場面ごとの余白の作り方から、差がはっきりしている。原作では
霧雨が現れる瞬間に内面のつぶやきや細かな描写が積み重なってきて、それが読者の想像力を刺激することが多い。対して映画では尺の制約と演出上の選択から、余計な内省を削ぎ落として行動や表情で語らせることが多く、結果として登場の印象がより即物的になる。
例えば原作だと朝の空気感や小さな仕草で存在感が徐々に立ち上がるが、映画はワンカットや音楽のスイッチで一気に注目を集める。カメラワークが近接になると細部が強調され、逆に引きの絵では周囲との関係性が強く出る。こうした映像的な選択が、ファンの受け止め方に温度差を生んでいる。個人的にはどちらにも良さがあって、原作の余韻を懐かしみつつ映画の直球な見せ方にハッとさせられることが多い。