言葉のニュアンスを分解してみると、『五里霧中』は単に知らないというよりも方向感覚が完全に失われている感覚が強いと思う。英語の'in the dark'は情報が欠如しているという意味合いが前面に出ることが多く、誰かに情報を与えられていない、あるいは状況そのものが不明瞭であるという着眼点が強い。対して『五里霧中』は視界そのものを奪われているイメージで、進むべき道も見えず決断ができないという心理的重さがある。
文章での使われ方も違っていて、『五里霧中』はやや硬めで書き言葉に合う場面が多い。会話で使うと気取って聞こえる場合もあるが、書き言葉では状況の深刻さや迷走感を凝縮して伝えやすい。一方で'in the dark'はくだけた会話にも馴染みやすく、意図的に情報を遮られている場面にもよく使われる。翻訳するときは単純な置き換えに頼らず、文脈でどちらの不安感を伝えたいかを選ぶべきだと感じる。