Se connecter念動魔術_それは魔力の糸を使った日常生活で使われる雑用魔術。 素性を隠す為に念動魔術は使えないが、今使わなければ宿屋の娘と交わした 「良いところを見せる」という約束を果たせない。 主人公は素性を知られたとしても念動魔術を戦闘に応用することで約束を護る。 大会前に度々因縁があった金髪の彼女と対戦するが、暗殺者の一団が乱入する。 狙われていたのは金髪の彼女だった。 「私は中央王族機構。第三王女、マリー・トレスティア」 試合会場に集まっていた全員を人質に取ったゲームを宣言する暗殺者ギルドの長。 『主人公が使えるのは念動魔術と初級魔法のみ』 絶望的な戦力差を覆す鍵は、一瞬の機転と魔術の応用を可能にする念動魔術だった。
Voir plus「本当に皆さん、王国のために尽力して下さり、ありがとうございました」最後の戦いから数日後、傷が癒えた頃に女王陛下から感謝の言葉が述べられた。王国の水問題はカノンの尽力により普及工事が進んでおり、こちらも飢える寸前で解決へ向かっているようだ。「ベンジー騎士団長亡き後、現在は空席のままですが、ハクロウ副団長を騎士団長に昇格し、そしてレルゲン、貴方を副団長に任命致します。よろしいですね?」二人が同時に答える。「「謹んで拝命致します」」ナイトの討伐と、王国を狙った数々の暗躍が終了した事を祝して祝勝会が開かれた。「しっかし、俺がボウズ直々の上官とはねぇ…功績を考えたら普通逆じゃねぇ?」「私専属の騎士ってだけで、今まで普通の騎士と同じ階級なんだから妥当でしょ」「いやぁ、俺片腕無くなっているしよ…」「それなんだがハクロウ、無くなった左腕について話があるから後で」「ん?ここじゃダメなのか?」「まあな」「まぁいいか、んじゃ嬢ちゃん達をあまり待たせるなよ」「ああ」短い挨拶だったが、一時は死にかけていたハクロウも晴れやかな表情をしている。貴族に挨拶をして回っているマリーを見つけ、半ば強引に話しかける。「マリー、ちょっといいか?」周りの貴族達に別れを告げて、マリーがレルゲンの前に来る。「どうしたの?」「俺と一曲、踊ってくれるか?」その直球な物言いにマリーは少し驚いた表情をしたが、すぐにレルゲンを見つめ返し、返答する。「喜んで」簡単な踊りではあったが、マリーは笑顔は眩しく、また幸せそうな顔をしている。そこはレルゲンとマリーだけの空間、もちろん他の貴族達も一緒に踊ってはいたが、周りも気を遣って少し距離を空けてくれている。(マリーと踊れて良かった)(私も、公の場で貴方と踊れたのは本当に嬉しいわ。セレス姉様の事もあるし…)(今は周りの目は気にせずに一緒に楽しもう)(そうね)二人だけにしか聞こえない、踊りの中での魔力糸での思念会話は、心の距離の近さを象徴していた。マリーとの踊りが終わってから、セレスティアの姿が見えない。気になったレルゲンは少し辺りを見回して彼女を探すが、どこにも姿は見当たらない。女王にも直接聞いてもみたが、分からないと返答された。思い当たる所は後一つ。セレスティアと初めて会った中庭。初めて念動魔術の物質分離が成功し、
得意気に笑うレルゲンを見て更に思考が乱れていく。ナイトは一度落ち着くために深呼吸をするが、この間にも魔力障壁が加速度的に速く、そして鋭くなっていくマリーが魔力障壁をどんどん破壊していく。加速しきったマリーは今や分身して見える程だ。こうなってしまってはレルゲンといえど加勢しようとすると逆に邪魔になる。「やあぁぁぁぁ!!!!」剣が加速する度にマリーの気合いも上がっていく。ナイトが保険のために用意した魔力障壁がもうじき全て破壊されるタイミングで全身から真紅の魔力が噴き上がり「いい気になるなよ!」口調が荒っぽくなり、衝撃派ではなく純粋な魔力衝突によりマリーが後方に吹き飛ばされる。壁に勢いよく激突し、少しの亀裂が入るがマリーの意識はまだ失われていなかった。ようやく回りを俊敏に動いていたマリーを止めることに成功し、ナイトに余裕が戻る。「なまじ強いと大変ですね、おや?それにしても今のをもろに浴びてその程度ですか。レルゲン君、ではありませんね」一拍おき、ピシッと額に血管が浮き出る。「貴女…今、念動魔術を使いましたね?」痛みを堪えながらも笑って見せるマリー。「死になさい」最後の一撃を入れようとするナイトにセレスティアがどの上位魔術にも属さない、しかし威力は上位魔術にも引けを取らない詠唱破棄の独自の魔術を発動させる。「させません、マルチ・フロストジャベリン」無数の氷でできた槍を空中からナイトに向けて放つ。「そんなところにいたのですか。貴女までも…と思いましたが、これはどうやらレルゲン君ですね」静かにレルゲンがセレスティアを地上に下ろし、マリーの治療のためにセレスティアが駆け出す。「回復なんてさせませんよ」念動魔術で強引に止めるが、それでも何とか前に進もうとするセレスティア。しかし身体を完全に固定されて進めない。「ここからでは射程が遠くて回復魔術を使っても意味がありませんよ。大人しくそこで横たわる第三王女を見ていなさい」ナイトがセレスティアからレルゲンに向き直る。「ではレルゲン君、ついに一騎打ちです。私の懐に入れれば君の勝ち、こられなければ私の勝ちです」「それはどうかな、まだ気が早いんじゃないか?」「何を言っているのです?もう彼女達の加勢は不可能でしょう」セレスティアからマリーへ伸びる、一本の魔力糸。否、逆だ。“マリーが伸ばした”魔
「素晴らしい!皆さん本当に素晴らしい!誰も欠けることなく私の最高傑作を打ち倒すとは。特にユゥに入れた最後の一撃!私は感動しましたよご老人!流石は年の功ですね。ですので」パチンと指を鳴らし、レルゲンが帯同させていた鉄剣が螺旋状となり一瞬で高速回転する。「は?」何も命令を出していないはずのレルゲンの鉄剣が螺旋を描き、ハクロウの左肩に命中。勢い収まることなくその後ろにある壁をも貫き、見えなくなる。「くそ…しくったか…」ハクロウの左腕が肩口から螺旋剣に抉り飛ばされ、酷く出血する。「なんで…くそ、ハクロウ!」「こっちを見てんじゃねぇレルゲン!俺なら大丈夫だからよ…そっちはあいつに集中しろい」即座に帯同している残り四本の鉄剣を外へ飛ばす。残る武装は黒龍の剣と白銀の細剣のみ。肩で大きく息をするハクロウ。出血量はセレスティアが負わされた時以上、間違いなく致命傷だ。慣れた魔力糸捌きでハクロウの応急処置をし、止血する。注意はナイトに向けたまま、感覚のみで手術を行う。出血量が少なくなったところですかさずハクロウが回復薬を飲み、完全に止血が完了する。肩で息をしていたハクロウの呼吸が落ち着き、安堵する。その様子を見たナイトが一言。「手術の速度と精度も上がっていますね。実に素晴らしい成長だ」それを聞いたレルゲンは魔力を全て解放し、もはや黒と形容してもいい程の赤い色の魔力が全身から迸る。我を忘れ、今にもナイトへ突っ込んでいきそうなレルゲンを止めたのは、マリーとセレスティアだった。ただそっと二人が両手を握り、優しく魔力をレルゲンに流す。全身から迸る赤い魔力がフッと消え、我に返る。「ありがとう、二人共」マリーとセレスが頷き、構えを取る。セレスが高速詠唱でバフを二人にかけている最中、時間を潰すかのようにナイトが語り始める。「シュットくんの魔力はどんどん濃さが増していますね。色を見れば明らかですが、魔力総量だけ見れば既に私を超えているでしょう」「レルゲンだけしか見えてないって言いたいのかしら?」マリーが挑発するようにナイトを煽る。「いえいえ、そんなことはありませんよ?マリー・トレスティア。貴女方には正直期待していませんでしたが、シュット君を献身的に支える姿には涙が出るほどです」煽ったつもりが煽られたマリーは顔をしかめるが、ナイトの余裕を崩すには
(やはり魔力糸なしの念動魔術で操作していたか)「どういうこと?」マリーがレルゲンに説明を求める。「簡単にいうと、こいつらを動かしているのはナイトの念動魔術だ。だから最初から見やすい位置に陣取って“操作していた”んだ。ナイトが操っているから念動魔術も使える」レルゲン以外の三人が驚きの声を上げる。今までのこの攻防を全て一人で演出していた。それこそまさに旅の行商人が連れ歩く人形使いのようではないか。ここまで並列に思考を分けて、狙いを絞り、作戦を共有させる。念動魔術の極地とも言える技の結集にレルゲンは素直に驚きと共に、上の世界を見た。「仕組みを理解したところで、今のレルゲン君には操作権は奪えませんよ」「そうかもな」最初はマリーとアイとの相性が悪いことから前衛を変える選択をしたが、アイの影移動とユゥの回復、どちらを先に叩くか──間違いなくアイの影移動の方が厄介だ。となればレルゲンが自らアイと一対一の戦いをしても良いが、それだと次のナイトと戦う事を考えると魔力が枯渇しかねない。寧ろ次を考えるなら、レルゲンが回復魔術を使うユゥを発動させないように釘付けにし、マリーとハクロウ、セレスティアにアイを討ち取ってもらった方がいい。アイとユゥ、どちらかが欠ければ後は消化試合のはずだ。「俺がヒーラーを抑える。みんなは影移動の方を叩いてくれ」「任せて」「あいよ」短いやり取りだが、即座にマリーとハクロウがアイに切りかかっていく。マリーが連続剣の加護を発動させて、ハクロウがそれのサポート。三人で戦っていた時はこんな戦法を取ることが多いのかなと考えたが、目の前のユゥに集中して回復の隙を与えないように立ち回る。マリーが連続剣の加護が発動してから速度が上昇し切るまではハクロウと一緒に前衛をこなすが、加護の速度が乗り切った後はマリーのみで前衛を任されるのが一つの勝ちパターンだ。次第に速度が上がっていくが、ここでアイが速度鈍化のデバフスキル「ダウン・ザ・ピッチ」をかける。またガクンと一瞬速度が落ちるが、セレスティアがそれを即座にカバーする。「ライト・スピード」下がった分即座に速度バフがかかり、マリーの口角も上がる。更に上がある、もっと先へ行ける。そう感じてからの攻撃速度はマリーを能力以上の速さへと進化させる。堪らずアイが影移動で離脱しようとするが、これをセ
常に気を張っていては身体ではなく心が疲弊する。そこで兼ねてより約束していた鍛治屋、もとい街のぶらり旅をレルゲンが提案したのだった。「いいわね!私も振り回されてちょっと気分転換が必要だと思っていたのよ。今からだと陽がすぐ落ちちゃうだろうし、明日行きましょう!」「分かった」マリーが予想していたよりかなり乗り気な反応をする。余程ストレスが溜まっていたようだ。次の日、軽く朝食を済ませて、出かける準備をする。もしもの時の為に剣を一本背負い込み、待ち合わせに指定された噴水のある広場に足を運ぶ。マリーを驚かす品物を鞄に詰め込む事も忘れなかった。約束の時間までまだ余裕があった筈だが
街から中央までは馬車を使えば一ヶ月。歩きだと三ヶ月はかかるだろう。膨大な魔力量を誇るレルゲンなら三人に念動魔術をかけて空を飛んでいく事も出来るだろう。しかし、彼はそれを嫌った。恐らくマリーとハクロウも気づいているが、あえて口にしない。まだ時間にすれば短いが、出来るだけ一緒の時間を増やしい気持ちがお互いにあった。最寄りの街までは後三日というところ。出発前に買った地図を広げながら、次の街までの道のりを確認する。「次の街まで後三日くらいか」「あの街では馬車自体なかったから、行商人にでも乗せてもらいたかったわね」「ユニコーン騒ぎで噂が広まって、行商人すら来なくなっていたからな
次に彼が目を覚ましたのは、闘技大会があった日から三日後だった。「お姉さん!お兄さんが目を覚ましたよ!ほらお姉さんも起きて!」「えっ!彼が起きたの?」机に突っ伏して寝ていたマリーががばっと勢いよく起き上がる。「はしたないぜ、嬢ちゃん」少し呆れながら笑い、差し入れと思われる袋を片手に扉を開ける白髪の剣士。「うるさいわよ、ハクロウ」徐々に意識がはっきりして、全身の痛みに気が付く。手には厳重に包帯がまかれ、全身にも薬草を染み込ませたであろう包帯がグルグルとまかれていた。マリーに起こしてもらい、ゆっくりと座る。「そういえば、アンタの名前、聞いていなかったな」「なんか遅すぎる気も
地下の水道網が転移前の場所に置き去りになっていることから、外の店は軒並み臨時閉店。街の人々にとってはまさに死活問題だろう。明日から単独任務を与えられてはいるが、早くに国民に新鮮な水を届けなければ、衰弱していってしまう。こうして何か手掛かりがないか魔術研究所によった訳だが、カノンにも久しぶりにあった気がする。「やぁ助手君!今回の任務もよくやったねぇ偉いぞぉ!」ゴシゴシとレルゲンの頭を撫でてくるカノン。初対面こそよそよそしかったが、いざ仲良くなってくると歳はあまり変わらないがセレスティアとはまた違った安心感がある。「カノン様、やめて下さい」「おや、失礼。それで?任務から帰ってきたば