胸が震えたのは、最初のブラスが突き抜ける瞬間だった。
映画『地獄の
黙示録』で使われたワーグナーの『ワルキューレの騎行』が、画面のヘリコプター群と重なって爆発的に鳴り渡る場面を思い出す。私はその音の重なり方に心をつかまれて、音楽が単なるBGM以上の意味を持つ瞬間を理解した。金管の鋭さと打楽器の刻みが戦場の機械的な規律を表現し、同時に恐怖と高揚を同時に運んでくる。
その箇所が印象深い理由は、音響設計と映像の編集が完全に同調している点だ。音のピークが視覚のクライマックスと一致することで、観客は躊躇なくその暴力性と美学を受け取る。個人的には、あの一節の余韻が数分間消えず、映画のテーマである文明の崩壊や狂気の温度を耳に残す。映画音楽が物語そのものを押し上げる力を見せつけた例として、何年経っても忘れられない場面だ。