念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-

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last updateDernière mise à jour : 2026-02-07
Par:  雪白ましろEn cours
Langue: Japanese
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念動魔術_それは魔力の糸を使った日常生活で使われる雑用魔術。 素性を隠す為に念動魔術は使えないが、今使わなければ宿屋の娘と交わした 「良いところを見せる」という約束を果たせない。 主人公は素性を知られたとしても念動魔術を戦闘に応用することで約束を護る。 大会前に度々因縁があった金髪の彼女と対戦するが、暗殺者の一団が乱入する。 狙われていたのは金髪の彼女だった。 「私は中央王族機構。第三王女、マリー・トレスティア」 試合会場に集まっていた全員を人質に取ったゲームを宣言する暗殺者ギルドの長。 『主人公が使えるのは念動魔術と初級魔法のみ』 絶望的な戦力差を覆す鍵は、一瞬の機転と魔術の応用を可能にする念動魔術だった。

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Chapitre 1

1話 鳥カゴからの脱却

화려하고 현대적인 아파트 침실 안.

이제 쾌락의 시간이 막 끝난 시점이었다.

방안엔 뜨거운 열기가 여전했고 진한 남자의 호르몬과 여자의 몸에서 은은하게 나는 향기가 남아있었다.

남자의 복근을 타고 굵은 땀방울이 흘러내렸다. 그의 검은 눈동자에 욕망이 숨겨져 있었는데 조금 전의 위로가 성에 차지 않은 듯 탐욕스러웠다. 그는 지쳐서 깊은 잠에 빠진 여자를 뚫어지라 지켜보다가 그녀를 안으며 말했다.

“자는 척하지 말고 눈을 떠 나를 봐!”

“이게 다 네가 원했던 거잖아.”

윤성아는 뼛속까지 시큰해졌는데 마치 온몸의 힘이 순식간에 다 빨려 나간 것 같았다. 손가락 하나 까딱할 힘조차 없었다.

그녀의 젖은 머리칼이 가늘고 긴 목에 꼭 붙어 있었고 발그레한 얼굴은 웜톤 불빛에 물들어 더 유혹적으로 비쳤다.

남자는 그녀의 흐리멍덩한 눈빛을 보자 저도 모르게 침을 삼키며 갈라지는 목소리로  말했다.

“가서 씻자.”

그가 그녀를 안아 들고 성큼성큼 욕실로 향했다.

샤워기를 틀자 안개가 자욱했고 남자는 그녀를 뜨거운 물이 가득 담긴 욕조에 던져넣었다...

곧이어 건장한 몸을 가진 남자도 욕조 안으로 들어갔다.

욕실에서 나왔을 땐 이미 두 시간이 흐른 뒤였고 그는 여전히 뜨거운 눈빛으로 품에 안긴 여자를 바라봤다.

“정말 지쳤어?”

“네.”

윤성아가 대답했다. 그녀의 목소리는 사람을 매혹하는 힘이 있었는데 새끼 고양이처럼 매력적이었다.

눈꺼풀이 무거워졌다. 그냥 이대로 잠들고 싶었지만 그럴 수 없었다.

그녀는 힘겹게 눈을 떠서 남자를 바라봤다.

잘생긴 이목구비는 타고난 듯했지만 차가웠다. 온몸에서 고귀한 분위기가 뿜어져 나왔다.

그와 그녀, 한 사람은 하늘에 있고 다른 한 사람은 늪에 빠져 있다.

그는 그녀의 ‘은혜로운 고객님’이자 그녀가 돈을 요구하는 ‘돈줄’이기도 했다.

4년 동안 그에게 돈을 달라 요구한 적은 몇 번이었는지 기억나지 않을 만큼 많았다.

하지만 매번 어떻게 입을 열어야 할지 난처해할 때마다 어쩔 수 없이 눈을 질끈 감고 큰 액수를 요구해야 했다.

입술을 꽉 깨물고, 윤성아가 결국 말을 토해냈다.

“생활비가 모자라요...”

“하!”

남자가 조소하듯 차갑게 웃더니 긴 손가락으로 그녀의 턱을 살짝 들어올렸다.

검은 눈동자가 한층 짙어지며 그녀의 터질 듯이 달아오른, 잘 익은 사과 같은 얼굴을 뚫어져라 바라봤다.

그녀의 까맣고 촘촘한 속눈썹에 이슬이 맺혀있었다. 조금 전 욕실에서 너무 과했던 걸까? 그녀가 울어버렸다.

귀엽고 장난기 가득한 모습, 알맞춤한 콧대. 셀 수 없을 만큼 키스를 퍼부어 약간 부어오른 입술, 그리고 눈맞춤을 피하는 눈동자까지!

‘젠장!’

겨우 잠이 든 야수가 다시 꿈틀거리며 깨어나려는 것 같았다.

강주환의 눈빛이 무겁게 가라앉았다. 그의 쉰 목소리에 분노가 서려 있었다.

“이번엔 얼마를 원하는데?”

“1억.”

“걱정하지 마. 줄 테니까.”

그는 아무렇지 않게 대답했다. 돈이라면 넘치게 많으니까.

“고작 한 번 하는 게 1억의 가치가 있을까?”

하지만 남자의 목소리가 다시 울렸고, 이내 그가 허리를 숙여 그녀의 입술을 탐했다.

다음 날 아침, 윤성아가 다시 잠에서 깨어날 때 온몸이 나른하고 힘이 없었다. 그녀는 천천히 고개를 돌려 힘겹게 자리에서 일어났다. 침대 머리맡에 카드가 한 장 놓여있었고 핸드폰에 메시지가 와있었다.

「카드에 1억 있어. 이번 달 생활비로 충분하겠지? 너, 네가 비싼 줄 알고 더 많이 요구할 생각은 접어. 앞으로 한 푼도 못 받을 수 있으니까.」

그의 싸늘한 말도 윤성아가 견뎌야 할 부분이었다. 확실히 그녀는 이 정도로 ‘비싸지’ 않았다.

하지만...

그녀의 얼굴에 씁쓸한 미소가 걸렸다.

그녀는 핸드폰을 끄고 욕실로 가서 샤워하고 이를 닦았다.

전형적인 오피스룩으로 갈아입고 옅은 메이크업을 했다. 그리고 침대 협탁 위에 놓인 카드를 가방에 넣었다.

걸어서 오 분 거리인 회사에 도착한 후, 그녀는 엘리베이터를 타고 바로 대표님 전속 층으로 올라갔다. 대표님 사무실 밖에 있는 사무용 책상에 앉은 후, 하루의 업무를 시작했다.

윤성아는 굉장히 예뻤다. 자그마한 얼굴의 오목조목한 이목구비는 신이 열심히 빚은 티가 났고 키도 크고 늘씬했다.

사실 그녀는 성격도 좋았는데 부드럽고, 침착한데다 똑똑하고 성취욕이 강한 편이기도 했다.

하지만 호진 그룹 동료들은 모두가 그녀를 차갑고 도도하다고 생각했다.

윤성아는 평소에 말수도 적고 동료들과 어울리지도 않았으며 혼자 다니길 좋아했다.

호진 그룹에서 일한 지 4년이 되어가지만 그녀는 친구 한 명 사귀지 못했고 고독한 분위기를 풍겼다. 그나마 유일하게 자주 말을 건네는 상대라면 강주환뿐이었다.

낮에 그녀는 무슨 일이든 척척 해내는 합격한 비서였고 밤이 되면 그를 만족시켜주는 뛰어난 애인이 되었다. 그녀는 그가 돈을 주기만 하면 가질 수 있는 여자였다.

오전 아홉 시.

윤성아가 대표님 사무실 앞에서 노크했다. 그리고 문을 열고 들어오며 말했다.

“대표님, 파일 몇 개 확인하셔야 합니다. 10분 뒤에 경영진 미팅이 있고 점심에 이스트 컴퍼니 대표님과 식사가 예약되어 있습니다. 오후 두 시엔 손 대표님께서...”

약간 느린 템포로 윤성아가 강주환의 오늘 일정을 얘기했다. 그녀가 보고를 마치자 강주환이 차가운 눈빛으로 그녀를 보며 말했다.

“알겠으니까 나가 봐.”

다시 밖으로 나와 자신의 책상 앞에 앉은 그녀는 바쁘게 매일 거의 바뀌지 않는 업무들을 처리하기 시작했다.

저녁 무렵, 다른 직원들과 다름없이 윤성아도 물건을 챙겨 퇴근했다.

그녀는 짬을 내서 집에 들러 1억이 담긴 카드를 윤정월에게 건네며 말했다. “엄마, 이번 달 내가 빌릴 수 있는 마지막 돈이에요. 도박 빚 이것으로 갚으세요.”

“다음 달 월급 받으면 신우 학비 내고 병원비도 낼게요. 그리고 엄마한테 가게 하나 차려줄 테니까 작게라도 장사 시작하세요. 그리고 다시는 그 사람에게 돈 주면 안 된다는 거 잊지 마세요.”

윤정월은 당연하다는 듯이 고개를 끄덕였다. 하지만 그녀가 사람이 사는 집 같지 않은 허름한 민가에서 나와 아파트에 도착하기 무섭게 윤정월이 전화를 걸어왔다.

“성아야, 누군가 네 아빠를 붙잡아서 가뒀어!”

“미안해, 성아야. 내가 제대로 지켜보지 못했어. 네 아빠가 또 도박하러 가서 사채를 썼어... 1억 6천만 원이야! 돈을 갚지 못하면 그놈들이 네 아빠 손가락을 잘라버린다고 했어...”

윤정월이 목놓아 우는 소리가 전화기 너머로 흘러나왔다.

“네 아빠를 구할 수 있는 사람은 이제 너뿐이다, 성아야! 우리가 1억 6천을 모아서 보낼 수 있으면 다시 그이를 데려올 수 있어...”

이번이 처음이 아니었다. 사 년 동안 윤성아는 줄곧 이런 식으로 빚을 갚으라는 독촉에 시달렸고 매번 아버지 양지강의 도박 빚을 갚아왔다.

윤성아가 싸늘하게 대답했다. “저 이제 돈 없어요.”

“성아, 넌 호진 그룹의 수석 비서잖아! 여태껏 집에 그렇게 많은 돈을 보내왔는데 네가 돈이 없을 리가 없잖아...”

문득 윤성아는 웃음이 터져 나왔는데 웃다가 눈물이 차올랐다.

그녀는 갑자기 울음을 그친 전화기 너머의 여자를 향해 나지막이 물었다.

“엄마, 내가 그동안 어떻게 그 돈을 얻을 수 있었는지 이젠 알 것 같지 않아요?”

침묵이 한동안 이어졌다. “미안하다, 성아야...”

22년 전, 윤정월은 혼전 임신으로 아버지가 누군지 알 수 없는 아이를 낳았다. 그리고 윤성아가 열 살이 되던 해, 양지강과 재혼하게 되었다.

양지강은 요리사였는데 윤정월과 결혼 후, 두 사람은 식당을 열게 되었다.

사람 좋고 성실했던 양지강은 정월 모녀에게 아주 잘했다. 좋은 남편이자 좋은 아빠로도 손색이 없었다.

나중에 윤정월이 아들 양신우를 낳아도 양지강은 성아를 소홀히 대하지 않았다.

그는 정말 윤 성아를 친딸로 여기고 친아들보다 더 아껴줬었다.

비록 돈이 많지는 않았지만 가정이 화목하니 행복하고 따듯했다.

하지만 4년 전부터 모든 것이 바뀌기 시작했다...

어머니가 눈물을 흘리며 그녀를 향해 애원했다. 그녀는 애써 마음을 굳게 먹으려고 했지만 가족 앞에서 또다시 타협하고 말았다.

“남은 6천은 어떻게든 방법을 대서 구해볼게요. 아버진 괜찮을 거예요.”

하지만 그날 밤, 강주환은 늦도록 그녀를 찾아오지 않았다.

결국 윤성아가 그에게 전화했다. 전화를 받은 남자의 목소리는 차갑기 그지없었는데 몸이 살짝 떨릴 정도였다.

“용건은?”

“...”

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1話 鳥カゴからの脱却
彼の朝は早い。日が昇ると共に起き、朝食の準備を始める。といっても用意するものは前日から仕込んでおいたところに取りに行くだけだ。寝床から用意した場所まで行くまでの間は、彼の周囲は多少湿った草花と土の香りが僅かに漂い、仄かに朝露を連想させる霧が薄く立ち込めていた。霧を掻き分けて少し、川のせせらぎが聞こえてくる。ここで大きな欠伸を一つ。日々の習慣とはいえ、眠いものは眠い。用意していた仕掛けに到着。仕掛けと言っても罠や餌でもなく、ただ単純に川の水を一部頂いているに過ぎない即席のダムと言っていいだろう。到底一人では成し得ない、ましてや一夜で用意するなど真っ当な手段では難しい規模の即席ため池がそこにはあった。「今日は見やすくていいね」池の中の水は透き通り、自然の恵みが惜しみなく流れ込んでいる。狙い通り魚が四、五匹池に迷い込み、池の外周を泳ぐ。スッと右手を魚に方に向け、指先に意識を向けると、体を包んでいる自然魔力が指先に僅かに集まり、集中しなければ見えないほど細長い糸が魚目掛けて伸びてゆく。その糸と形容するものが空中を真っ直ぐ伸びてゆき、水中に入ってからも真っ直ぐ魚に向かって伸びる。着水しても水飛沫は立たず、泳いでいる魚はその糸に気づかない。泳ぐ魚を追跡するように伸びた魔力糸が魚に命中すると同時に、彼が纏っていた自然魔力と同様のオーラが魚を包む。「よっと」掛け声と同時に空中に引っ張られるように魚が自ら飛び出てくる。その数は池にいた魚全て。朝食用に二匹見繕い、まだ成長していない魚はそのまま川にリリース。魔力糸と接続が切られた魚が再び元気に川を泳いでいく。魚と接続している魔力糸が出ている手とは反対に、左手からも魔力糸を出してゆく。その数実に二十本。川の流れの一部を拝借して作った池を無くす作業だ。魔力糸が石へと伸びてゆく。石に接続した魔力糸は、石から石へと更に広がり、一度に接続した石は大小様々で百個は下らないだろう。数秒も経たないうちに石が池に入ってゆき、瞬く間に池だった場所が河原へと還る。一つだけ接続を残された石が、それよりも大きい岩に向かって急加速を始め、勢いよく衝突する。ガキィンと大きな衝突音と共に石が割れ、鋭利な破断面が顕になった。簡単な石包丁が出来たら、後は魚の腸抜きを空中で行ってゆく。石包丁の操作を誤ると中の腸が傷つき、
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2話 闘技大会エントリー
「うちはこの辺じゃ珍しい風呂付きさ」なんと、この街の宿で風呂など全く期待していなかったのだが、これは何ともありがたい。「手伝うよ」「遠慮するよ、そんな大荷物、ここまで大変だったろう?部屋で風呂と飯が用意できるまでゆっくりしてな」「お部屋はこっちだよ」「そこはこちらになります、だよ!まったくもう」呆れた声色で苦笑いした女店主。「悪いね、旅のお人よ。まだ子供だから多めにみておくれ」「気にしてないよ」「もう!二人とも子供扱いして!ふんだ」怒りながらも案内のために店主の娘が二階に向かって階段を上がると、木でできた階段が少し軋む音がする。築年数を感じさせるような雰囲気で、彼の持っている荷物を背負ったままでは、間違いなく床が抜けるだろう。だが、床は抜けず足取り軽く店主の娘についてゆく。床が軋む音もさほど気にならない大きさだ。その様子を見ていた女店主が思わず溢す。「鍛えているんだねぇ」実際のところ鍛えていることは間違いないのだが、本当のところは単純に鍛えているだけではない。部屋に到着し、なるべく床に重さが分散されるように荷ほどきを済ませる。(先に風呂か、はたまた飯か)と考えながら、出されたコップに入った水に魔力糸を接続させ、空中で形を変化させる遊びで時間を潰す。変化のパターンが五十を超えた辺りで一階から風呂の準備ができたと声がかかる。空中に漂っていた水を口に飛び込ませて飲み込んでから下の階へと向かう。脱衣所のようなところではご丁寧に洗濯物を入れる籠まで置いてあった。さっと籠に服を丸めて突っ込み、久しぶりに落ち着いた状態で風呂に入れる。野宿中も川の水を固定させ形状を維持するなどの工程がとにかく多い。維持にも少なからず神経を使うことから、全く魔力操作を必要としない風呂はとにかく貴重なのだ。「はぁ~」と思わず声が出る。すると籠を回収しに来た店主の娘が「おじさんみたいな声出してる」と笑いながら声の主が遠ざかるのをしり目に(失礼な)と心の中で抗議するのであった。風呂を済ませ、用意された部屋着に着替える。簡素な作りだが、意外にも着心地がよかった。「さっぱりしたかい?」「おかげさまで、いい湯だったよ」「それはよかった。さあ、飯の用意もできたよ!腹いっぱいになるまで食べな!」満足したような顔つきで女店主が笑う。
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3話 大会前日 魔物出現騒ぎ
衛兵の隊長と思わしき男性が、集まった皆に号令をかける。「これから魔物調査に向かう!対象の魔物は数も種類も不明だが、岩山を消し飛ばしたという報告が入っていることから二段階目までの強さは覚悟しておくように!またここからそう遠くない場所になる。最初から気を引き締めるように!」街の大門がゼンマイ仕掛けでガチャガチャと音を立てながら開いてゆく。いざ行進を開始するというタイミングで背後から声がかけられた。「貴方も調査に参加するのね」「明日に差し支えると困るからね。そういう君は?」「大体は貴方と同じ。店主さんにも頼まれたし」二人の会話を遮るように号令がかかる。「調査開始!」気合をつけた隊長が先陣を切って進んでゆく。彼の位置は隊の後方、彼女はやや前方に配置されている。目的の場所にはすぐに到着した。岩山が消し飛ばされたとされる場所は、確かに魔力濃度が異常に高い。元来魔物がポップする仕組みは、周囲の魔力が形を成したもので、強さは六段階で分類される。出発前に隊長が説明していた二段階目までの魔物なら、集まった人数だけでも対処が可能だろう。彼が出るとしたらそれよりも上の段階の、不測の事態が発生した時だけだ。彼は様子だけ見には来たが、動くつもりは全くなかった。(一・二段階目ならあの金髪の彼女だけでも十分に倒せるはず)しかし、彼の期待は大きく外れることになる。出現したのは四段階目のユニコーン。パワーはそこまでないが、高い知能と俊敏性、魔法も使用してくるという報告書もある。大型パーティになればなるほど、ユニコーンのサイズの小ささを考えると苦戦が強いられる。力量的には五段階目と互角に渡り合える手練れが数人で討伐する魔物なのだ。主な生息地は、魔力溢れる人間が近づかない緑豊かな “深域”や、ダンジョン奥地のトラップに引っかかったときに出現するような魔物のはずだ。こんな魔力濃度が本来薄いはずの岩山地帯にポップするはずはない。岩陰に隠れてユニコーンの様子を伺う。暴れまわるタイプではないが、こちらが刺激を与えればその限りではない。衛兵の副官と思わしき人物が、隊長に耳打ちする。「相手はユニコーンです。我々だけでは対処ができません」「うむ、それはわかっているが、ここで撤退して住人や行商人に被害が出てからでは遅い」考え込む隊長だが、具体的な作戦
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7話 乱入者
後一歩のところで上空に感じた覚えのある魔法陣が闘技場全体を覆う。お互いに戦闘を瞬時に中断し、何が起きているのか情報を集めようと周囲を見渡す。(これはユニコーンの時と種類は違うが、同じ奴が起動しているな。となると魔法が飛び交っていた闘技場の魔力を使ってまた魔物を召喚するつもりか?だがそれならもう対策はある)彼が右手を空に掲げ、自身の知覚できる感覚を広げる。仮想的に可視化させた周囲の環境を取り巻く魔力を一点に集めるべく、魔力糸無しで念動魔法を発動させる。だが、彼の思惑通りにはならなかった。確かに魔術の発動は出来た、一瞬だが周囲の魔力を集めることも。しかし、魔術の「継続」が出来ない。(これは、消滅魔術か…!)消滅魔術とは魔法や魔術の発動を検知、即ち魔力が体外に放出された段階で消滅させる魔術だ。これもまたユニコーンの時と同じ魔術師がやっているのだろうが、こんな代物扱える人物など世界に数えるくらいしかいないユニーク魔術に近いほど珍しい。ここで始めて事の重大性に気づく。(どんなに犠牲を払ってでも消したい奴がこの中にいる…!)足に魔力を込めて垂直跳びをする。純粋な筋力による跳躍と、魔力による跳躍の付加。その高さおよそ二十メートル。跳躍しきってから念動魔術による空中浮遊が即座に消滅魔術によって落下を始めようとする。しかし落下を始めるよりも速く、念動魔術を再度発動。再度、念動魔術の消滅。再度、念動魔術の発動。この消滅と発動の繰り返しを高速で繰り返すことで空中浮遊を維持する。始めに魔力を集めようとした方法を思い出し、空中の残存魔力の流れを感知、魔法陣の位置を逆探知する。(一、二、三、四……五個だな)五か所から魔力を吸い上げており、星形の頂点を位置する場所に魔法陣が張られているようだ。観客はまだ彼女との戦闘の最中で彼がルール違反をしたと思っている。空中浮遊を解除し、大会運営に用意されている椅子が集まる上座目掛けて移動する。この異常事態を伝えるために大会運営席に到着したが、一歩遅かった。黒衣のフードに身を包んだ連中が、恐らく毒が仕込んである武器を片手に運営陣を拘束している。それを見た彼は毒武器を魔力糸無しで操り、毒武器の所有者に向けて刃先を強引に向かわせた。何とか抵抗しようと力を込めるフードを被った賊の抵抗空しく
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8話 闊歩する魔物達
まばらに逃げ始めている観客を避けつつ、もうじき魔物がいる場所まで辿り着いた。魔物が近くなるにつれて、彼らとは逆方向に逃げる観客が増えてくる。それにぶつからないように速度を殺さず向かうと「ガァァァアアアア!!!!」魔物の声が響いている。幸い魔物を避けるように観客が退避はしているが、いかんせん戦闘するには狭い空間だ。魔物が移動したら被害が大きくなるのは必至。(あれはウルフファング…!)「俺が牽制する!その隙に一撃頼んだ」「分かったわ」魔物を視認する。ウルフファングは三段目の魔物だが、近々四段目に昇格するのでは無いかと噂になっている。主な生息域はユニコーンと同じ森の奥地。本来群れで行動することで知られているが今回は一頭のみ。成獣だと思われるが、先程の咆哮といい、まともに音圧を受ければたちまち体が数秒間硬直して動けなくなる。既に躱した観客の中にも硬直し始めている人もいた。今はまだ魔法陣付近にはいるが、いつ動き出しても不思議はない。「また咆哮がくるぞ!」(先程よりも大きい咆哮を出すつもりか)彼らが接近してきたことに対する、臨戦体制に入ったことへの合図。「咆哮は何とかする!構わず突っ込め!」ウルフファングが咆哮を上げるよりも早く、自分とマリーの耳に小さいウォーターボールを出現させ、耳を保護。「きゃっ?!」と驚いたような声を一瞬あげるが、速度は緩めずにウルフファングまで駆ける。加えてすぐに音の衝撃波の直撃を防ぐために、帯同していた十本の剣を横一列に並べる。「ガァァァアアアア!!!!!!!」先ほどとは比べ物にならない音圧でウルフファングの咆哮が響き渡るが、二重に対策された二人は硬直することなく突っ込み続ける。咆哮が終わったとほぼ同時に剣の間合いに入り、下段から垂直に首元へと真っ直ぐ軌道を曲げられた二本の剣が、ウルフファングの首を捕らえたかに見えたが、四段目に昇格が控えているだけあって反応が速い。薄皮一枚を切り裂き小さく鮮血が上がる。上体が逸らされ更に懐が広くなり、この隙間にマリーが素早く潜り込む。戻ったときにはマリーが頭の真下に位置取り、うまく死角に入った。「やぁぁぁああああ!!」裂帛の気合いで死角からの一撃。元々の剣の切れ味の良さも相まってか、滑るようにウルフファングの首が落ち、魔石へと還る。
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9話 五段階目の魔物 アシュラ・ハガマ
「貴方の企みは潰させてもらったわ」「お前に話すことは許可していなぁぁぃいいい!!!この卑しい雌豚がぁ」今までの口調とは打って変わり、中性的な声からドスの効いた男性の声へと変わる。「いやぁあん、ワタクシッたら。いっけなーい!てへっ?」(上空からすでに投擲していることに気づいたか!勘のいい奴だ)幸い魔物の動きは鈍い、耐久力と、攻撃、防御力が高いタイプだろうことは魔力反応を見ればわかる。闘技場の上空は幸い何も障害となる建物がなく、青々とした空が広がっている。「そこからお退きなさい、アシュラちゃん」(主人の命令には従うタイプだな)「いやねぇ、不意打ちだなんて。せっかくのお祭りなんですもの。もっと楽しみましょ?それに貴方、随分とこちらを探っているようだけど、狙い通りにいくかしらね?」「さあな」投擲された剣がアシュラと呼ばれた魔物めがけて飛ぶが、これを必死に躱そうと動く魔物。空中で自動追尾された無数の剣たちは正確に魔物へと突き刺さる、はずだった。重力と念動魔術を合わせた剣の雨は正確に魔物へと命中したが、体を覆う甲殻のようなものが剣を弾いた。ガキィイインン!!!大きな衝突音が響き渡る。まるで剣と剣が衝突したときに出るような轟音。剣は衝撃に耐えられずに派手に火花を上げて粉々に砕け散り、ユニコーンを屠った時以上の攻撃があっさりと防がれる。残った剣は空中に帯同させていた二本の剣のみ。「あっらぁ?アシュラちゃんが強すぎて、全く攻撃が通らなかったわね?じゃあ次はこっちから行っちゃおうかしら!ここで息の根止めてやるわ、雌豚」「あいつ、殺すわ。二回も、二回も雌豚って言った!」「高尚な術が使えるようだが、用い道がいけねぇ。老体に鞭打つときかね」二人の絶対殺す宣言に、彼は少しだけ引いた。「あら?やる気?この五段階目のアシュラ・ハガマに勝てると思っているのかしら、ね!」五段階目の魔物。中央王族機構筆頭の近衛騎士団が束になってようやく足止めできる強さの魔物と言っていいだろう。その大人数で相手する魔物をたった三人で相手しなければならない。加えて、まだどんな手段で攻撃を行うのかわからない仮面の男。素人目にも、戦況は絶望的だった。言い終わると同時に暗殺ギルドの長らしく黒く塗りこんである暗器をこちら目掛けて投擲してくる。マ
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10話 レルゲン・シュトーゲン
次に彼が目を覚ましたのは、闘技大会があった日から三日後だった。「お姉さん!お兄さんが目を覚ましたよ!ほらお姉さんも起きて!」「えっ!彼が起きたの?」机に突っ伏して寝ていたマリーががばっと勢いよく起き上がる。「はしたないぜ、嬢ちゃん」少し呆れながら笑い、差し入れと思われる袋を片手に扉を開ける白髪の剣士。「うるさいわよ、ハクロウ」徐々に意識がはっきりして、全身の痛みに気が付く。手には厳重に包帯がまかれ、全身にも薬草を染み込ませたであろう包帯がグルグルとまかれていた。マリーに起こしてもらい、ゆっくりと座る。「そういえば、アンタの名前、聞いていなかったな」「なんか遅すぎる気もするが。自己紹介をさせてもらうぜ。俺はハクロウ。姓はない。ボウズ、嬢ちゃんを護ってくれて感謝する。あれは俺じゃどうにもできなかった。本当にありがとうよ」「それで?そろそろ貴方の名前を教えてくれてもいいんじゃないの?私の英雄様」少し考える。だが、短期間とはいえ共に過ごした中だ。この人達なら、きっと受け止めてくれる。「俺は……俺の名前はレルゲン、レルゲン・シュトーゲン」場が一瞬凍り付く。だがその場を引き戻したのは、やはりマリーだった。「レルゲン…もしかしなくても「旧王朝」の名よね。学が高いことを言うと思っていたわ」未だに緊張している状態のハクロウ。今ここに剣があったとしたとしたら、恩知らずな行動に走っていたかもしれない。「ハクロウ、彼は経歴はともあれ、暗殺されそうな私を助けたお方よ。控えなさい」「すまねぇ、頭ではわかっちゃいるんだが、どうかしちまってるな。でもよ、感謝していることだけは本当なんだ。信じてほしい」「いいさ、こうなることをわかって俺も名乗ったんだ。気にしないでくれ」「なんか難しくてよくわからないけど、みんな仲良しってことだよね?」「そうよ。みんなで乗り越えた。だから仲良し!」「おいしいところは全部レルゲンが、いや、やっぱりボウズはボウズだわ。このボウズが持って行っちまったがな」「もう!水を刺さないでよね」下の方から賑やかな気配を察してか、女店主が一声かける。「この街の英雄様がお目覚めなのかい?賑やかなのも結構だけどさ、水でも持っていってやんな」「あたし行ってくる!」元気に階段を降りていく店主の娘。どうやら宿屋の親子
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