今宵、月は何処へ早坂美羽が個室の扉を開けようとしたその瞬間、「初恋の破壊力」について語り合う男たちの声が耳に飛び込んできた。
「悠翔、さっき全員話したんだから、次はお前の番な。逃げんなよ?」
その名前を聞いたとたん、美羽の手が扉の前で止まった。
神崎悠翔はしばらく黙っていたが、やがてグラスの酒を一口含み、アルコールの香りをまとった低い声で話し始めた。
「俺、心臓の近くにあの子の名前のタトゥーを入れてる。今でも消してない。
ライダースには血の跡が残ってる。初めて彼女と肌を重ねた時についたもので、ずっと大事にしてる。
今付き合ってる子は、あの子の代わりなんだ」