漫画『チェンソーマン』のデンジのような主人公は、非凡さの定義そのものをひっくり返す。彼は最初から強力な能力を持っているが、その動機が極めて
俗物的で、英雄らしからぬ欲望ばかり口にする。しかしそれがかえって人間臭さを感じさせ、読者を引き込む。
成長のプロセスが従来のヒーロー像と異なる点が興味深い。崇高な理想ではなく、小さな幸せを積み重ねる中で、自然と他者を想う気持ちが育まれていく。パワーアップのたびに失うものの大きさに気付き、『強さ』と『幸せ』が必ずしも同義でないことを学んでいく。
こうしたキャラクターは、非凡であることの意外な脆さを描くことで、逆説的に人間の強さを浮かび上がらせる。