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現場で最初に求められたのは、キャラクターの心情を声で歌に反映させることだった。
私は歌のテクニックと演技を同時に磨く必要があったので、呼吸法から徹底的に取り組んだ。横隔膜を意識したロングトーンや、母音の開き方を細かく調整する基礎練習を毎日やり、録音して客観的に聴き直した。曲は『マクロスΔ』のように楽曲の色がキャラクターと直結する作品だったため、メロディをなぞるだけでなく歌詞の一語一語に感情をのせる練習も並行した。
現場では作編曲家や演出と細かく相談し、テンポや強弱、フレージングのニュアンスを何度も試した。スタジオではワンテイクごとに表現を変えて録り、どのテイクが物語に合うかを見比べた。結果として声の質をコントロールする技術と、役として歌うための心理的切り替えの両方が身につき、納得できる仕上がりに持っていけたと思う。
練習日誌みたいに細かく記録をつけて、毎回の課題を明確にした。楽曲は『ラブライブ!』系のユニット曲で、ハーモニーやユニゾンが勝負どころになるタイプだったから、とにかく合わせる訓練を重ねた。
耳を育てるためにガイドトラックを分解してパートごとに聴き込み、ピッチを合わせるためのスケール練習やインターバルの確認を日課にした。家ではメトロノームを使ってリズム精度を高め、スタジオでは実際にほかのメンバーと並んで音量バランスやフォルテ・ピアノの位置を合わせる。動きながら歌う場面がある曲だったので、呼吸のタイミングを身体動作に合わせる練習も取り入れ、録音と映像を照らし合わせて調整していった。集中して繰り返したことで、合唱的な厚みを出せるようになったのが収穫だ。
台本の一節から歌詞の背景を逆算していった。『鬼滅の刃』のキャラクターソングのように物語性が強い楽曲では、歌詞の情景や人物の内面を先に固めることで声の色が決まると考えたからだ。最初にピアノやギターで伴奏の流れを把握し、どこで息を吐き切るか、どこでフレーズを引っ張るかを細かくメモしていった。
その後、キー調整の提案を受けたときは自分の声域と役の声質のバランスを優先して選んだ。ファルセットやミックスボイスを使う場面は段階的に負荷を上げて慣らし、録音ではダブリングやコーラスの重ね方も試行錯誤した。感情表現の精度を上げるために演技ワークショップの短時間セッションを取り入れたり、最終的にはエンジニアと一緒に微妙なエフェクトで役としての距離感を作り込んだ。結果的に、歌がそのキャラクターの延長線上にあると感じられる完成度になった。
小さなフレーズを何百回も繰り返す地味な練習が効いた。『君の名は。』の挿入歌のように一瞬で心を揺さぶるパートがある曲では、短いフレーズの精度が全体の印象を左右するからだ。家ではフレーズごとにアクセントや子音の処理、母音の長さを細かく調整して録音し、良くない部分だけを繰り返して潰していった。
スタジオではガイドボーカルに合わせつつ、マイクの近さや立ち位置で音の輪郭を変える実験もした。ときにはあえて息を多めに入れることで臨場感を出したり、逆に閉じ気味の発声で内省的な色を出したりして表現の幅を探った。こうした反復と試行錯誤の積み重ねで、短い時間でも説得力のある一節を歌えるようになったと感じている。