Masuk三度の離婚歴を持つエミールは、「妊娠できない淫乱なオメガ」という噂に苦しんでいた。 二十五歳、オメガとして出産のタイムリミットが迫る中、四度目の結婚相手は戦争の英雄レオニード。 しかし新婚初夜、夫は部屋に来なかった。 それ以来自分から、毎晩誘っても冷たく拒絶され続け――。 失敗できない四度目の結婚生活。 子どもがほしい。 ただそれだけの願いが、どうして叶わないのか。 自分と結婚をしたレオニードの事情を知り、離婚を申し出るが「離婚はしない」とレオニードに断言されてしまう。 抱いてくれないうえに、離婚もしてくれない―― すれ違いの果てに見つけた、真実の愛の物語。
Lihat lebih banyak◆出会い 父が死んだのは、俺が十歳の冬だった。家督を継ぐことになった俺は、早々に社交界デビューをした。 男爵家の当主として、国王陛下に拝謁し、他の貴族たちに挨拶をしていく。執事に連れられて王宮の大広間に入ると、きらびやかな衣装を纏った貴族たちが談笑していた。シャンデリアが輝き、優雅な音楽が流れている。場違いな感覚に襲われ、居心地の悪さを感じた。 父を知る貴族たちが、悔やみの言葉をかけてくれる。頭を下げ、感謝を述べる。同じやり取りを繰り返していくうちに、疲れが溜まっていった。 休憩しようと、広間の端へと移動する。窓の外を見つめていると、笑い声が聞こえてきた。顔を上げると、若い男性が二人、楽しそうに談笑していた。 一人は金髪の若い貴族で、派手な服装をしている。もう一人は――その姿を目にして、視線が釘付けになった。柔らかそうな栗色の髪に、琥珀色の瞳が優しく輝いている。華奢な体つきで、笑顔が美しかった。十五歳くらいだろうか。オメガらしい柔らかい雰囲気を纏っていて、金髪の男性に優しく微笑んでいた。 心臓が跳ねた。胸が熱くなり、息が苦しくなる。見惚れていると、栗色の髪の男性が笑った。金髪の男性が何か面白いことを言ったのだろう。屈託のない笑顔で、心から楽しそうに笑っている。美しかった。笑顔が、声が、仕草が、全てが美しくて目が離せない。「あれは誰だ」 思わず、隣にいた執事に尋ねていた。執事が俺の視線を追い、小さく答える。「リヒテンベルク侯爵家のご次男、エミール様です。お隣はヴァルトシュタイン伯爵家のご長男、ロデリック様。お二人は婚約されているとお聞きしております」 言葉に、胸が締め付けられた。あの美しい男性には、もう婚約者がいるのか。 俺はまだ十歳で、相手は十五歳。男爵家の当主と、侯爵家の次男。身分も違う、年齢も違う。手の届かない存在だ。 それでも、視線が離せなかった。エミールと呼ばれた男性が、またロデリックと笑い合っている。楽しそうで、幸せそうで、胸が痛たかった。 わずか十歳で俺は、初めて嫉妬という感情を知った。ロデリックが羨ましくて、妬ましくて、憎らしかった。◆結婚初夜 十七歳で出陣し、北方の反乱軍鎮圧で功を上げた。二十歳で帰還すると、エミールは三度目の離婚をしていた。男性のオメガは貰い手が少ない中で、噂と離婚回数で結婚先が決まらないと聞いた。
子どもたちが眠りについた後、寝室に戻った。月明かりが窓から差し込み、部屋を淡く照らしている。レオニードが僕の手を取り、ベッドへと導いた。大きな手が僕の頬を撫で、愛おしそうに見つめてくれた。「身体は大丈夫か」 心配そうに尋ねられ、微笑んだ。「大丈夫です」 答えると、レオニードが優しくキスを落とす。唇が重なり、舌が絡み合う。甘い吐息が漏れ、身体が熱くなっていった。 レオニードの手が僕の身体を撫で、服を脱がしていく。妊娠で膨らんだお腹が露わになり、レオニードがお腹に優しく手を当てた。「大きくなったな」 囁かれ、頬が熱くなる。レオニードがお腹にキスを落とし、愛おしそうに撫でる。温かい唇が肌に触れ、幸せが込み上げてきた。「痛かったら言え」 優しく告げられ、頷く。レオニードも服を脱ぎ、僕の上に覆い被さってきた。重さをかけないように気を使いながら、優しく抱きしめてくれる。キスが深まり、首筋を舐められた。温かい舌が肌を這い、鎖骨へと移動していく。胸に辿り着くと、先端を口に含まれて吸われた。「ん」 声が漏れ、レオニードの髪を撫でる。舌で転がされ、甘噛みされて、身体が震えた。もう片方の胸も同じように愛撫され、快楽が広がっていく。 レオニードの手がお腹を撫で、太腿へと滑っていった。内側を優しく撫でられ、蜜口に触れられる。既に濡れていて、水音が静かな部屋に響いた。「濡れてる」 囁かれ、恥ずかしさに顔を背ける。レオニードの指が中へと入ってきて、ゆっくりと動いた。妊娠中で敏感になっている身体は、少し触れられただけで快楽が走る。指が奥を探り、敏感な場所を擦られた。「あ、レオ」 名前を呼ぶと、指が増やされる。二本の指が中を広げ、出し入れを繰り返す。水音が大きくなり、身体が熱くなっていった。 レオニードがキスを落としながら、指を動かし続ける。唇が首筋を這い、鎖骨を舐める。胸の先端に辿り着くと、口に含んで吸い上げた。指と口の両方で愛撫され、快楽が倍増していく。「ん、ああ」 声が大きくなり、レオニードの肩にしがみつく。指が奥の敏感な場所を何度も擦り、快楽が高まっていった。達しそうになり、身体が震える。「イクっ……」 告げた瞬間、全身が痙攣した。指だけで達してしまい、荒い呼吸を整える。レオニードが指を抜き、愛液に濡れた指を自分の口に含んだ。舌で丁寧に舐め取り、
ルーカスが生まれて一年が過ぎた頃、また身体に変化を感じた。朝の吐き気と、身体の重さ。以前と同じ症状に気づき、医師を呼んで診察を受けた。医師が診察を終え、笑顔で告げた言葉に、胸が高鳴る。 僕たちはまた新しい命を授かった。信じられない気持ちと、喜びが込み上げてくる。 夕方、レオニードが王宮から戻ってきた。玄関で出迎えると、レオニードが僕を抱き上げて回してくれる。笑い声が響き、幸せな時間が流れた。アデルとルーカスも駆け寄ってきて、レオニードの足にしがみつく。「父上、おかえりなさい」 アデルが真面目な顔で言い、レオニードが頭を撫でた。二歳になったアデルは、しっかり者で弟の面倒をよく見てくれる。「ちち!」 ルーカスが可愛らしい声で叫び、レオニードに抱きつく。一歳になったばかりのルーカスは、人懐っこくてよく笑う子だった。レオニードが二人を抱き上げ、額にキスを落とす。「いい子にしていたか」 優しく尋ねると、二人が元気よく頷いた。レオニードが僕を見つめ、微笑む。「今日は何か特別な日か」 レオニードがいつもと違う雰囲気に気づいたのだろうか。子どもたちを乳母に預け、二人きりになると、レオニードが僕の手を取り、執務室へと連れて行った。扉を閉め、二人だけの空間になる。「どうした」 心配そうに尋ねられ、僕は微笑んだ。レオニードの手を取り、お腹に当てる。まだ何も変わっていないお腹に、レオニードの大きな手が優しく触れた。「妊娠しました」 告げると、レオニードの目が大きく見開かれた。驚いたような、でも嬉しそうな表情を浮かべて、僕を見つめる。「本当か」 震える声で尋ねられ、頷いた。「今日、医師に診てもらいました。間違いないそうです」 答えると、レオニードが僕を強く抱きしめた。温かい腕が身体を包み込み、レオニードの心臓の音が聞こえる。いつもより早く鼓動していて、喜びが伝わってきた。「三人目か」 囁かれ、胸が温かくなる。「賑やかになるな」 レオニードの声が優しく響き、僕の髪を撫でる。幸せそうな笑顔を浮かべていて、紺色の瞳が輝いていた。「ありがとう、エミール」 額にキスを落とされ、頬が熱くなる。レオニードが僕の顔を両手で包み込み、深いキスを交わした。唇が離れると、レオニードが僕のお腹に手を当てる。「また会えるのが楽しみだ」 お腹に向かって優しく語りか
目が覚めると、見慣れた天井が視界に入った。自宅の寝室だ。(いつの間に――?) 柔らかい寝台に横たわり、身体に布団がかけられていた。頭が冴えてくると、レオニードの腕の中で気を失ったことを思い出す。隣に小さな温もりを感じて、顔を横に向けた。 ルーカスが僕の隣で眠っていた。小さな身体を丸めて、穏やかな寝息を立てている。よく見ると、胸元がはだけたままになっていて、ルーカスの小さな口が僕の胸に吸い付いていた。 母乳を飲んでいたのか、口元が少し濡れている。可愛らしい寝顔で、安心しきった表情を浮かべていた。 ルーカスの向こう側に、もう一つの気配を感じて、視線を上げると、レオニードが横たわっていた。ルーカスを挟んで、僕とレオニードが向かい合う形で寝ている。レオニードは目を開けていて、静かに僕を見つめていた。紺色の瞳が優しく、穏やかな表情を浮かべている。「レオ?」 小さく名前を呼ぶと、レオニードが微かに微笑んだ。「気分はどうだ?」 優しい声で尋ねられ、胸が温かくなる。「大丈夫です」 答えると、レオニードが安堵のため息をついた。ルーカスを起こさないよう、小さな声で話す。「ルーカスが……どうして?」 尋ねると、レオニードが苦笑した。「夜泣きが酷くて。あやしても泣き止まないから、エミールの横に寝かせた。エミールは寝ているが、乳の近くに寝かせれば飲みたいときに飲めるだろ」 レオニードが説明を続ける。「案の定、寝ているお前の胸から勝手に母乳を飲んで、寝てしまった」 胸元を見下ろす。確かにルーカスの口が僕の胸に吸い付いていて、はだけたままの胸元が露わになっていた。恥ずかしさが込み上げてきて、顔が熱くなる。「もしかしてこれを……見ていたんですか?」 小さく尋ねると、レオニードがあっさりと頷いた。「ああ」 レオニードの視線が僕の胸元に向けられていて、僕は何とも言えない表情を浮かべた。「ずるいって思った」 不服そうな表情で呟かれ、意味が分からず首を傾げる。「ずるい……?」「俺もエミールの乳首に吸い付きたい」 小さく囁かれ、驚いて目を見開いた。レオニードが真面目な顔で言っていて、僕のほうが恥ずかしくなる。「可愛いな」 レオニードが小さく呟き、ルーカスを見つめる。穏やかな表情で、父親の顔をしていた。胸が温かくなり、幸せが込み上げてくる。 レオニ
窓から差し込む午後の光が部屋を照らし、カーテンが僅かに揺れている。鳥の囀りが遠くから聞こえ、穏やかな時間が流れていた。 しばらくして、ノックの音が響いた。扉が開き、レオニードが入ってくる。執務を終えたばかりなのか、シャツの袖を捲り上げた姿で、僕の寝台へと近づいてきた。 寝台の縁に腰を下ろし、横たわる僕を見下ろす。紺色の瞳が僕を捉え、大きな手が伸びてきて髪を撫でた。指が髪を梳くように動き、心地よさに目を細める。「診察の結果はどうだった」 低い声が静かに響き、僕は唇を開いた。「妊娠していました。症状から見て、妊娠二ヶ月だそうです」 レオニードの指が止まり、僕の顔を見つめる視線が強く
馬車が屋敷の前で止まり、レオニードは無言のまま降りた。僕の腕を掴み、引きずるように屋敷の中へと連れて行く。使用人たちが驚いた表情で見ているが、レオニードは気にも留めずに廊下を進んだ。 僕たちの夫婦の寝室へと向かっていく。レオニードは扉を開けて、「入れ」と僕を中へと引き入れる。扉が閉まる音が響き、鍵がかけられた。「そんなにしたいのか」 低い声が響き、レオニードが僕に近づいてきた。鋭い眼光が僕を捉えている。「答えろ」 迫るような声に、僕は頷いた。「したいです」 レオニードは僕の腕を掴んでベッドへと投げ出された。柔らかいシーツに沈み込むと、レオニードが覆い被さってきて、重い身体が僕
アデルが生まれて半年が過ぎた頃、身体に異変を感じた。朝になると吐き気がして、食事の匂いだけで気分が悪くなる。最初は疲れが溜まっているだけだと思っていたが、症状は連日続いた。 レオニードは毎晩僕を求めてきて、激しく抱かれる。日中の育児と夜の営みで、休んでいるつもりでも疲労が蓄積していたのだろうと考えていた。 ある朝、いつものように吐き気で目が覚めた。急いで洗面台へ駆け込み、胃液を吐き出す。喉が焼けるように痛く、冷や汗が額に滲み、手が震えた。 寝室に戻ると、レオニードが起き上がっていた。心配そうに僕を見つめ、寝台の縁に座るように促される。隣に座ると、額に手を当てられて熱を確かめられた。
妊娠が分かってから、レオニードの態度が明らかに変わった。 毎朝、目覚めると隣で寝ているレオニードが僕の様子を確認するように見つめていて、身体の調子を尋ねてくる。 朝の吐き気が治まらない日は、背中をさすってくれて、水を持ってきてくれた。優しく労わられるたびに、胸が温かくなる。同時に疑問が大きくなっていく。(僕が嫌いなはずなのに――) お腹の中に、後継者がいるから優しいのだろうか。もしかしたら妊娠中だけの優しさなのかもしれない。「無理をするな」 庭を散歩しようとすると、レオニードが腕を掴んで止める。「医者にも少しの運動はするように言われています」「わかった。だが俺が付き添う」