暗闇に潜む存在を主役に据えると、物語は細部で輝き始める。
影法師を中心に据えたスピンオフなら、表面の事件だけでなく影が生み出す倫理的なグレーゾーンを掘り下げることができると考えている。
僕は最初に、影法師自身の起源譚をやってほしい。誰に作られ、誰を守るために動くのか。記憶の有無や自我の芽生えをテーマにすると、読者は単なる「敵役」ではなく、存在理由を巡る共感を抱くはずだ。ここで描くトーンは、機微のある心理劇に寄せると面白い。外側の世界では英雄と悪の区別がある一方で、影法師はその境界線を越えていく。
次に、舞台設定を限定してシリーズを構築する案もある。影の領域と現実世界の交差点を舞台にして、影法師が関わる事件をアンソロジー的に描く。各エピソードは異なる人物の視点で語られ、最終的に影法師の大きな目的が浮かび上がる仕立てだ。もし戦闘描写が重要なら、影の特性を活かしたアクション演出を工夫する。たとえば、光の角度を変えることで能力が増幅するなど演出的な遊びを入れれば、視覚的にも印象に残る作品になるだろう。こんな風に考えると、スピンオフには無限の可能性があると感じている。