愛も憎しみも越えた先で婚姻届を出して帰る途中、吉田陸(よしだ りく)がふいに口を開いた。
「俺、浮気したんだ」
彼は私の座る助手席を指さし、残酷な笑みを浮かべた。
「昨日はあいつがここに座って、俺にキスしてきた。ずいぶん色っぽい格好をしててさ、我慢できなくなって、そのままヤった」
二度目の裏切りだった。
私はその場で固まり、苦しさのあまり、ひと言も声が出なかった。
けれど陸は、なおもその余韻に浸るように言った。
「今なら拓海の気持ちがわかるよ。遥はたしかに、お前より女としての色気がある」
成瀬拓海(なるせ たくみ)は私の元夫で、清水遥(しみず はるか)はかつての親友だった。
五年前、私は二人がベッドを共にしているところを目撃した。
何もかもが嫌になっていたあのとき、私を救ってくれたのは陸だった。
なのに今、その同じ相手のために、彼も私を裏切った。