから二本抜かないんだな」「おうさ、こんな楽しい戦いに初めから全力で戦ったらもったいねぇのよ」「そうかよ」「ではまずこちらから行くとするかね」瞬間、白髪の剣士の姿が消える。細身の剣士の膂力とは思えないほどの速度で、彼の背後に回り込む。それを目の端でしっかりと追えていた彼は上体を反らし突き技を躱す。「やるね」白髪の剣士が彼の背後から攻撃を繰り出したと同時に、彼の魔力糸で接続された剣が更に白髪の剣士の背後から音もなく切りかかる。死角からの一撃を突きの動きから連動する形で、左手に剣を持ち替えノールックで迎撃する。木剣同士では決して出ることのない真剣同士の衝撃音が響き渡る。ガキィインと大きな音が闘技場内に響くと同時に、会場がどよめくと同時に沸き立つ。空中の剣と鍔迫り合いをする形だが、注意は彼に向けられたまま。剣同士でぶつかっていては彼の攻撃を防ぐことはできない。この大きな隙を逃すはずがない。素早く体制を立て直し、上段から繰り出される一撃は白髪の剣士を捉える。ことはなかった。右手で腰に差した二本目の剣を素早く抜くと、彼の放った両手からの一撃を受け流すように刀身を滑らせて防御する。一連の動きがお互いに不発になり、一旦距離を取りあう。「いやぁ、こんなに早く二本目を抜くことになるとはね、そのフワフワしている剣の技術、名前はある
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6話 特別試合
大会もいよいよ最終戦木剣のみの打ち合いになる相手はどんなお貴族様かと思っていたら「なるほど、相手は君か」「ええ、まず試合が始まる前に謝罪をさせて頂戴。私が有利になるルールに何度も変えさせて」「いいさ、結果は変わらないからな」「ふふっ、貴方そんな冗談も言えるのね」その冗談とは、これほどまでの縛りルールでも勝てると思っているのか。またはそんな減らず口を言えるタイプだったのかと思っているのかは分からないが、お互いに決勝まで駒を進めてきたもの同士。気分が高揚していた。「特別試合、始めてください!」最初に動いたのは彼女の方だった。木剣の種類は彼女の背丈には不釣り合いな長さで、両手で主に扱うロングソードに近い形状。それを片手で簡単に上段へ振りかぶり、飛び上がる。剣本来の重量と、彼女の並外れた膂力。飛び上がってから振り下ろされるまでの間に落下する重力を掛け合わせた、必殺の一撃。一連の動作速度も申し分ない。これをまともに受ければ幾ら彼でも木剣を破壊されて試合続行不可能となり判定負けとなるだろう。だが、巨大な威力を持った一撃を受け流す方法は白髪の剣士との対決でよく「見た」彼女の一撃が彼の剣に当たってから、上体を捻りながら剣同士を滑らせて受け流す。「なっ」(その技は先生の…!)(悪いな嬢ちゃん、技見せすぎた)このまま剣を滑らせながら前進し、彼女の腹に一撃を加えて試合終了かと思いきや、片手で振り下ろされたロングソードを両手で持ち直し、無理矢理空中でガードの体制を作る。木剣同士が打ち合い、彼女が開始位置まで飛ばされるが、これを自慢の膂力で何とか姿勢を崩さない。着地の際によろけるなら、そのまま追撃をしようと準備していた彼だったが、不発に終わる。「貴方、真似っ子は随分とお上手なのね」「そちらこそ、見た目によらず力強すぎるだろ。何食ったらそんな力つくんだよ」「失礼な!食べているものは普通よ!」食べる量について言わない辺り、大飯食らいなのかなと思ったが、その後の展開が容易に想像できたのでやめておく。今度も先に仕掛けたのは金髪の彼女。だが今度は飛び上がらずに地上で細かく攻撃を仕掛ける。彼はまだロングソードの遠い間合いで、あたかもショートソードの用に扱う彼女に対応がやや遅れている。それでもまともに打ち合わず、躱し、いな
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7話 乱入者
後一歩のところで上空に感じた覚えのある魔法陣が闘技場全体を覆う。お互いに戦闘を瞬時に中断し、何が起きているのか情報を集めようと周囲を見渡す。(これはユニコーンの時と種類は違うが、同じ奴が起動しているな。となると魔法が飛び交っていた闘技場の魔力を使ってまた魔物を召喚するつもりか?だがそれならもう対策はある)彼が右手を空に掲げ、自身の知覚できる感覚を広げる。仮想的に可視化させた周囲の環境を取り巻く魔力を一点に集めるべく、魔力糸無しで念動魔法を発動させる。だが、彼の思惑通りにはならなかった。確かに魔術の発動は出来た、一瞬だが周囲の魔力を集めることも。しかし、魔術の「継続」が出来ない。(これは、消滅魔術か…!)消滅魔術とは魔法や魔術の発動を検知、即ち魔力が体外に放出された段階で消滅させる魔術だ。これもまたユニコーンの時と同じ魔術師がやっているのだろうが、こんな代物扱える人物など世界に数えるくらいしかいないユニーク魔術に近いほど珍しい。ここで始めて事の重大性に気づく。(どんなに犠牲を払ってでも消したい奴がこの中にいる…!)足に魔力を込めて垂直跳びをする。純粋な筋力による跳躍と、魔力による跳躍の付加。その高さおよそ二十メートル。跳躍しきってから念動魔術による空中浮遊が即座に消滅魔術によって落下を始めようとする。しかし落下を始めるよりも速く、念動魔術を再度発動。再度、念動魔術の消滅。再度、念動魔術の発動。この消滅と発動の繰り返しを高速で繰り返すことで空中浮遊を維持する。始めに魔力を集めようとした方法を思い出し、空中の残存魔力の流れを感知、魔法陣の位置を逆探知する。(一、二、三、四……五個だな)五か所から魔力を吸い上げており、星形の頂点を位置する場所に魔法陣が張られているようだ。観客はまだ彼女との戦闘の最中で彼がルール違反をしたと思っている。空中浮遊を解除し、大会運営に用意されている椅子が集まる上座目掛けて移動する。この異常事態を伝えるために大会運営席に到着したが、一歩遅かった。黒衣のフードに身を包んだ連中が、恐らく毒が仕込んである武器を片手に運営陣を拘束している。それを見た彼は毒武器を魔力糸無しで操り、毒武器の所有者に向けて刃先を強引に向かわせた。何とか抵抗しようと力を込めるフードを被った賊の抵抗空しく
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8話 闊歩する魔物達
まばらに逃げ始めている観客を避けつつ、もうじき魔物がいる場所まで辿り着いた。魔物が近くなるにつれて、彼らとは逆方向に逃げる観客が増えてくる。それにぶつからないように速度を殺さず向かうと「ガァァァアアアア!!!!」魔物の声が響いている。幸い魔物を避けるように観客が退避はしているが、いかんせん戦闘するには狭い空間だ。魔物が移動したら被害が大きくなるのは必至。(あれはウルフファング…!)「俺が牽制する!その隙に一撃頼んだ」「分かったわ」魔物を視認する。ウルフファングは三段目の魔物だが、近々四段目に昇格するのでは無いかと噂になっている。主な生息域はユニコーンと同じ森の奥地。本来群れで行動することで知られているが今回は一頭のみ。成獣だと思われるが、先程の咆哮といい、まともに音圧を受ければたちまち体が数秒間硬直して動けなくなる。既に躱した観客の中にも硬直し始めている人もいた。今はまだ魔法陣付近にはいるが、いつ動き出しても不思議はない。「また咆哮がくるぞ!」(先程よりも大きい咆哮を出すつもりか)彼らが接近してきたことに対する、臨戦体制に入ったことへの合図。「咆哮は何とかする!構わず突っ込め!」ウルフファングが咆哮を上げるよりも早く、自分とマリーの耳に小さいウォーターボールを出現させ、耳を保護。「きゃっ?!」と驚いたような声を一瞬あげるが、速度は緩めずにウルフファングまで駆ける。加えてすぐに音の衝撃波の直撃を防ぐために、帯同していた十本の剣を横一列に並べる。「ガァァァアアアア!!!!!!!」先ほどとは比べ物にならない音圧でウルフファングの咆哮が響き渡るが、二重に対策された二人は硬直することなく突っ込み続ける。咆哮が終わったとほぼ同時に剣の間合いに入り、下段から垂直に首元へと真っ直ぐ軌道を曲げられた二本の剣が、ウルフファングの首を捕らえたかに見えたが、四段目に昇格が控えているだけあって反応が速い。薄皮一枚を切り裂き小さく鮮血が上がる。上体が逸らされ更に懐が広くなり、この隙間にマリーが素早く潜り込む。戻ったときにはマリーが頭の真下に位置取り、うまく死角に入った。「やぁぁぁああああ!!」裂帛の気合いで死角からの一撃。元々の剣の切れ味の良さも相まってか、滑るようにウルフファングの首が落ち、魔石へと還る。
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9話 五段階目の魔物 アシュラ・ハガマ
「貴方の企みは潰させてもらったわ」「お前に話すことは許可していなぁぁぃいいい!!!この卑しい雌豚がぁ」今までの口調とは打って変わり、中性的な声からドスの効いた男性の声へと変わる。「いやぁあん、ワタクシッたら。いっけなーい!てへっ?」(上空からすでに投擲していることに気づいたか!勘のいい奴だ)幸い魔物の動きは鈍い、耐久力と、攻撃、防御力が高いタイプだろうことは魔力反応を見ればわかる。闘技場の上空は幸い何も障害となる建物がなく、青々とした空が広がっている。「そこからお退きなさい、アシュラちゃん」(主人の命令には従うタイプだな)「いやねぇ、不意打ちだなんて。せっかくのお祭りなんですもの。もっと楽しみましょ?それに貴方、随分とこちらを探っているようだけど、狙い通りにいくかしらね?」「さあな」投擲された剣がアシュラと呼ばれた魔物めがけて飛ぶが、これを必死に躱そうと動く魔物。空中で自動追尾された無数の剣たちは正確に魔物へと突き刺さる、はずだった。重力と念動魔術を合わせた剣の雨は正確に魔物へと命中したが、体を覆う甲殻のようなものが剣を弾いた。ガキィイインン!!!大きな衝突音が響き渡る。まるで剣と剣が衝突したときに出るような轟音。剣は衝撃に耐えられずに派手に火花を上げて粉々に砕け散り、ユニコーンを屠った時以上の攻撃があっさりと防がれる。残った剣は空中に帯同させていた二本の剣のみ。「あっらぁ?アシュラちゃんが強すぎて、全く攻撃が通らなかったわね?じゃあ次はこっちから行っちゃおうかしら!ここで息の根止めてやるわ、雌豚」「あいつ、殺すわ。二回も、二回も雌豚って言った!」「高尚な術が使えるようだが、用い道がいけねぇ。老体に鞭打つときかね」二人の絶対殺す宣言に、彼は少しだけ引いた。「あら?やる気?この五段階目のアシュラ・ハガマに勝てると思っているのかしら、ね!」五段階目の魔物。中央王族機構筆頭の近衛騎士団が束になってようやく足止めできる強さの魔物と言っていいだろう。その大人数で相手する魔物をたった三人で相手しなければならない。加えて、まだどんな手段で攻撃を行うのかわからない仮面の男。素人目にも、戦況は絶望的だった。言い終わると同時に暗殺ギルドの長らしく黒く塗りこんである暗器をこちら目掛けて投擲してくる。マ
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10話 レルゲン・シュトーゲン
次に彼が目を覚ましたのは、闘技大会があった日から三日後だった。「お姉さん!お兄さんが目を覚ましたよ!ほらお姉さんも起きて!」「えっ!彼が起きたの?」机に突っ伏して寝ていたマリーががばっと勢いよく起き上がる。「はしたないぜ、嬢ちゃん」少し呆れながら笑い、差し入れと思われる袋を片手に扉を開ける白髪の剣士。「うるさいわよ、ハクロウ」徐々に意識がはっきりして、全身の痛みに気が付く。手には厳重に包帯がまかれ、全身にも薬草を染み込ませたであろう包帯がグルグルとまかれていた。マリーに起こしてもらい、ゆっくりと座る。「そういえば、アンタの名前、聞いていなかったな」「なんか遅すぎる気もするが。自己紹介をさせてもらうぜ。俺はハクロウ。姓はない。ボウズ、嬢ちゃんを護ってくれて感謝する。あれは俺じゃどうにもできなかった。本当にありがとうよ」「それで?そろそろ貴方の名前を教えてくれてもいいんじゃないの?私の英雄様」少し考える。だが、短期間とはいえ共に過ごした中だ。この人達なら、きっと受け止めてくれる。「俺は……俺の名前はレルゲン、レルゲン・シュトーゲン」場が一瞬凍り付く。だがその場を引き戻したのは、やはりマリーだった。「レルゲン…もしかしなくても「旧王朝」の名よね。学が高いことを言うと思っていたわ」未だに緊張している状態のハクロウ。今ここに剣があったとしたとしたら、恩知らずな行動に走っていたかもしれない。「ハクロウ、彼は経歴はともあれ、暗殺されそうな私を助けたお方よ。控えなさい」「すまねぇ、頭ではわかっちゃいるんだが、どうかしちまってるな。でもよ、感謝していることだけは本当なんだ。信じてほしい」「いいさ、こうなることをわかって俺も名乗ったんだ。気にしないでくれ」「なんか難しくてよくわからないけど、みんな仲良しってことだよね?」「そうよ。みんなで乗り越えた。だから仲良し!」「おいしいところは全部レルゲンが、いや、やっぱりボウズはボウズだわ。このボウズが持って行っちまったがな」「もう!水を刺さないでよね」下の方から賑やかな気配を察してか、女店主が一声かける。「この街の英雄様がお目覚めなのかい?賑やかなのも結構だけどさ、水でも持っていってやんな」「あたし行ってくる!」元気に階段を降りていく店主の娘。どうやら宿屋の親子
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