黒板イラストを商用利用する場面では、まず著作権の“誰が何を持っているか”をはっきりさせることが何より重要です。イラストの作者が明確なら、その人から利用許諾(ライセンス)や著作権譲渡を文書で受け取るのが安全です。契約書では利用範囲を具体的に定めましょう。利用目的(広告、商品パッケージ、ソーシャルメディア、店頭ディスプレイ等)、媒体(印刷・WEB・映像)、地域、期間、独占権の有無、サブライセンスの可否、改変の可否などを明確にしておくと、後で使えない・訴訟になるといったリスクを減らせます。
また、著作者の人格権(氏名表示権、同一性保持権など)にも注意が必要です。多くの国で人格権は譲渡できないか限定的で、作者が作品の改変を拒否できる場合があります。商用利用で改変やトリミング、色味変更を行う予定があるなら、許諾書で改変の可否やクレジット表記の扱いを明記し、可能なら作者からの承諾や人格権の行使放棄(法域で許される範囲で)を得ておくと安心です。社員が業務として制作した場合や業務委託契約で最初から著作権の扱いを定めている場合は、その契約内容が優先されます。フリーランスに依頼した場合は、必ず著作権の帰属について明文化してください。
さらに、イラストに第三者の要素が含まれていないか確認することも欠かせません。既存のキャラクター、ロゴ、他人の写真、ブランド名、フォントのライセンス、素材サイトの素材(テクスチャやブラシ)などが混入していると別途権利処理が必要になります。人物が写っている場合は肖像権・パブリシティ権、撮影場所や建物が特定可能なら物件権利が絡むこともあるので、モデルリリースやプロパティリリースが必要です。ストックイラストを使う場合は、通常ライセンスと拡張ライセンスの違い(商品化や大量配布が可能か)を必ず確認してください。
実務的には、作者からの表明・保証(第三者の権利を侵害していないこと)や万が一侵害があった場合の補償(インデムニティ)を契約に入れるのが一般的です。ソースファイル(高解像度データ、ベクターファイル)を受け取るかどうか、修正や二次利用の際の追加費用、支払い条件、著作権登録(可能なら)や管轄裁判所・準拠法の指定なども話を詰めるポイントです。国際的に展開するなら法域ごとに権利の扱いが異なるため、どの国でどれだけ使うかを正確に定めておきます。
最後に、面倒でも最初にきちんと契約書を作ることを強く勧めます。私も実務でトラブル予防のために契約書を徹底しており、明文化しておくと社内外で安心して使えます。大きなキャンペーンや商品化を考えているなら専門の知財弁護士に一度相談するのが賢明です。これだけ押さえておけば、黒板イラストを気持ちよく商用利用できるはずです。