筆先を遊ばせるとき、口元のほんの一ミリがキャラクター像を決定づける瞬間がある。私は線の強弱と角度で
おちょぼ口を描き分けることが多い。例えば『ワンピース』のようなデフォルメ寄りの作風では、唇の締まりを水平に近く保ちつつ、口角の上がり具合で愛嬌や狡猾さを出す。線を細くすると幼さ、太くざっくり描くと図太さが生まれる。
また、口内部の塗り分けも重要だ。極端なミニマル表現では影を入れず輪郭だけで表現し、リアル寄りのシーンでは唇に薄いハイライトや上下唇の差をつける。私は表情の変化を追うとき、歯の見せ方や唇の接触点の位置を意識して、同じおちょぼ口でも感情を違わせる。
最後に、小物や角度で見せ方を変える。横顔なら線を短くして鼻先との距離感で可憐さを出し、正面では口幅を狭くして落ち着いた印象にする。こうして少しの差を積み重ねると、読者が直感でキャラクターの性格を読み取れるようになる。