覚えているのは、原作の古い章が描き出す素朴さのことだ。僕は物語の細部を追いかけるのが好きで、'Perceval, the Story of the Grail' が示す
パーシバル像にはいつも引き込まれる。そこでは彼は森で母に育てられた若者で、騎士の存在すら知らずに育った無垢な少年として描かれている。母から父や騎士の話を禁じられていたという設定が、彼の後の行動原理や無邪気さに深く影響しているのがわかる。
物語は旅立ちから試練へと自然に繋がり、騎士に出会い礼儀や力量を身につける過程が丁寧に描写されている。特に聖杯の場面では、質問しなかったことが運命を左右する重要な意味を持つ。僕はこの「問いを発しない若さ」が、成熟と後悔の主題を鮮やかに浮かび上がらせると感じる。
別の系譜である'Le Morte d'Arthur' でも出自や家族関係に触れられ、パーシバルの過去が彼の純粋さと同義語のように扱われる点に変わりはない。だがこちらは騎士道社会の一員として迎えられる過程や、失敗からの償いを強調する傾向があり、原作群全体を通して彼の過去は「無垢→学び→贖罪」というドラマを生む土壌になっていると僕は受け取っている。