物差しという言葉を出すと、つい具体的なツールを想像してしまうけれど、ここではプロット構築の“基準”としての物差しについて話す。
僕はまず、物語の目的を定めることを物差しの先端に据えるようにしている。メインの問い(何を示したいのか)を一句に凝縮し、それが各章やシーンでどう反復・変奏されるかを測る。次に登場人物の変化量を定量化する。外的事件だけでなく内的な価値観の動きがどれだけ生じたかを点数化してみると、冗長な場面や弱い転換が見えてくる。
最後にテンポのチェックだ。ページ数や時間経過を尺度に、情報の開示頻度やクライマックスへの累積を測る。こうした複数の物差しを同時に当てることで、感覚だけに頼らない修正が可能になる。例えば『ハリー・ポッター』の長編構成を分解すると、伏線の回収率や各巻の成長曲線が物差しで視覚化できる。結局、物差しは創作の自由を奪うものではなく、意図を明確に伝えるための補助具だと僕は考えている。