感情の動きに注目すると、映画と原作で最も違うのは“誰に寄り添うか”が変わっている点だ。原作は複数の視点を丁寧に積み重ねて世界観を構築することが多いが、映画は中心となる感情線を一本に絞って観客を導く。私はその作り方が悪いとは思わないが、原作で育まれた細かな関係性や余韻が失われるのは確かだ。
別の作品例で言えば、『I Am Legend』の映画版と原作小説の違いが参考になる。小説は孤独と内省を深く掘る一方で、映画はサバイバル性と希望の象徴を強めている。
アポカリプスを描く際も同様に、映画は視覚的に訴える要素と分かりやすい感情の流れを優先しており、それが原作の細部や曖昧さを削っているのだ。
総じて私は、映画は原作の入門としては優れているが、原作が持つ多層的なテーマや長期的な展開を楽しみたいなら原作に手を伸ばしてほしいと感じている。