洋風と和風のぶつかり合いを見ていると、明治期の
気風が服装や日常習慣にどれほど直に刻まれているかが実感できる。特に象徴的なのは公的な場での洋装導入で、公式行事や写真の場面で西洋の礼服や軍服が使われるようになったことだ。僕は『
舞姫』の描写が示すような、洋学を通じて新しい価値観が流入する過程を思い浮かべることが多い。文学に描かれる人物の装いを追えば、個人の思想や社会的立場が服装によって可視化されるのがわかる。
一方で、
庶民や地方では着物の工夫が進んだ。活動性を重視した丈の短さや袴の簡略化、帯の結び方の変化など、生活のリズムに合わせた変化が出てくる。靴や帽子、腕時計の普及は時間意識や公共空間での振る舞い方にも影響を与え、挨拶や身だしなみの基準が徐々に変わっていったのを肌で感じることができる。
個人的には、当時の写真や新聞挿絵を眺めるたびに、服装と習慣が互いに作用し合って社会が変わっていった様子が立ち上がってくる。衣服は単なる装い以上に、価値観や権力構造を映す鏡だったのだと、改めて思う。