読み進めるうちに気づいたのは、物語が困難を単なる障害としてではなく、登場人物の内面を穿つ彫刻刀のように使っている点だ。僕は物語に出会った頃から、諦めや折れそうになる瞬間が丁寧に描かれる作品に惹かれてきた。'進撃の巨人'では、何度も敗北し、仲間を失い、計画が潰れる度に人物たちの決意が形を変える。そこには単純な根性論ではない、折れない心の層別化がある。行動と挫折を繰り返すことで、信念が磨かれたり、疑念が生まれたり、時に復讐や破壊へと転じる。だからこそ“
百折不撓”は美徳でもあり、危険でもあると感じるのだ。
この作品では具体的なエピソードや象徴を使ってそのテーマを積み上げる工夫が随所に見られる。繰り返される戦闘の失敗、脱出直後の静かな後悔、壁や鎖といったモチーフ。僕は個々の挫折が外的な敗北だけでなく、理想と現実の衝突や倫理的な選択の重みを炙り出す道具になっていると考えている。ある人物の執念が集団の運命を左右する場面では、百折不撓が集団心理にどんな影響を与えるか、作者が慎重に描いているのが伝わってくる。
結局のところ、作品が示す“百折不撓”は単純な賛歌ではない。僕が特に刺さったのは、諦めないことが時に新たな破滅を招く可能性も示唆している点だ。だから物語を追うほど、応援したい気持ちと慎重でありたい気持ちが交錯する。作者は読者に決断の重さを考えさせるべく、折れる瞬間と折れない瞬間を交互に見せることで、根性の物語を一本調子にはしなかった。それが心に残る表現だと僕は思う。