制作側がテレビ向けに膨らませたサブプロットに目を向けると、原作者自身が新たに書き下ろしたと見られるエピソードが複数あることがわかった。『
ソウシン』の原作は心理描写と静かな伏線の回収が魅力だったが、連続ドラマにするために対人関係のドラマ性を増やす改変を行ったようだ。私はそうした補強が必ずしも悪手だとは思わない。画面の尺を埋めるには人物間の衝突や和解を見せることが有効で、結果として登場人物それぞれの動機が分かりやすくなった場面が多かった。
一方で、原作で象徴的に扱われていたモチーフが省略された箇所もあり、読み手として感じた微妙な余韻が薄まったとも感じる。だが映像ならではの演出が新鮮で、別作品として楽しめる側面も強く出ていると考えている。