出てきた話題の中で特に心に残ったのは、
南野が制作段階で何度も大幅な路線変更を決断したという話だ。
取材の語り口からは、最初に想定していた結末を覆してまでキャラクターの感情を優先した場面作りがあったことが伝わってきた。具体的には、当初は外的な事件でクライマックスを作る予定だったが、現場での俳優の演技やスタッフの意見を受けて、内面的な対立を中心に据える方向へと修正したらしい。私がその説明を聞いたとき、作品の骨格そのものを変える勇気と柔軟さに唸った。
制作秘話として面白かったのは、ある重要なシーンを撮り直すために楽曲の構成まで見直したという点だ。音楽チームに即興の試みを依頼し、アナログ機材を持ち込んで微妙なノイズを取り入れたことで、シーンの空気感が劇的に変わったという。これを知ってから『風の軌跡』の当該エピソードを見返すと、細部の選択が演出全体にどう寄与しているかがよく分かって面白い。