鐘の音が響き渡る瞬間、何世紀にもわたる歴史が感じられる。日本の
釣り鐘(梵鐘)は仏教伝来とともに6世紀頃から作られ始め、当初は朝鮮半島の様式を模していた。
面白いのは、奈良時代から平安時代にかけて独自のデザインが発達した点だ。竜頭と呼ばれる吊り部分の装飾や、蓮の花を模した撞座(つきざ)が特徴的で、これらは日本の職人の美意識が反映されている。特に国宝に指定されている『神護寺の鐘』は、繊細な文様と均整の取れた形で知られる傑作だ。
鐘の音には『諸行無常』を表現する深い意味があり、朝夕の勤行で鳴らされるだけでなく、火事や災害時の警報としても使われてきた歴史がある。