木の継ぎ目や真鍮の留め金を観察すると、作り手の痕跡がはっきり見えてくる。私は道具の構造から価値を読み取るのが好きで、定規の作りが良ければ長く使われてきた理由が透けて見える。
具合の良い継ぎ目、しっかりしたピン、均一な目盛りの刻みは製造品質を示す。折り畳み式の定規なら
蝶番の精度やピンの摩耗具合から何度折り畳まれたかが推測でき、そこに物語性が宿る。実用機器としての精度が保たれているかどうかも評価に繋がるので、目盛りの真直度や読み取りやすさは無視できないポイントだ。
加えて補修の種類を見分けることも重要だ。現代の接着剤や後付けの金具が使われているとオリジナル性が損なわれ、価値は下がる。一方で歴史的に意味のある修理痕なら保存歴として評価されうる。そうした細部を丹念に見ていくと、単なる木片以上の価値が見えてくるのが面白い。