じっくり観ると、この作品の世界観は
理路整然としている部分と、意図的に曖昧さを残している部分が共存していると感じます。物語のルールや設定が物語の核に沿って一貫している箇所では、視聴者として納得しやすく、それがキャラクターの選択や事件の帰結に説得力を与えています。特に序盤で示される基本的ルール(例えば技術の限界、社会構造、魔法や特殊能力のコストなど)が明確だと、後の展開で「なぜそれが起きたのか」が追いやすくなり、世界観が緻密に感じられます。個人的には、設定説明が過度に長くならず、状況の提示とキャラクターの反応で補完していくバランスが取れていると、世界の整合性に好感を持ちます。
次に、具体的に理路整然と感じる要素と、その逆の要素を分けて考えると理解しやすいです。まず好印象なのは因果関係の明示です。ある行為に対して必ず代償や影響が描かれると、ルールに基づいたリアリティが生まれます。また、資料的描写――街の法律や技術レベル、組織の仕組み、経済的背景など――が細かく伏線として散りばめられている作品は、観ていて「この世界はこう回っているんだな」と納得できます。登場人物が設定に則った行動を取り、その選択が結果に結びつく構造も理路整然さを補強します。一方で、説明不足や便宜的な展開が続くと、観る側の納得感は急速に薄れます。大きな力の出し入れが唐突だったり、設定を超える解決が次々と現れると、世界観が穴だらけに見えてしまう。私はこうしたとき、たとえエモーショナルな瞬間が美しくても、後から冷静に考えると「え、設定はどうなってたの?」と首をかしげてしまうことがよくあります。
結局のところ、このアニメが視聴者を納得させるかどうかは期待値と視聴スタイルに
依ります。設定の細部に目を凝らして整合性を楽しみたいタイプなら、最初の丁寧さや伏線回収の有無で満足度が分かれるでしょう。感情表現やキャラクター同士の関係性を重視するタイプなら、多少の設定の穴は許容できることが多いです。個人的には、この作品は中盤までは世界のルールがしっかりしていて、その分後半の展開にも納得できる瞬間が多かったと感じます。最後まで見ると、細かい整合性に気づく場面はあるものの、物語全体としては説得力を失わない作りになっていると思います。