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録音現場で培った直感だと、
キャットファイトの音作りは“演出”と“リアル”の微妙な綱引きになることが多い。私はまず監督や演出資料で何を強調したいかを確認する。たとえば『美少女戦士セーラームーン』風の魔法バトルなら、パンチやスラップよりも“感情の爆発”を音で表現する方向に寄せることが多い。
次に基本レイヤーを用意する。直接的な皮膚の当たり音、衣擦れ、髪やアクセサリーの金属音、そして呼吸や声の切れ端を別々に録っておく。実際の打音は布や果物を叩くなどのフォーリーで作り、必要ならピッチを上げ下げしてリアルさとアニメ的誇張のバランスを取る。
最後にミックスで遊ぶ。パンチのアタックには短いコンプとハイパス、スナップ感を出すためにトランジェント処理をかけ、打撃の余韻はリバーブやディレイで遠近感を出す。私の狙いは、視聴者が“痛み”を感じる前に感情が伝わることだ。
冷静な視点で見ると、キャットファイトの音響制作は倫理と技術の両輪で成り立っている。以前、私が関わったプロジェクトでは『攻殻機動隊』的なクールな質感を要求され、打撃音は極力機械的で冷たいアタックに寄せた。その結果、肉体的な生々しさより状況のクールさが強調された。
具体的には、フォーリーで得た生音にフィルターやEQでハイミッドを強め、金属的なトーンを加える処理を多用する。人の息や痛みの声は薄くして代わりに電子的なインパルスを入れると、攻殻風の無機質さが出る。これもまた演出判断の一つで、場面のトーンに沿って音像を作ることが最優先だと私は考えている。
場面に重心を置くと、音は単なる「当たり判定」以上の意味を持つことがわかる。ある時点で私は、感情の機微を強調するために小さなディテールを積み重ねるアプローチを選んだ。たとえば『ワンピース』のような作品では、コミカルさやキャラクターの個性を音で表現する余地が大きいので、あえて軽めのフィルタやピッチ操作で“やられ音”をキャラ寄りに調整する。
プロセスとしては、まずアニメーションを見ながらキックオフミーティングで意図をすり合わせる。次にフォーリー録音で複数パターンを作り、編集段階でA/B比較しながら選ぶ。重要なのは、音が画面の情報を上書きしてしまわないこと。音が過剰だと視線がそちらに引かれてしまうから、サブトラックで控えめに置いておき、場面ごとに持ち上げる。
技術的にはパンニングで左右の動きを追わせたり、短いリバーブで空間感を加えたりする。テレビ放送向けの最終ミックスではラウドネス規格にも注意し、衝撃音が飛び抜けないよう調整するのが現場の常識になっている。
録音趣味として試したことを話すと、キャットファイトの音響は視覚に寄り添う補助線みたいなものだと考えている。まずは素材集めで、手のひらで柔らかい布を叩いた音や、皮手袋をはじく音など、想像以上に多様な音を用意する。これらを重ねることで一発の“パンチ音”が完成する。
実際に編集するときは、アニメのフレームにぴったり合うようにタイミング調整するのが肝心だ。遅れると説得力が落ちるし、早すぎると不自然になる。それからボーカルの“悶声”や息遣いを別トラックで重ねて、人間味を補う。過剰すぎると下品に響くので、サブリミナル的に小さく入れるのがコツだと自分では思っている。
作品例としては、『ジョジョの奇妙な冒険』のように誇張表現が許される作品だと、クラップや金属的なスナップを足して派手めにする。どの程度誇張するかは演出意図と視聴者層次第で変わるから、毎回コミュニケーションを重ねるのが重要だ。
サウンドで遊ぶ感覚だと、キャットファイトは“音の戯れ”に最適な題材だと思う。私はある制作で『少女革命ウテナ』のような舞踏的な戦闘を意識して作業したことがあるが、あの作品の空気感を損なわないために、打撃よりも衣擦れや布の振動を目立たせる方針を採った。
作り方は単純で、まず小道具を使って多種類の生音を録る。爪先立ちで床を擦る音や、細い金属がぶつかる微かな音を集めて、場面のテンポに沿って並べると独特のリズムが生まれる。これに短いパーカッション的なクリックを重ねれば、戦いがダンスのように聞こえてくる。最後に空間処理で距離感を出して終わると、思った以上に雰囲気が出る。