翻訳の現場でよく直面するのは、原文の大げさな誇張表現をどう「生きた日本語」に変えるかという点だ。
私のやり方はまず原文の意図を細かく分解することから始める。登場人物が格好をつけたいのか、本当に信じているのか、威圧したいのか──その動機が違えば訳し方も変わる。語調をそのまま持ち込むと不自然になりやすいので、語彙の選択だけでなく文の長さや改行、句読点の使い方まで調整することが重要だ。
具体的な例を挙げると、'ゲーム・オブ・スローンズ'のような作品では王座を巡る
大言壮語が頻出する。直訳で大仰にすると陳腐になる一方、削ぎすぎると迫力が失われる。だからこそ私は比喩や古風な語調を適度に使い、登場人物の個性を反映した日本語の「声」を作ることを心掛けている。最終的には読者がその人物の口ぶりで説得されるかを基準に調整する。自然さと誇張のバランスを掴むのが鍵だ。