僕が物語に引き込まれるとき、主人公の試練は単なる障害じゃなくて物語の重心そのものに変わる。最初は外部の困難が物語を動かしているように見えても、試練を
経るごとに内面の変化が外界との関係を塗り替えていくんだ。例えば『千と千尋の神隠し』で小さな子が名前を奪われ、働き、その中で自分の価値観を取り戻していく過程を見ていると、プロットの起点が“戻ること”から“変わった自分で進むこと”へと移るのが分かる。
物語のテンポや視点も変化する。試練が増えると、単純な問題解決の繰り返しではなく、選択の重みや葛藤の反復が中心になり、読者や視聴者は主人公を通して世界の在り方を再評価するようになる。つまり試練は情報を与えるだけでなく、価値観の転換装置として機能するんだ。
結局、試練を経た主人公は以前とは異なる問いを投げかける存在になる。勝敗や達成だけでなく、誰のために戦うのか、どう生きるのかといった根本に物語が移り、終盤の意味が深まる。それがあるから物語は記憶に残るし、心を揺さぶるんだ。僕はそんな変化を見るのが好きだ。